水樹奈々|戦いと解放の日本武道館7DAYS

“GATE”の骨格を作る連想ゲーム

──日本武道館での7DAYS公演というのは、長期間におよぶツアーともまた勝手が違いますよね。

ツアーだと会場が変わっていってしまうので、反省点を見つけて次に反映しようと思っても、また別の問題が見つかったりするんです。でも今回はずっと同じ場所だからこそ、どんどんブラッシュアップしていけるという利点があって。音響チームも、照明チームも、もっとよくなるようにと突き詰めていけるのは、舞台に近い感覚でしたね。これまでライブでは感じたことのない感覚でしたし、達成感も大きかったです。

──ミュージカル「ビューティフル」(参照:水樹奈々×平原綾香 ミュージカル「ビューティフル」特集)での体験を受けて、連日使用する楽屋を自分が一番リラックスできる空間に染め上げるという“リベンジ”をしたいとおっしゃってましたが、実現できましたか?

あまりデコラティブには作り込みませんでしたけど(笑)、グッズを並べたり、お気に入りのアロマを置いたりしました。いつでもトレーニングできる空間も作れたし、望んでいたものにはなりました。

──アメリカのゴールデン・ゲート・ブリッジをモチーフにしたステージで、閉ざされた“GATE”の鍵を解く、という7日間の通底するテーマが用意されていましたが、あれはどのような発想からできあがっていったのでしょうか。

大きな橋がかかった「NANA MIZUKI LIVE GATE 2018」のステージセット。

ステージセットはギリギリまで悩んでいたんです。先ほどお話したように、武道館だからこそ一番いい形でバイクを登場させる演出ができると思ったので、じゃあセットはどうしようかと。私の場合、曲調的にどちらかと言うとヨーロピアンでデコラティブなイメージが強いので、初めは凱旋門とかかな?って考えてたんです。でも、せっかくバイクに乗るならやっぱりハーレーがいいし(笑)、バイクに乗るなら凱旋門ではないかなって。じゃあアメリカンな感じで、バイクをかっ飛ばして、ゲートで……と考えたときに、「あれ? ゴールデン・ゲート・ブリッジなら“GATE”が入ってる!」と気が付いて。じゃあどのようにストーリーをつなげていこうかと考えたときに、何かゲート絡みで事件を起こさなくちゃいけないわと(笑)。

──事件(笑)。

水樹奈々

同時にCherry Boysのメンバー紹介映像をどうするかも考えていて、刑事モノなんていいなあと思っていたら……私も組織に所属している秘密警察という設定にして、ゲートが閉ざされた秘密を追う、7日間で7つの鍵を集める、そうすれば日替わりのゲストに絡められて……と連想ゲームのようにストーリーがつながっていって。設定を考える前に、今回はせっかく東京で7日間ライブをやるのでゲストを呼びたいねって三嶋プロデューサー(三嶋章夫。水樹をデビュー時から支えるプロデューサー)から提案があったんです。通常ゲストの方はアンコールに出てきていただいたり、途中のトークコーナーで呼び込んで……という形が多いですけど、今回は物語のキーマンとして出てきてもらいたいと考えていて。そこで「音楽で力を解放する“共奏者”」という設定につながったんです。

──イメージがうまいこと連鎖しましたね。

しかも歌う曲にも意味合いを持たせて、最終日に答え合わせのように着地できたら完璧だよねって。どうしても最終日に「深愛」を歌いたかったので、じゃあ「深愛」につながるストーリーを組み立てるにはどの曲を選んだらいいんだろう……と全部つながっていく連想ゲームでした。

──結果、7日間で歌った“共奏者”とのコラボ曲の頭文字をつなげると“SAY LOVE”になるという仕掛けが。

そうなんです。7文字でどう表すか考えるのも難しかったですし、ゲスト7組の個性を生かした曲をチョイスしたかったので……これが形になったのも、持ち歌が増えた今だからこそなんだなと思いました。10年前なら「Aの歌が足りない!」みたいなことが起きていたかもしれないし(笑)。今だからこそできた、ぜいたくな選曲だなと思います。

──スガシカオさん、FLOWのKOHSHIさんとKEIGOさん、谷山紀章さん、クリス・ハートさん、武田真治さん、蒼井翔太さん、phatmans after schoolのヨシダタクミさんと、バラエティに富んだ豪華ゲストがそろいましたよね。

  • 「NANA MIZUKI LIVE GATE 2018」初日の“共奏者”、スガシカオ。(写真提供:キングレコード)
  • 「NANA MIZUKI LIVE GATE 2018」2日目の“共奏者”、FLOWのKOHSHIとKEIGO。(写真提供:キングレコード)
  • 「NANA MIZUKI LIVE GATE 2018」3日目の“共奏者”、谷山紀章。(写真提供:キングレコード)
  • 「NANA MIZUKI LIVE GATE 2018」4日目の“共奏者”、クリス・ハート。(写真提供:キングレコード)
  • 「NANA MIZUKI LIVE GATE 2018」5日目の“共奏者”、武田真治。(写真提供:キングレコード)
  • 「NANA MIZUKI LIVE GATE 2018」6日目の“共奏者”、蒼井翔太。(写真提供:キングレコード)
  • 「NANA MIZUKI LIVE GATE 2018」最終日の“共奏者”、ヨシダタクミ(phatmans after school)。(写真提供:キングレコード)

皆さんご多忙な方々なので、スケジュールのパズルもよく奇跡的にハマったなと思いましたし、皆さん「面白そうだね!」と二つ返事でOKしてくださって、本当にうれしかったですね。ベストアルバム「THE MUSEUM III」を携えて、これまでの歩みを振り返るライブだからこそ、音楽を通していろいろな出会いがあったんだということも表現したかったんです。

自分の“GATE”を開いた楽曲を

──演出が決まってからは、全体の流れについてはスムーズに?

「深愛」を熱唱する水樹奈々。

いえ、セットリストもけっこう悩みました。「THE MUSEUM III」を中心に選ぶのか、それとも“GATE”というテーマに合わせて「新しい扉を開いてきた楽曲」を中心に構成していくのか。そこのバランスはすごく考えました。「THE MUSEUM」(2007年2月に発売された水樹初のベストアルバム)を出したときのライブは「NANA MIZUKI LIVE MUSEUM」というタイトルで、シングル表題曲を並べた形にしたんですけど、それとはまた違う形にしたかったので。応援ソングが歌いたいというきっかけになった「POWER GATE」、初めて作曲の扉を開けた「SUPER GENERATION」、紅白出場という未知の扉を開けた「深愛」、12年前の誕生日に武道館で歌った「RUSH&DASH!」、「魔法少女リリカルなのは」という作品を通じて声優アーティストという存在を広く知ってもらうきっかけになった「ETERNAL BLAZE」……それぞれ意味のあるもの、“GATE”というテーマに合った曲を選びました。

──確かにそこのバランスはいい感じで構成されていましたね。

それと、「NEOGENE CREATION」(2016年12月に発売された最新オリジナルアルバム)をリリースしたあとのツアー「NANA MIZUKI LIVE ZIPANGU 2017」(参照:水樹奈々が巨大な翼を背に歌い、屋内で盛大花火!「ZIPANGU」ツアー千秋楽)と出雲大社の御奉納公演(参照:水樹奈々、出雲大社で神話的な縁結びラブソングを熱唱)のあと、ワンマンライブはしばらく空いていたので、その間に歌いたかった新曲たちもどうしても歌いたくて。

──さらにベストアルバムに収録された新曲2曲も披露すると。

そうなんです。その全部をライブ1本分の曲数でどう配置するのかは、すっごく悩みました。

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あと7公演行ける

水樹奈々「NANA MIZUKI LIVE GATE」
2018年6月20日発売 / KING RECORDS
水樹奈々「NANA MIZUKI LIVE GATE」Blu-ray Disc

[Blu-ray Disc 2枚組]
7770円 / KIXM-323~4

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水樹奈々「NANA MIZUKI LIVE GATE」DVD

[DVD3枚組]
7770円 / KIBM-725~7

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NANA MIZUKI LIVE GATE 2018
2018.1.21 日本武道館
  • OP MOVIE
  • Vitalization
  • ROMANCERS' NEO
  • Sacred Force
  • MC1
  • Poison Lily
  • WAKE UP THE SOULS
  • HOT BLOOD
  • Cherry Boys SHOWCASE「音楽刑事七係」
  • RUSH&DASH!
  • MC2
  • ファンタズム
  • 蒼き光の果て-ULTIMATE MODE-
  • team YO-DA SHOWCASE「OPEN THE GATE」
  • GLORIA
  • GUILTY
  • MC3
  • Destiny's Prelude
  • 粋恋
  • SHORT MOVIE「as key what of you ?」
  • レイジーシンドローム / guest:ヨシダタクミ(phatmans after school)
  • MC4
  • SHORT MOVIE「LOVE is my key」
  • 深愛
  • TESTAMENT
  • Rock Ride Riot
  • STARTING NOW!
  • DISCOTHEQUE
  • MC5
  • POWER GATE

[ENCORE]

  • ETERNAL BLAZE
  • 天空のカナリア
  • MC6
  • SUPER GENERATION
  • LINE UP

[W ENCORE]

  • MC7
  • POWER GATE
  • ENDING
  • END ROLL
SPECIAL FEATURE
  • スペシャルゲストコーナー
    1. [Day1]「アンビバレンス」/ guest:スガ シカオ
    2. [Day2]「Young Alive!」/ guest:KOHSHI & KEIGO(FLOW)
    3. [Day3]「VIRGIN CODE」/ guest:谷山紀章
    4. [Day4]「エデン」/ guest:クリス・ハート
    5. [Day5]「Orchestral Fantasia」/ guest:武田真治
    6. [Day6]「Synchrogazer」/ guest:蒼井翔太
  • NANA MIZUKI LIVE GATE
    1. [Day1] 2018.1.11 日本武道館
      ・TRY AGAIN
    2. [Day5] 2018.1.18 日本武道館
      ・禁断のレジスタンス
    3. [Day6] 2018.1.20 日本武道館
      ・UNCHAIN∞WORLD
      ・光
      ・恋の抑止力
      ・COSMIC LOVE
      ・BRAVE PHOENIX
  • making of LIVE GATE
  • 音楽刑事七係
  • オーディオコメンタリー
NANA MIZUKI LIVE ISLAND 2018
  • 2018年6月23日(土)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
  • 2018年7月7日(土)大阪府 大阪城ホール
  • 2018年7月8日(日)大阪府 大阪城ホール
  • 2018年7月15日(日)岐阜県 長良川国際会議場 メインホール
  • 2018年7月21日(土)広島県 広島サンプラザ ホール
  • 2018年7月28日(土)高知県 高知県立県民体育館
  • 2018年8月4日(土)熊本県 熊本県野外劇場アスペクタ
  • 2018年8月11日(土・祝)愛知県 日本ガイシホール
  • 2018年8月12日(日)愛知県 日本ガイシホール
  • 2018年8月18日(土)和歌山県 和歌山県民文化会館 大ホール
  • 2018年8月18日(土)和歌山県 和歌山県民文化会館 大ホール
  • 2018年9月1日(土)埼玉県 メットライフドーム
水樹奈々(ミズキナナ)
水樹奈々
愛媛県出身の声優アーティスト。1997年に声優としてデビューし、「魔法少女リリカルなのは」「ハートキャッチプリキュア!」「NARUTO -ナルト-」といったアニメ作品で人気を集める。2000年にはシングル「想い」で歌手デビュー。2009年6月にリリースされたアルバム「ULTIMATE DIAMOND」で、声優アーティストとして初のオリコン週間ランキング1位を獲得した。同年12月には「NHK紅白歌合戦」に初出場。2011年12月には声優アーティスト初の東京ドームコンサートを2日間にわたって開催し、大成功に収めた。2013年には初の台湾公演を行い、海外へも活動の幅を広げている。2016年9月には長年の夢として掲げていた兵庫・阪神甲子園球場でのワンマンライブを実現させ、12月には通算12枚目となるオリジナルアルバム「NEOGENE CREATION」を発表。2017年1月より全国ツアー「NANA MIZUKI LIVE ZIPANGU 2017」を開催し、4月には島根・出雲大社東神苑でスペシャルライブ「水樹奈々 出雲大社御奉納公演」を行った。7月には2枚同時シングル「Destiny's Prelude」「TESTAMENT」をリリース。7月から8月にかけて東京・帝国劇場で上演されたブロードウェイミュージカル「ビューティフル」では平原綾香とのダブルキャストで主人公のキャロル・キングを演じた。2018年1月にはベストアルバム「THE MUSEUM III」を発表し、合計7日間におよぶ東京・日本武道館公演「NANA MIZUKI LIVE GATE 2018」開催。この最終公演を収めたライブBlu-ray / DVDが6月に発売された。