MONKEY MAJIK Maynard&TAX|作り込まれた自然体から本当の自然体へ

震災後に感じた音楽の力

──そんなメンバーで数えきれないほどのライブなど、たくさんのことを乗り越えてきた20年だったと思います。これまでで印象的だった出来事は?

Maynard メジャーに進出し、ちょうど「fly」をリリースした頃ですね。この楽曲を携えて、全国のラジオ局をほぼ網羅するキャンペーンをBlaiseと一緒に行ったんですけど、そのスケール感に、僕らはとてつもない大きなステージに足を踏み入れたんだと思った。でも最近も岡崎体育さんやサンドウィッチマンさんたちとコラボレーションしたことで、新しい音楽の楽しみ方に出会うことができたし、日々たくさんのターニングポイントが生まれている状態ですね。

──また2011年に起こった東日本大震災も、東北をベースに活動する皆さんにとって大きな出来事だったのでは?

Maynard そうですね、バンドとしてだけでなく個人的にも大きな出来事であることは確か。でも、この経験は今回の新型コロナもそうだけど、多くの人が経験しているもの。自分だけの特別なものではない。そこで何かを得たことは確かだけど、具体的に音楽の何に反映されているのかは今はわからないですね。ただ大変な時期を乗り越えられたことによって見えたものはきっとあると思います。

TAX 震災直後は地元の復興を最優先に考えていたので、音楽活動に対して考える余裕すらなかった状態でした。でも全国各地からミュージシャンたちが「音楽を通じて何か役立つことができれば」と足を運んで勇気付けてくれたことが本当に大きな励みになったし、音楽に力があることも強く感じられた。そして今まで自分たちがやっていることに意味があると気付くことができたんです。また、そこでただ背中を押すようなメッセージが伝わる音楽だけが求められているのでなく、そういうものを忘れさせて大騒ぎできるような楽曲も必要なことに気付いた。音楽はいろんな角度から楽しませたり、エネルギーを与える要素があるんだとわかりましたね。

──ゆえにサンドウィッチマンさんとの共演曲「ウマーベラス」のような、楽しい楽曲も作ることができたんですね(笑)。

TAX あれはただ“タガ”が外れたんです(笑)。

アルバムを区切る意味

──いろんな経験を積んで、この20年の間に生まれた楽曲はなんと240曲以上にもなります。その中から厳選した名曲の数々を収録したベスト盤「20th Anniversary BEST 花鳥風月」が完成しました。こちらはファン投票で選ばれた楽曲を収録したものですね。

左からTAX(Dr)、Maynard(Vo, G)。

Maynard とにかくこれまで発表してきた楽曲が多くて、どれが“ベスト”な楽曲なのか、自分たちで選ぶのが難しいんですよ。全曲コンプリートしてボックスセットとして販売してもよかったんですけど、それは再びやってくるアニバーサリーイヤーに備えて温存しておこうかと(笑)。だったら今回は一番公平な耳を持っているリスナーの皆さんに選曲をお願いしたほうが間違いないだろうと思ってこういう内容にしました。

──アルバムは活動を5年区切りにして「花」「鳥」「風」「月」と4枚のディスクで構成されています。

Maynard 同名タイトルのツアーを行っていて、残念ながら「月」は新型コロナの影響で実現できなかったのですが、それに合わせた構成になっています。

──DISC 1の「花」には、インディーズ時代の楽曲が収録されています。現在では考えられないエモーショナルなロックを奏でていますよね。

Maynard あの時代はメンバー全員何もわからない状態でレコーディングしていたからね(笑)。マイク1本だけ使って、エンジニアも友達に頼んだりだとか。今では考えられない環境だった。

TAX (笑)。でも、あれはあれでいいものを作ることができたと思う。

Maynard うん。もしインディーズ時代も現在と変わらないような音をやっていたら、時期ごとにアルバムを区切る必要なんてない気がするし。

──確かに。バンドの衝動をダイレクトに感じます。

Maynard 「叫んでいるだけじゃん、俺」という感じですが(笑)。

──そしてDISC 2の「鳥」には、メジャー進出初期の楽曲が収録されています。「Around The World」や「空はまるで」など、バンドの名前が一躍多くの人に知れ渡った代表曲がズラリ並んでいますね。

TAX この時期はたくさんのクリエイターの方々と出会えましたね。m-floさんをはじめとするミュージシャンの方々はもちろん、「Around The World」のミュージックビデオを手がけてくださった丹下紘希さんをはじめ、楽曲制作に直接関わりはないけど、協力してくださったたくさんのクリエイターの皆さんによって、音楽の深さを知ったというか。ただ楽曲を作って発表するだけで完成するのではなく、いろんなジャンルの方々の知恵によって、人々の心に残る音楽を作ることができました。特に丹下さんとの出会いは大きかったです。「Around The World」はテレビドラマの主題歌として記憶に残っている人もいると思いますけど、僕にとってはミュージックビデオのユニークさのほうが頭に刻まれているし。あのビデオのおかげで、バンドとしてのイメージ、キャラクター設定というものを考えるきっかけを与えてもらいましたので。そのほかの作品に関してもこの時代に残せたものは、いろんな大人たちが全力で遊びをやっている中で生まれたものが多いですね(笑)。