15年前のスタッフのセールス姿

──確かにMONKEY MAJIKは特殊な立ち位置のグループだと思います。ロックバンドと謳ってるわけではない、かと言ってポップな曲ばかりでもない。いきなりエッジィな曲が投下されたりもするし、多種多様なジャンルとのコラボレーションもあります。

Maynard　たぶんスタッフは面倒くさいよね。プロモーターは「どう説明する？」って。

DICK　説明に困って「MONKEY MAJIK節」っていう言葉を考えついたんじゃない？

Maynard　そうだよね。僕、覚えてるのが、15年前に事務所のスタッフがいろんな店にセールスに行ってる姿。「日本でいうと○○みたいな、でも○○みたいな、○○みたいなバンドです。聴いてもらわないとわからないんです」って一生懸命説明するのを見て、ああ大変だな、もうちょっとわかりやすいバンドだったら、って。だから最初は「洋楽チックアーバンJ-POP」みたいに書かれてたよね。あと、カナダ人と日本人がいるってことで「ハイブリッドバンド」って。でもそうではない気がするんだよね。

DICK　普通に考えたら、兄弟がいるから普通のバンドよりハイブリッドじゃないと思う。

Maynard　そうそう（笑）。

──今、MONKEY MAJIKのことを知らない人に自己紹介するとしたらなんと言いますか？

Maynard　「仙台から来ました、MONKEY MAJIKです」って。15年間言い続けてるんですけど、そういう説明しかないかな。それを言ったあとは「あれ、外人2人……？」っていう反応をされますけど（笑）。

「仙台から来ました、MONKEY MAJIKです」

──でもやっぱり、短い自己紹介の中にも「仙台」は入れるんですね。

Maynard　入れてますね、ずっと。確かに言う必要はないけど、それがもうジンクスになってるんですよね、僕の場合。言わないと「今日落ち着かない」って。……どうなの？ みんなに聞いたことなかったけど、ずっと言い続けてるのって。

DICK　ただ事実を言ってるから、何も。

tax　初期の頃って仙台の人に「また来てね」みたいなこと言われたりさ、東京に住んでると思われてた時期もあって。だから「仙台に住んでるよ」って何回も言ってたところがあるよね。ステージで言わないとわかってもらえないから。

Maynard　ああ、確かに。空港とかでよく言われてたよね。

DICK　「今度いつ帰ってくるんですか？」とかさ。

Maynard　あと、仙台が少し大変な時期にバンドを組んだからっていうのもあるかな。僕らが活動を始めた頃、すべてのレコード会社の仙台の営業所がクローズしたんですよ。業界的に仙台のシーンがなくなって、仙台らしさを押し出したアーティストもすごく少ないから、じゃあ自分たちがやろうっていう。

──なるほど。

Maynard　僕、日本に来る前、日本って地方ごとのシーンはないっていうイメージだったんです。同じサイズのイギリスでも、マンチェスター、リバプール、ロンドン、コーンウォールと、いろんな場所ごとのサウンドがありますよね。日本はそのときあまりなかったと思うんですよ。色濃いのは沖縄くらいですかね。北海道のバンドでも東京に住んでて、東京に集約されてるような。だから僕らもプライド的なものがあったかもしれないね。MONKEY MAJIKが仙台サウンドっていうわけでもないんだけど。

仙台はコミュニティの力が強い

──Blaiseさんは何歳で仙台に来たんですか？

Blaise　21歳ですね。で、今34歳。

──海外出身の方から見て、仙台のよさってどういうところでしょうか？

Blaise　ハートがすごいピュアで、風景も美しくて、ちょっとカナダっぽいなって最初は思ったね。ただ頭では仙台というより日本っていうイメージで、それからその土地を勉強してどんどん好きになりました。東京やニューヨークみたいな大きい街だと、チャレンジをして面白いと思われるのが難しいというか、あまりインパクトがないかもしれないですよね。東北で、仙台で、ハイブリッドなバンドで活動するほうがインパクトがもっと強くなる、そっちのほうが面白い。それで仙台がホームになりました。

Maynard　こういうバンドって世界にあまりないから、周りから見たらいっぱい疑問があるんでしょうね。でもすごくシンプルに、たまたまこの4人が出会って、そっちのほうが面白いじゃんってなっただけなんだよね。

Blaise　あと、コミュニティの力が強いですよね。街の名前を大事にしたり、コミュニティごとに面白いプロジェクトをしたり、コラボレーションをしたり。みんなコミュニティのことをすごく大事にしてると思います。