ラジオを聴いていると1人でも1人じゃない

──「You Are Not Alone」はNHK・民放連共同ラジオキャンペーン「ダカラジ」のために書き下ろした曲だそうですね。「You Are Not Alone」という主題はどんなところから着想を得たんですか？

Maynard（Vo, G）　「ラジオといえば」っていうところから、誰でもわかるような内容で、みんなが歌えて、歌う自分にとっても意味があるような曲にしたいなと思って、ユニバーサルなメッセージにしました。ラジオは1人で聴くことが多いけど、聴いてると1人じゃないって感じる気がして。1人でも1人じゃない。そこに深いメッセージを伝えられたらなあと思って、そこから作詞に入りました。

──こんな曲をくださいというオーダーはあったんですか？

Maynard　特にオーダーはなく、東北でのラジオキャンペーンとMONKEY MAJIKで意味のあるコラボレーションにしたいと聞いていて。逆に聞かれたんです、「どんなイメージですかね？」って。で、今みたいな話をしたら「完璧です。楽しみにしています」と。実際に作ったら、みんな「すごく感動しました」って言ってくれたのでよかったですね。

──このキャンペーンは岩手、宮城、福島の放送局が取り組むもので、「東北」というのもMONKEY MAJIKとつながりの深いテーマかと。

Maynard　震災のときに、ラジオっていうものの大事さを東北の人は誰でも感じていたし、いろいろ思い出したりしながら、皆さんの力になれればいいなという思いもあって「1人じゃない」っていうメッセージが自然と出てきましたね。曲を聴いてさらにがんばろうって思ってもらえたら。ただ、「東北」はもう意識しなくても意識している感じなんで。

DICK（B）　住んでるからね。どの曲も、東北のことを考えてないわけじゃないよね。

Maynard　別に地震があったからっていうわけでもなく、インディーズ時代からずっと、何も考えなくてもそのエッセンスは出てると思います。歌詞に出てくる風景とかね。例えば（「thank you」の）「錆びた屋根の上の夕日が」っていうのは、インディーズの頃何年か住んでた下馬（げば）の家のトタン屋根を見ながら書いたものなんですよ。

──へえー。

Maynard　どこに住んでいても友達や家族がいるところは大事ですよね。MONKEY MAJIKも環境によるひとつの産物だし。だから切り離せないし、だからたぶん（キャンペーンソングの）話をいただいたんでしょうね。

──歌詞にはリスナーの心を癒し励ますメッセージが必要最小限の言葉でつづられていますが、Blaiseさんの英詞パートの意訳を教えていただけますか？

Blaise（Vo, G）　MONKEY MAJIKと東北だったり、東北3県だったり、民放連とNHKだったり、みんながコラボして1つの大きなチームになっているでしょ。それを考えてこういう歌詞になりました。自分だけで考えていても1人では限界がある。「down」……落ち込むときもある、そのほうが多いかもしれない。そんなとき、ほかの人と一緒になって面白いアイデアを作りましょうっていう。

──パートの最後の「What you have is a smile」というのは？

Blaise　smileすると体からいいホルモンが出るらしいんです。落ち込んでいても、smileを作ると自然と気分がよくなるんだって。だから「down」のときに一番大事なのは自分のsmile。ポジティブでいることは自分の中でも一番大事にしてます。

DICK　だから、ざっくり言うと「笑う門には福来る、だぜ」ということです（笑）。

MONKEY MAJIK節とは

──スタッフの方からもらった今回のシングルの資料に「歌詞、メロディともにMONKEY MAJIK節全開！」と書いてあったんです。今日はこの「MONKEY MAJIK節」とはなんぞや、ということを聞きたくて。

DICK　難しいなあ。

──そうですよね（笑）。MONKEY MAJIKの全楽曲に共通している何かがあるとしたら、なんですかね？

tax（Dr）　全部に共通性がない、ってことじゃないですかね。何にもとらわれないっていう。おそらくそういうことなのかな、MONKEY MAJIK節というのは。決まりがないという決まり。自分たちの中でも特にこれはやりたくないとか、そういうものも一切なくやってきてるんで。

──NGなこともなく、限りなく自由なんですね。

Maynard　音楽性の面ではないですね。

tax　とりあえずやってみよう。

DICK　もちろんやってみてから「あ、これヤだ」っていうのはいっぱいあるけどね（笑）。

Maynard　最初から「こういう人たちじゃないからやめよう」っていう決まりはないです。

──そうではない、こだわりを守るアーティストもいますよね。

Maynard　「ロックバンドでロックしかやらない」「うちらはヒップホップ」って人たちもリスペクトしてるし、自分たちのジャンルを決めたことはすごく素敵だなと思うんですけど、僕らはバックグラウンドもみんなそれぞれだし。ハマらないタイプなんです（笑）。すごく好きになったアーティストやジャンルはあるけど、そのムーブメントに入って……っていうことができなかった。それがカッコ悪いと思ってるわけではなく、単にそういうのは興味ないかなって。曲を作っててもルールがないのはすごくラクです。メロディがよければいいんじゃないって。

tax　うん、そうだね。

Maynard　だから、4人ともある意味エゴを消そうとしてるのかもね。「このギターパート、俺がやりたいからやらせてよ」っていうのもないし。若いときは違ってたかもしれないけど、今は我を気にしすぎてカラーを失うくらいだったら自分を消していい音楽作ろうっていう、ちっちゃなポリシーはあるかもしれない。エゴを消せばいいものが生まれるんじゃないかなって。

──自分自身の趣味嗜好よりも、MONKEY MAJIKとしてのプロダクトを考えるってことですか？

Maynard　そういう部分もあると思う。こういう感じ……僕らはシェフで、大きな鍋にいろんな材料を入れて、おいしくなければやめる。でも「何これ、わかんないけどおいしい」みたいになればいいかなって（笑）。

──つまり“いい音楽”至上主義だと。

Maynard　うん、自分よりもその曲。だからMONKEY MAJIKの曲ってすごく説明しづらいんだよね。ごめんね、そういう言葉になっちゃうんだよね。

──いえいえ。

Maynard　逆に聞きたいよね、MONKEY MAJIKを聴いてる人たちに。例えば、こういうときにこういうバンドを聴きたいなってこととか、夏といえば誰々とかあるでしょ。何といえばMONKEY MAJIKなのかな？ アルバムの中でも曲がいろいろあるからさ、よくわかんないよね。イメージはあるでしょうけどね。

DICK　それ作っていこう。「東北へ旅行するときはMONKEY MAJIK」みたいな。全部の道の駅にCD置いてもらって。

一同　あははは！（笑）