MIYAVI|つながりが試される時代に一筋の光を

LDHに入って超合金の腕と足が装備に加わった

──そういえばMIYAVIは昨年12月にLDHへ移籍しましたが、環境の変化はありましたか?

倉庫がキレイ!!!!(笑)

──倉庫?(笑)

楽器を置いておく倉庫(笑)。ていうのは冗談ですが、でも本当に設備が素晴らしく整ってる。会議室がいっぱいあるし、リハーサルスタジオもある。アーティストが創作に没頭しやすい環境をしっかり作ってくれている。改めてHIROさんはじめ、LDHの皆さんが作ってきた財産に感謝ですね。だって僕は自分で自分のオフィスを仕切ってきたから、これまでは倉庫や会議室をどこにするかはもちろん、電気と水も自分で引いてきていたわけで(笑)。

──まあ、そうでしたよね。

移籍の決断に至った理由の1つは、やはり自分が自分を俯瞰して見たときに、MIYAVIというアーティストをもっとクリエイティブに集中させたかったから。例えば今までは「これをこうしたい」と言うのも「バジェットがかかる」と言うのも「いや、それ待てよ!」と言うのもすべて自分だった。今回、前の事務所から独立してちょうど10年だったし、そろそろいいだろうなって。HIROさんは僕に「MIYAVIのまま、MIYAVIとして羽ばたいていい。それを共有しましょう。LDHを自由に使いこなしてほしい」と。HIROさん自身もアーティストだからそう言ってくれたんだと思います。経営者として、リーダーとして、素晴らしい器を持った人だと思います。今、僕、LDHの全部署の人と会っていますよ。ファンクラブからアパレルからすべての人に。

──おお。

もう各部署とやり取りをしています。みんな、とても優秀。自分に超合金の腕と足が装備に加わったような気分です。音楽事務所だけじゃないキャパシティがあるので、僕自身もすごくワクワクしています。

決意表明、“さとうさん”のための歌、権力者たちへのメッセージ

──アレンジは、MIYAVIらしいビートの中に、昨今のEDMのさまざまな要素の“おいしいとこ取り”がされていて、シンプルに心地よくオーディエンスを喜ばせようという姿勢が感じられます。

そうですね。今回も自分なりにはこだわりのギタープレイをたくさん詰め込んでいるけれど、それってギターに詳しくない人や興味の薄い人にとっては、どうでもいいことじゃないですか。それを踏まえたうえで、どうリスナーの心を射抜けるギターを弾くのか。さっき話した呼吸や手の抜き方というのは、そういうときの選択肢の1つでもあるんです。

──「Holy Nights」の収録曲についてそれぞれ詳しくお話を聞かせてください。まずは1曲目の「Holy Nights (Intro)」からお願いします。

歌詞の中で、英語で書いた部分は「世界がバラバラになりそうなとき、音楽が光を示してくれる」ということ。つまり音楽の力ですね。「未来を救ってほしい」という思いを音楽に託した、重要なイントロです。そこからつながっていく2曲目の「Need for Speed」は「新しい世界に飛び込む」という、今のMIYAVIにとっての決意表明とも言える曲です。すごいスピードで世界を駆け抜ける僕の周りで見えているのは、さっきも話した難民問題や異常気象やパンデミックや貧富の格差といった世界が抱える問題です。3曲目の「Holy Nights」は、アルバム全体を象徴するメッセージ。「レ・ミゼラブル」じゃないけれど、「たとえどんな絶望の淵にいても、それでも僕たちは歌う」この思いは今回、僕が歌の力、言葉の力と真摯に向き合いたいと思った動機でもあって。「世界がこのままいつか消えてなくなるなら この瞬間をこの瞬間を生きる」「僕らは 歌う 傷だらけ 手つないだまま 君 想う Holy, holy nights ただ Holy, holy nights」という歌詞が、僕の今の思いのすべてです。歌で少しでも聴いてくれる人に勇気とパワーを与えたい、その一心です。

──4曲目の「Bang!」は楽天モバイルのCMソングですね。

三木谷(浩史 / 楽天株式会社の代表取締役会長兼社長)さんが、もともと「DAY 1 (Reborn)」をすごく気に入ってくれていて。中間に入っていた広告代理店から、「似たような楽曲を作れませんか?」と言われて(笑)。

──広告屋とかテレビ局の人って「◯◯と似たような曲を」とフラットに言ってくるらしいですね。俺、とてもじゃないけど、アーティストにそんなこと言えません……。

全然言ってくるよ!(笑) まあ、それも楽しい試練だから今回はトライしてみました。僕自身、三木谷さんに共鳴する部分が多いんです。彼も本当にいつも挑戦している人で、同じように海外でも悔しい思いをたくさんしてきたはずの人だから、言わずとも感覚がよく分かるんです。だから「A future only a believer gets to see(信じるものだけが見える未来), A place where we unite(僕たちがつながる世界)」 という歌詞が出てきました。三木谷さん、聴いて一発OKでした。共鳴してくれたと思い、うれしかったですね。

──そうだったんですね。5曲目は「Heaven is A Place On Earth」はどんな曲になりましたか?

これは全国の“さとうさん”のための歌(笑)。

──さとうさん?

お砂糖……つまりsugarの歌。エンジェルのお砂糖、知らず知らずのうちにハマってしまう、アディクション(嗜癖)の歌ですね。最初はもっと怖い歌詞を付けていたんだけど、逆にそれだと退屈だと思えたので、ちょっとだけ甘く味付けしてみました。

──なるほど(笑)。

6曲目の「Danger Danger」は、今この世界が置かれている危機的な状況への注意喚起というか。「I do not pray for miracles.(僕は祈らない 奇跡のために歌う)」「I do not pray(祈らないけど)」「I just play and I sing(その代わりに僕は演奏して歌う)」という歌詞は、僕自身のスタンスでもあって。「One day you might just be us(お前たちもいつか俺たちみたいになるぜ)」というのは、権力者たちに対してのメッセージでもあります。