ももいろクローバーZ「Event Horizon」インタビュー|“新しさ”と“懐かしさ”を感じられるニューシングル (2/2)

繰り返され、続いていくことの大切さ

──シングルには「Event Horizon」とタイプの異なる2曲がカップリング曲として収録されます。まず「Cosmic Commotion」ですが、モダンなデジタルサウンドを軸にしながらも、メロディはとてもかわいらしい楽曲です。

玉井 AメロBメロやサビの境目があまりない曲ですけど、全体的にすごく覚えやすいメロディで、何度もリピートしたくなる曲ですよね。

佐々木 思わず口ずさみたくなるような心地いいメロディで、聴き入っているうちに気付いたら曲が終わってるようなイメージ。

百田 ちょっとチルタイム感があるよね。

玉井 うん。激しい曲調の中でメロディが変化していく「Event Horizon」とは対照的で、印象的なメロディが落ち着いた感じで繰り返されるのが「Cosmic Commotion」ですね。

佐々木 そんな中にも、広大な宇宙にぽつんと1人いるような、ちょっと寂しさや切なさを感じさせるメロディが含まれていて。エモーショナルな要素もある曲かなと思います。

──ももクロらしいかわいらしさもあるけど、表現としては“大人になったももクロ”になっている。

高城 私たちの曲は勢いがあったり、感情的な歌い回しが多かったりするので、ここまで無機質なデジタル音はすごく新鮮です。でも、歌詞の1つひとつから温かみが感じられるし、あーちゃん(佐々木)が言ったように切なさが含まれていたりする。

百田 「終わらないものが増えてきた」「滅びそうにない」とか、そういう意味合いの歌詞も今までなかったよね。以前は「今しかない!」みたいな勢いあふれるフレーズを歌うことが多かったと思うんですけど、今回のような“繰り返される”世界観にも、大人になったももクロが表れているのかなと思います。

百田夏菜子

百田夏菜子

──アイドルの世界は、終わりが定められている刹那的なものという印象が強いですけど、17年も活動が続いているももクロだからこそ届けられる「終わらないもののすごさ」「繰り返され、続いていくことの大切さ」が、この曲では説得力を持って表現されているのかなと思います。

佐々木 「Cosmic Commotion」を書いてくださったPAS TASTAさんも、この4人が17年間同じグループで活動し続けていることをリスペクトしてくださっていて、その部分をこの曲に落とし込んだそうです。自分たち自身はそんなにすごいことをしてきたつもりはないし、この曲の歌詞のように「いつのまにか 遠くまで来て 新しいフォームを編み出して」いただけなんですよ。でも、そういう私たちの心情を歌詞に乗せて、すごくきれいに描いていただけたのはうれしいです。

──それにしても、この4人が変わらずももクロで活動し続けているのは改めてすごいことだと感じます。

佐々木 自分たちはその渦中にいるから当たり前に感じちゃっているけど、外側の方々……私たちのことをずっと見てくれている方々が、ももクロの活動が長く続いていることを評価してくださるから、“続ける”って難しいことなんだなと再確認できています。この環境は当たり前じゃないんだなと、活動を続けていられることへの感謝の思いが年々深まっている気がします。同時期に活動を始めたグループが解散という選択をすることも増えてきましたし、そういう話を耳にするたびに時間の尊さを感じます。

今は悔しかった思いさえも愛せる

──シングル3曲目の「可視光線」はストレートなロックチューンで、全体的にエモーショナルさが際立つ仕上がりです。

高城 さわやかで、聴けば聴くほど「大人の青春」というイメージが強く伝わってくる曲ですよね。

玉井 レコード会社の方からは、“現代版”の「コノウタ」(2011年発表の1stアルバム「バトル アンド ロマンス」収録曲)のような曲と説明されました。

玉井詩織

玉井詩織

百田 イントロを聴いて確かにそう思ったよね?

玉井 うんうん。「あ、そういうことか!」って、すごく腑に落ちました。イントロを聴いた瞬間、汗だくで踊ってきた過去の道のりを思い出させてくれるようで。この曲も、ここまで活動を続けてきたからこそ歌える内容だと思います。

高城 「今」というワードがたくさん入っていますが、いろんな物語があったから今ここにいて、その物語の一瞬一瞬がすごく素敵なもの、光り輝くものなんだなって。1つひとつの歌詞がそう思わせてくれます。

百田 曲の冒頭に「指の隙間から零れ落ちてくものさえ今は愛せるから」というフレーズがあるんですけど、「今も」じゃなくて「今は」という表現になっている意味を考えたときに、「過去の自分たちは全部をつかみたかったんだな」と思いました。がむしゃらにいろんなことに挑戦していたけど、ときにはつかみきれないものもあって。そういうときは悔しくて泣いて……でも、今“は”その悔しかった思いさえも愛せる。「は」という1文字でその感情が表現されていると思います。

佐々木 「可視光線」はライブでめちゃくちゃ盛り上がりそうだよね。モノノフさんの前で歌ったら、私たち自身も心を打たれそうです。

佐々木彩夏

佐々木彩夏

──今回の3曲はライブのどこに配置するかで、果たす役割が変わってきそうですね。

高城 確かに。どれも個性が立っているし、前後の曲によって聞こえ方が変わりそう。

百田 この3曲がレパートリーに加わることによって、ももクロのライブに新しさと懐かしさの両方が足されると思います。今後のライブに面白い変化が起きるとうれしいですね。

──このシングルのリリース日の翌週、8月2日と3日には神奈川・横浜スタジアムで夏の大型ライブ「ハマの夜祭り番長襲名記念 ももクロ夏のバカ騒ぎ2025 in 横浜スタジアム」が開催されます。

佐々木 「夏のバカ騒ぎ」の開催は3年ぶりで、私たちも待ちに待っていました。「夏のバカ騒ぎ」でしか得られない栄養があるので、開催できることがすごくうれしいですし、早くモノノフのみんなと騒ぎたいです。

高城 横浜スタジアムでライブをするのは初めてですが、すごく開放的な会場ですし、祭りをするにはもってこいの環境だと思うので、盛大にやりたいなと。しかも、この3人(高城、玉井、佐々木)の地元に近いところなので、特別な場所での特別な2日間になると思います。

──今回は「ももクロ定番夏ソング総選挙」と称して、ライブで披露される楽曲の一部がファン投票で決定しています。上位10曲に新旧の楽曲が入り混じっていて興味深い結果になりましたね。

高城 「天手力男」が1位なんだっていう驚きもありつつ、夏にもってこいの曲も入っていて。「夏ソング総選挙」は初の試みで、事前に披露する曲を予告するのも珍しいことですが、初めてライブに来る方は予習しやすいんじゃないかなと思います。

佐々木 「天手力男」は過去の夏ライブ(「ももクロ夏のバカ騒ぎ2014 日産スタジアム大会 ~桃神祭~」参照:雨にも負けず!ももクロ「桃神祭」でバカ騒ぎ)で1曲目に披露したことがあって。そのときはものすごい雨が降って、開演が1時間くらい遅れちゃったんですけど、1曲目にこの曲を披露したら空がパッと晴れたんです。きっとそういう思い出もあって「天手力男」に投票した人も多いんじゃないかと思います。それにこの曲、4人になってからはフルでは歌っていないし、私たち自身も今のももクロが披露するとどんな感じになるか想像がつかないので、そこも楽しみです。

百田 私たちは季節に合わせてライブを開催していますし、モノノフさんの中でライブの思い出と曲がセットになっているんだなと、強く実感したランキングでした。

──ハマスタでの「夏のバカ騒ぎ」を経て、2025年後半はどのように過ごしていきたいと考えていますか?

百田 前回のインタビューでもお話ししたと思いますが(参照:ももいろクローバーZインタビュー|ももクロの歴史を彩るアニメタイアップ曲)、今回の「Event Horizon」も含めて私たちはいろんなアニメのタイアップ曲を歌ってきたので、それを集めたアルバムを作ったり、アニメ主題歌縛りのライブを開催したりできるんじゃないかなと思っていて。

玉井 大人の皆さんに、いろんな壁を乗り越えてもらって(笑)。

佐々木 だって、すごく夢があるじゃないですか。これだけたくさんのアニメ作品の楽曲を歌わせていただいているのって、正直誇っていいことだと思うんです。だから、それらをひとつの作品としてまとめることができたら最高ですよね。

高城 どんなジャケットになるのか、ワクワクするよね。今まで描いてもらった私たちのイラストを並べてみたり。

高城れに

高城れに

百田 許可が大変そう(笑)。でも、そうやって今までの歴史をつなぐ、ということをしてみたいよね。

佐々木 17年という歴史があるからこそ、できることってたくさんあると思います。あと、私は去年1人で海外のフェスに出させてもらったんですけど、ひさしぶりにももクロとしても海外でライブをしてみたい。「Event Horizon」をリリースすることですし、ガンダムを引っさげて海外に行ってみたいな。

公演情報

ハマの夜祭り番長襲名記念 ももクロ夏のバカ騒ぎ2025 in 横浜スタジアム

  • 2025年8月2日(土)神奈川県 横浜スタジアム
  • 2025年8月3日(日)神奈川県 横浜スタジアム

プロフィール

ももいろクローバーZ(モモイロクローバーゼット)

百田夏菜子、玉井詩織、佐々木彩夏、高城れにの4人からなるアイドルグループ。2008年にももいろクローバー名義で結成され、2010年5月にシングル「行くぜっ!怪盗少女」でメジャーデビューを果たした。2011年4月に早見あかりがグループを脱退したあと、グループ名をももいろクローバーZへ改名。2012年にグループ結成当初から目標としていた「NHK紅白歌合戦」に初出場し、2014年3月には女性グループとして初となる東京・国立競技場での単独ライブを成功させた。2016年2月に3rdアルバム「AMARANTHUS」、4thアルバム「白金の夜明け」を同時リリースし、同月より初のドームツアーを開催。2018年5月には結成10周年を記念した初の東京・東京ドーム公演を行ったほか、ベストアルバム「桃も十、番茶も出花」を発表した。結成11周年記念日である2019年5月17日に5thアルバム「MOMOIRO CLOVER Z」、その3年後の結成14周年記念日である2022年5月17日に6thアルバム「祝典」をリリース。2024年5月に7thアルバム「イドラ」を発表。8月にアニメ『転生したらスライムだった件 第3期』オープニング主題歌 第二弾「レナセールセレナーデ」、2025年7月にアーケードカードゲーム「機動戦士ガンダム アーセナルベース FORSQUAD」の主題歌「Event Horizon」をCDリリースした。