MONKEY MAJIK Maynard&TAX|作り込まれた自然体から本当の自然体へ

自然体のムチャぶりから生まれたチャイムの音

──DISC 3の「風」は東日本大震災の影響もあってか、シンプルなメッセージが届く楽曲が目立つ印象ですね。

TAX 確かに改めて収録曲を見ると、“生きる”ことに焦点をあてて制作していたのかもしれませんね。あの当時はそんなことを意識していなかったんですけど。

──心に染みる楽曲が多い気がしました。そしてDISC 4「月」は、いろんなことを突き抜けて自由に音楽と向き合っている現在が伝わってくる仕上がりです。

TAX 最近になって肩の力が抜けてきたような気がします。以前は洗練されたメロディを邪魔しないような、しっくりくる言葉を探して制作していた部分があったんですけど、この頃からそういうことを一切無視して、例えリスナーに不思議がられたとしても自分たちが面白いと思うことになんでも挑戦できるようになった気がします。作り込まれた自然体から本当の自然体へと進化している様子をここで感じてもらえるのではないかと思います。

──楽曲を発表するごとに自然体の色が濃くなっている気がしました。

TAX まさに現在制作中の新曲に関しても、日常の風景をパッと見てふと心に残ったことを書き留めておき、それを曲にしてみようとか。どんどん自然になってきている。また、そういう作り方のほうが面白いんですよね。自分たちが想像もしなかった深みが出るというか。楽曲全体のクオリティが上がっているような気がします。

──その「月」盤のラストには書き下ろしの新曲も収録されています。「gift」はMONKEY MAJIKらしいアコースティックギターを軸にした楽曲ですが、複雑なビート展開というか。遊び心が満載の仕上がりですね。

左からTAX(Dr)、Maynard(Vo, G)。

Maynard この楽曲はそんなに時間をかけずに完成しました。いつもはメロディを先に考えることが多かったんですけど、途中で90年代のダンスポップのようなドラムビートが思い浮かんで、それが心地いいなと感じたんです。また、奏でていたら同じく90年代の割れた雰囲気のノイジーなギターの音色が思い浮かんだり、いろんなアイデアのピースをまとめたら完成した感じですね。

TAX この曲はサビに行く前の転換がポイントになっていて。そこで家のチャイムを鳴らす風景が見えたんですよね。

Maynard チャイムを音で表現するのが大変で。何時間もいろんな音を試して、結果ギターの音で落ち着いたという(笑)。

TAX 楽曲全体はもちろんなんですけど、サビにたどりつくまでのワクワクした展開も楽しんでほしいですね。心が躍るチャーミングな音になっているというか、感情と音が見事に重なり合っている様子を聴き取ってもらえるのではないかと思います。ドラマ仕立てで構成できた1曲ですね。

瑛人は声がピュアで滑舌がいい

──またラストの「Believe」では、2020年の話題をさらったシンガーソングライターの瑛人さんとコラボレーションされています。

Maynard 実は個人的に「香水」がヒットする前から、瑛人さんのことは存じ上げていて、注目していたんです。先方にいつか一緒に曲を作れたらとお話ししたところ、ご快諾いただき完成したのがこの楽曲。話が決まってからの進行はとにかく早かったですね。すぐに僕らにメロディや歌詞を送ってきてくださって、おかげでかなりスムーズに完成までたどり着くことができました。

TAX こちらからアイデアの提案をすると、すぐにレスポンスしてくださって。また、彼の描く歌詞は年齢が離れていても「なるほど」と腑に落ちる部分が多いというか。人間の芯に迫る言葉を自然に表現されている。しっかりした考えを持ったミュージシャンなんだなと感心しました。

──それぞれが持つ価値観を主張するだけでなく、お互いのことを思いやる愛が、この時代に大切であるというメッセージが伝わりますね。

TAX さまざまな愛の形を感じてもらえると思います。それに瑛人さんの声がピュアで、かつ滑舌がいい。その魅力が伝わる仕上がりになっていると思います。

僕らはやりたいことだらけ

──このベスト盤を区切りにバンドは25年、30年へと向かって進んでいくと思います。どんな活動をしていきたいですか?

TAX これからはメンバーそれぞれが人生でどんな経験をするか、また充実させるかということが大切になってくる気がします。リスナーの方々の心に届く音楽を作るためには、皆さんが普段どんなことを感じて暮らしているのかを知る必要があると思うので。とにかくいろんな体験を積み重ねていきたいです。

──先ほどスタッフの方からお二人が最近養蜂をされているというお話を伺ったのですが。

Maynard (笑)。メンバーそれぞれやりたいことをやっているだけで、養蜂もその1つ。これで新しいプロジェクトをスタートするとか、大きなプランは何もないんです。成果を求めてやっているわけじゃないんです。音楽活動に関しても同様で、これから大ヒット曲を連発しようとか、大それたプランは持っていなくて。本当に自然体で活動を続けていくだけですね。

TAX まだ僕らはやりたいことだらけ。それを今後どうやって皆さんに届けていけばいいのか、日々模索している状況です。この毎日の連続が20年後も30年後もずっと続いていくのかなと思います。

左からTAX(Dr)、Maynard(Vo, G)。