宮野真守「THE ENTERTAINMENT」インタビュー|5年ぶりのフルアルバムに乗せたエンタテインメントの未来への希望

宮野真守が約5年ぶりとなるオリジナルアルバム「THE ENTERTAINMENT」をリリースした。

本作は、宮野の17thシングル「アンコール」から今年8月にリリースされたデジタルシングル「EVERLASTING / ジャーニー」までに発表された楽曲、そして彼と長年タッグを組んできたstyによる表題曲「THE ENTERTAINMENT」や、森雪之丞が作詞、岡崎司が作曲を手がけた「行こう!」をはじめとした4つの新録曲で構成されている。

音楽ナタリーではアルバム発売を控えた宮野にインタビュー。約4年半ぶり、10回目となる今回のインタビューでは、アーティスト活動・声優業、俳優業などさまざまな側面でコロナ禍に直面した宮野が再確認した「エンタテインメント」への愛情と情熱がたっぷりと語られた。

取材 / 臼杵成晃文 / 獅々堀智世撮影 / 映美

「必要とされなくなる怖さ」が原動力

──「THE ENTERTAINMENT」は5年ぶりのフルアルバムですが、5年前と言えば、ちょうどNHKの「おげんさんといっしょ」が始まったタイミングで。近年は「半沢直樹」などドラマ出演も続いていますし、お茶の間ですっかりお馴染みの存在になりましたよね。

確かに! 「おげんさん」で僕のことを知ってくれた人は多いですね。

宮野真守

──声優としての声のみならず顔も知られる存在になったことは宮野さんにとって大きな変化ではないかと思うのですが、ご自身でも変化を感じますか?

今まで自分がやってきたことやポリシー自体は何も変わっていないので、違和感はないですね。「求められることがありがたい」「求められたものに応えたい」、僕はそう思ってずっと何事にも取り組んできたんです。そもそも18歳のときに声優としてのお仕事をいただいたこと自体、当時の僕にとっては予想外のことで。声優という仕事も、オーディションの話をいただいたことをきっかけに広がった世界でした。だから何かやり方が大きく変わったわけではないけど、求められる幅が広くなってきたというのはあるかもしれません。自分の活動の幅が広がるにつれて、いろんな人から「これやってみませんか?」と声をかけていただく機会が増えたというか。

──求められているものに応えているうちに、仕事の幅がどんどん広がっていったんですね。

「いつ必要とされなくなるかわからない」という“怖さ”のほうが大きな原動力になっているかもしれません。僕、うまくいかなかった時間のほうが長かったんです。7歳からこの世界にいるので、うまくいかないな、苦しいな、と感じるようになったタイミングが人より早かった。だからこそ、人一倍「求められる喜び」を感じて、それに応えたいと思うのかもしれません。

──求められるものに答えるパフォーマンス、と言うには「おげんさん」はサービス精神過剰ですよね(笑)。

そうですね(笑)。星野(源)さんが求めてくださることにいかに応えていけるか、という気持ちで取り組んでいます。星野さんは、ご自身が病気で大変だったときに僕のライブ映像を観てくださったこともあるそうで……そこから僕自身の活動に興味を持ってくれて、ご自身の企画や「おげんさん」でご一緒することになったんです。「おげんさん」は、音楽をすごく大切にされている星野さんならではの番組。演者としてのカラーが強い僕にとっては知らないこともたくさんあって、音楽的にも刺激を受けています。

エンタメは不要不急なんかじゃなかった

──声優やアーティストとしての活動、さらにはドラマ、舞台とさまざまなジャンルで活躍されていることは、言い換えると、宮野さんほど広範囲で昨今のコロナ禍の影響を受けた人はそうそういないのではないかと思うんです。誰よりも「コロナ禍とエンタメ」について考える時間が多かったんじゃないかと。

コロナ禍の初期は「エンタメがピンチだ」と思いました。当時は「エンタメ=不要不急」と言われていましたよね。僕らはエンタメを生業にしていますが、命との天秤にかけると「不要不急」という言葉を強く否定できない自分もいて……。どうしたらいいのかわからず、1カ月くらい立ち止まってしまう期間もありました。そんな中、いち早く行動に移した星野さんの「うちで踊ろう」を観たときに、塞ぎこまずに前に進められることもあるんだなとハッとさせられて。あとは、やはり不要不急と言われてエンタメが一斉に止まったことによって、その反動でみんなが「エンタメは不要じゃないんだ」ってことにどんどん気が付いた。結果、エンタメがどんどん求められるようになった気がします。「不要」と言われる中での“エンタメの届け方”を模索するべく、声優、音楽、舞台、テレビなど、さまざまな仕事の場でスタッフと相談し、そのときにできる最善の方法を探りながら前に進んで行きました。なので、完全に立ち止まっていたと言えるのは最初の1カ月だけでしたね。それまでに、僕がいろんなジャンルのお仕事をやらせていただいたからこそ、僕自身のエンタメは止まらなかったんです。

宮野真守

──こちらの印象では、さまざまなジャンルで活躍される分、苦労することがより多かったのかなと思っていたんですが、むしろ「こういうやり方ができる」と、突破口を模索し続けたことによって充実されていたということでしょうか。

充実というよりも、「止まらずにいられた」という表現が正しいかもしれません。もちろん不自由なこともありましたし、ステージの中止を余儀なくされるなど悔しい思いもしました。それでも、走り続けられたことで塞ぎ込まずにいられたんです。過去の自分の経験に助けられたなって思います。

──今作にも収録されているシングル曲「ZERO to INFINITY」は2020年後半に発表された楽曲で、タイアップ曲ではありますが、あの時点での宮野さんが考えた「エンタメとは何か」がしっかり込められた曲だなという印象を受けました。

みんなに勇気と希望を与える「ウルトラマン」というコンテンツに合わせて、作品との素晴らしい出会いをきっかけに自分の気持ちも込めて発信することができました。コロナ禍以前から「ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀」の制作は決まっていて、コロナ禍に突入したのは主題歌の打ち合わせをしている時期だったんです。そうした背景もあって主題歌の方向性を変えることになり、結果的に今感じる思いや輝く未来への希望を込める歌に仕上がりました。自分自身で作詞できたのも大きかったですし、制作中は「ウルトラマン」にも力をもらっていましたね。