宮野真守インタビュー|支え合い、ともに歌おう──4年ぶりの“声”に気付かされたこと

宮野真守のライブに“声”が戻ってきた。今年9月から10月にかけて行われた全国ツアー「MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2023 ~SINGING!~」で、宮野は観客の声援を解禁。ツアー開始直前の8月末に発表された新曲「Sing a song together」はそのタイトルの通り、会場に集まった観客と声を合わせて歌う、シンガロングをするために作られた曲だった。宮野の単独ライブ会場においては実に4年ぶりとなる大歓声、そして歌声。ツアーは大成功のうちに幕を下ろしたが、宮野はそこにかつてのライブとはまた違う実感があったという。

宮野はこの「Sing a song together」という楽曲をどのような思いで制作したのか。改めてCDシングルとしてリリースされるタイミングに合わせ、音楽ナタリーでは宮野にインタビュー。ツアーを通して感じた思いやアーティスト活動15周年を迎えた現在の心境、来年6月に控えるシンフォニックコンサート「billboard classics 宮野真守 Premium Symphonic Concert 2024」への意気込みを語ってもらった。

取材・文・撮影 / 臼杵成晃

みんなの声がパフォーマンスの後押しに

──昨年末の全国ツアー「MAMORU MIYANO ARENA LIVE TOUR 2022 ~ENTERTAINING!~」はまだ観客の発声が禁止で、宮野さんのコールに観客がペンライトの動きで返すという無言のコール&レスポンスが行われました(参照:宮野真守、3年ぶりの歌って踊るライブツアー!身一つで体現したエンタテインメントの道標)。

ああ、あのときはそうでしたね。

──さいたまスーパーアリーナの2階席から観ていて、あまりの一糸乱れぬ動きに「CGみたいだ!」と思いました(笑)。今年のツアー「MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2023 ~SINGING!~」ではついに観客の声援が解禁となりましたが、ひさしぶりの歓声はいかがでしたか?

この3年4年、声出しというのは本当に慎重に考えなくてはいけない問題で。どんなアーティストもいろんな試行錯誤をしながらエンタメを進めてきたと思うんです。それは僕も同じで、難しいこともたくさんあったんですけど、何より歩みを止めないことを大事にしてきました。歩みを止めないとなると、そのときそのときで考えうる最善を尽くすしかない。苦しかったし難しかったけど、自分なりに最善を尽くせたと思うんですよ。「ENTERTAINING!」では声を出せないなりの面白いライブを作れたと思うし、その先にあるもの……「SINGING!」では、新しく「声出しができるライブを作る」という考え方で進めていきました。

宮野真守

──元の状態に戻す、という考え方ではなく。

そうです。「マモのライブが帰ってきた!」「完全復活!」みたいな言い方はしましたけど、実際は完全復活と言える状況ではないじゃないですか。明らかに4年前とは状況が違う。声援解禁と言っても、慎重な姿勢を取っ払うわけでもなく、マスクの着用はお願いしていました。今回は我々のチームも腹をくくって声援ありのツアーをやると決めたし、ならばまずはしっかりお客さんをアテンドしようと考えたんですよ。だからタイトルも「SINGING!」、歌いますよ、みんなにも歌ってもらいますよと。ただ、そこについては「絶対に声を出せよ」じゃなく「もう我慢しなくても大丈夫だよ」と言ってあげられるような状況を丁寧に作って、安心してファンのみんなが楽しめる、参加してよかったなと思えるものを目指すという、ライブに対する新たな向き合い方をすごく考えました。

──そこは本当に難しいですよね。最近はよく「コロナ禍が明けた」という言葉が使われますけど、耳にするたび「ん? そう言い切っていいのか?」と思いますし……。

僕もそうで。だから難しかったんですよ、アテンドの仕方が。ただ、来てくれたみんなとは最高の時間を過ごしたいし、じゃあ「楽しかった」と思って帰ってもらうにはどうしたらいいのか、という考え方。みんなまだ不安を抱えながら、あの場に集まってくれたと思うんですよ。後日ラジオにメッセージを送ってくれた人の中には、「今までライブに行くのは断念してたけど、少し緩和された中だから今回は行けるんじゃないかと思って参加してみました」という医療従事者の方もいて。どれだけ慎重になるかも人それぞれだから、いろんな覚悟を持ってライブ会場に来てくれたみんなに向けて、僕らは何ができるのか。その場でできることを考えるしかない。

──いつでも変わりうる状況にどう対応できるか。元に戻ったわけではないという考え方はすごく誠実だと思うし、以前とはまた別の新しいライブの形を模索しているという感覚もすごくよくわかります。

結果、ツアーすべてのステージを終えて思ったのは、やっぱり「やってよかったな」と。みんなの声があってこそのライブなんだなと再認識することになりましたね。それは「みんな声が出せてよかったね」というよりも、その声にこっちのパフォーマンスが後押しされる瞬間がいくつもあったから。

──演者である宮野さん自身が忘れかけていた感覚があった。

はい。「みんなで歌えると、パフォーマンスがこんなに向上するんだな」って。Jin Nakamuraさんと「Sing a song together」を作ったときに、僕は「一緒に歌う」ということと「このつらかった時期を一度思い返してみよう」という歌詞の紡ぎ方をしたんですけど、Jinさんはそこに「支え合う」、「we stick together」という言葉を添えてくれた。宮野くんとファンのみんなが支え合う言葉だと。「we stick together」ってすごくいいメッセージですよね。こちらから促すだけじゃなく、向こうからももらうということを、ライブによってさらに強く実感して。これが「stick together」なんだな、とライブで本当の意味をつかめたような気がします。

「声援解禁、やったね!」以上に「ああ、これがライブか」と

──「Sing a song together」は「ENTERTAINING!」ツアーを行うにあたり、みんなで歌うことを想定してツアー開始直前の8月23日に配信リリースされ、翌日にはミュージックビデオも公開されました。まさにツアーで歌うための曲として制作されたわけですよね。

はい。なのでJinさんには、次のツアーでみんなで歌うための曲であることと、僕がそこにどういうメッセージを込めたいのかを最初にお伝えしました。

──それに対してJinさんが「we stick together」というフレーズを添えて返してきたと。

それによって、さらに僕の持っていたイメージも広がりました。実際にライブでシンガロングしてみたら、思った以上の相乗効果があった。ツアーならではの育ち方がありましたね。それは僕らのパフォーマンスだけじゃなく、お客さんのほうにも。ツアーだと1回だけじゃなく何回か来てくれるお客さんもいるわけで、メッセージを持ち帰ったあとの心持ち、「次はこうしよう」とか「こうやって歌おう」とか……僕はライブでサプライズを仕掛けることが多くて、新しい曲を初披露したり、ちょっとコミカルな曲を歌ったりしたときに「今日はこんなことがあった。じゃあ次はこうしよう」と、僕らはもちろん、お客さんの中でも変化していくんです。

──確かに宮野さんのライブでは必ずと言っていいほど観客とやりとりする場面がある印象ですし、その反応もツアーの序盤と終盤では変わってきますよね。

「バラードでコーラスをたくさん歌わされちゃったから、次はもうちょっと喉を整えてから行こうかなあ」とかね(笑)。声援ありのツアーをひさびさにやったことで、その変化もよく見えました。「声援解禁、やったね!」以上に「ああ、これがライブか」と。声が出せるという事実よりも、その周りに付随するものが帰ってきた。お客さんを率先して巻き込んでいくライブのスタイルを僕が取っているからこそ、持ち帰って反芻するものが多いかもしれないですね。それをこの4年間できていなかったことが何よりも大きかったんだなと痛感しました。

宮野真守

ただ単なるハッピーな曲にはしたくなかった

──「Sing a song together」は「もう我慢しないで oh 歌って」というフレーズで明確にシンガロングの意図を示しつつも、先ほど宮野さんがおっしゃっていた「つらかった時期を一度思い返す」という行為のうえでそれを求めていることが重要だと感じます。「モノクロに塗り変わる景色」が「鮮やかに蘇る color」を取り戻すまでの過程を歌っていて。

そうですね。ただ単なるハッピーな曲にはしたくなかった。「さあ歌おう!」じゃなくて「こういうことがあったよね、わかるよ」という実感を共有しておかないと軽くなるなと思ったので。

──宮野さんからJinさんに対して、楽曲のテイストやサウンドに対するリクエストはあったんですか? メロディもアレンジも明快で力強く、かつ優しい。その優しさが全体を包んでいるのがこの曲の肝だなという印象を受けましたが。

その優しい雰囲気は、単にハッピーなだけじゃない、手放しで喜ぶ曲じゃないという僕の意見をJinさんなりに汲み取ってくれたんだと思います。とはいえ根本的にハッピーな曲ではありたい、というのが最重要で、一緒にシンガロングできるような曲だからテンポもバラードほどゆっくりではなく、アップテンポすぎもしない。そういう細かいオーダーをしながら作っていきました。

──このたび改めて「Sing a song together」がCDシングルとしてリリースされます。CDにはオリジナル音源のほか、ツアーでの音声を収めた「Sing a song together LIVE ver.」も収められるんですね。

みんなの声も収録する、というのが今作の大きなポイントで。コンセプチュアルなツアーだったからこそ、その一番大事な要素を盤としてしっかり残しておきたかったんです。

──「SINGING!」の部分を。

はい。みんなの思いを拾えるように、全会場でいろんなところにマイクを立てて。それを編集して仕上げました。

宮野真守

──なるほど。どこか1公演の模様を収めるのではなく、ツアー各公演で集められたファンの歌声を凝縮しているわけですね。今、この時代にこのタイミングで歌うべくして作られたこの曲が、宮野さんのアーティスト活動15周年というタイミングにファンと共有できる1曲としてリリースされたことも素敵だなと思います。

ホントですね。それに関してはホントにたまたまで、15周年のタイミングで開催するツアーがたまたま声援を送ることができる状況だったという。15周年という事実にも、僕は多少背中を押してもらったところがあります。今回のツアーは「SINGING!」でいく、という決め手の部分も含めて。

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