宮野真守インタビュー|支え合い、ともに歌おう──4年ぶりの“声”に気付かされたこと (2/2)

「マモライ」とTikTok

──ツアー中にはブログに舞台裏の様子などをつづられていましたよね。宮野さんのライブを指してファンの方が使っている「マモライ」という言葉、宮野さん自身も使ってるのがなんかいいなと(笑)。

ラジオ番組とかで届くメールにも「マモライ」って書いてあるから、僕もそれをわざわざ訂正しないし、そのまま読むんですよ(笑)。今回それを自分でもけっこう使ったのは、ファンの立場で考えたときに盛り上がれるワードが欲しかったから。「マモライが復活!」と言ったほうがわかりやすいじゃないですか。

──確かに(笑)。

自分で言っちゃうんだ?っていう。それをみんなも楽しんでくれたら僕もうれしいし、1回言ってみたらずっと言いたくなっちゃって(笑)。

宮野真守

──そういうフランクな交流でいうと、最近はTikTokも活用されていますよね。ツアーをともに回るTEAM MAMOの皆さんも出てきて一緒に踊ったり、宮野さんではないですが、雅マモルさんも大活躍で。宮野さんのキャラクターとTikTokの相性が実はよかったんだなと思いました。

TikTokはよくわかっていなかったんですけど、世の中の流れを見たときに、そういうものには絶対乗っかったほうがいいから何かできないの?とスタッフに提案しました。宣伝チームは若い考え方を持っているから、うまくいろんな層に向けて宣伝できるように考えましょうと。やり始めたら続けていかなくちゃいけないから、大変だろうなとは思ってたんですよ。ほかの人と比べたらそれほど投稿の頻度は高くないと思いますけど、それでも観てくれる人はたくさんいるし、気付いたらプロモーションとまったく関係ない動画を撮っていたりして。まあ観てもらうことが大事だからと流行りのものにも乗っかってやってみたら、ニュース番組で取り上げられちゃったりとか(笑)。「こんな著名人も踊っています」みたいな。

──(笑)。

そういうことが起こるんだなあって。なんでもかんでもやる必要はないと思うけど、時代に置いてかれないようにすることは大事だと思いますね。

──ライブのセットリストをサブスクのプレイリストで公開したり、今の時代ならではのことに宮野さんのチームは積極的ですよね。

そのへんは正直、コロナがあったからこそ一歩踏み出せた部分が大きいのかもしれない。もともとそこにあまり重きを置いていなかったけど、デジタルで発信せざるを得ない時期があったじゃないですか。

──そうですね。キングレコードなど老舗のレコードレーベルにおけるサブスク配信や動画配信への取り組みは、この3年ちょっとで大きく変化したように思います。

それによって思いもよらなかった広がり方がやはりあって。この時代、デジタル方面に重きを置くことは大事なんだなと実感しましたね。

ナタリー5ジャンルを制覇する“五兎を追う男”

──アーティスト活動15周年の動きもありながら、宮野さんの仕事の幅は今年ますます広がりましたよね。今までも音楽、コミック、映画、ステージとナタリーの各ジャンルで登場する機会がありましたが、今年は日本テレビ「ぐるナイ」の人気企画「グルメチキンレース ゴチになります!」のレギュラーメンバーになったことで、ついにお笑いナタリーにも宮野さんの出演情報がコンスタントに載るようになりました(参照:上沼恵美子、現金200万円を持って「ゴチ」初参戦)。ナタリー5ジャンル全部にちょくちょく情報が出ているのはおそらく宮野さんくらいです。

五兎を追ってるんでね(笑)。

──(笑)。各方面でいろんなことがあったと思いますが、2023年を総括すると、どんな1年でしたか?

それこそ今年はバラエティのレギュラーも経験させていただきましたし、ほかにも朝ドラがあったり(参照:朝ドラ「らんまん」にディーン・フジオカ、宮野真守、宇崎竜童が出演)、月9があったり(参照:北川景子、山田裕貴ら出演の月9「女神の教室」放送スタート日が決定)……まさか自分がマリオになるなんて想像もしていなかったですし(参照:ピーチ姫が新たな一面見せる「ザ・スーパーマリオブラザーズ」予告、マリオは宮野真守)。いろんなことがありましたけど、実はそのうちのほとんどは去年のうちからお話をいただいていたから、今年は頭から「いろいろやる1年になるぞ」と気合いを入れていたんです。

──なるほど。それぞれの情報が出るタイミングはバラけているから、ファンの皆さんはその都度「えっ、こんなこともやるの?」と驚いていたかもしれませんけど。

今年はアーティスト活動の15周年でもあるし、僕としては「いろんなことが控えてるんだから覚悟しろよ」と腹をくくって挑んだ1年でした。

宮野真守

──全部乗りこなせました?

乗りこなせたかどうかは、皆さんの評価が決めてくれるんだと思います。でも、スタッフさんなど関係する方々が、僕の表現やパフォーマンスを面白がってくれているという実感はあって。やっぱり覚悟ができていたから、全部に全力投球ができたんですよ。すべて全力で挑めたことが評価につながったのかもしれない。ちょっとかじる程度じゃなくて、全力でドラマ、全力でバラエティ、全力で声の仕事、全力で音楽……「マリオ」は興行収入でNo.1の評価をいただきましたし、朝ドラでも評判を受けて予定になかった後半の出演オファーをいただいたんです。「ぐるナイ」の影響力はやっぱハンパないなと感じます。バラエティ要員として全力で取り組めているからこそ、ナインティナインさんが新しく始めた音楽番組にアーティストとしてゲスト出演したときも、僕らの関係性がちゃんと出せた。

──フジテレビの「週刊ナイナイミュージック」ですね(参照:今夜「週刊ナイナイミュージック」に幾田りら、上白石萌歌、宮野真守)。

はい。そうやって全力で挑めたからこその充実感、達成感がたくさん味わえたので、乗りこなせたかどうかはわかりませんが、ちゃんと評価につなげることができているんじゃないかなと思います。

──しかし全力を傾ける方向が多方面だと、単純に疲れませんか?

僕の場合、ずーっとやってきたことではあるから、そこに大きな違いはないんですよ。

──確かに。宮野さんは元来多方面で活動を続けてきた人ですし、その規模が大きく広がっているだけとも言えます。

ライブでこんなにコントをやる人もそんないないでしょ?

──そうですね(笑)。

ずっと「これが好き」「あれも好き」を積み重ねてきた結果で。今年はすごくたくさんチャレンジしているように見えるかもしれないけど、全部に種があったから、特別大変だったという感覚はないんです。

──そんな中でも新しい発見はありましたか? 自分にこんなところがあったんだ、という自己発見は。

同じ演技をするにしてもドラマと声優ではテクニカルな面が違うから、「ドラマでこんな表現ができるようになったんだな」とか、発見は日々ありますね。経験値はどんどん増えて、表現者としてのアップデートはできているんじゃないかなと思います。

宮野真守

コロナ禍で予定が変わった40代の入り口、15周年で巡ってきた新たな挑戦

──来年の6月にはオーケストラを従えてのシンフォニックコンサート「billboard classics 宮野真守 Premium Symphonic Concert 2024」が決定しています。このコンサートがアニバーサリーイヤーの締めくくり的な位置付けになるのかなと思いますが。

そうなんですよ。アーティストとしてもまた新たなステージを経験できるので、すごく楽しみです。

──さてその先でどんな音楽を届けてくれるのかな?というのがリスナーとして楽しみなところです。何か考えていることはありますか?

4年前に初めてのアジアツアーをやって(2019年5~9月に開催された「MAMORU MIYANO ASIA LIVE TOUR 2019 ~BLAZING!~」。国内に加えてアジア公演も行った)、さあその次というタイミングでコロナ禍になったんですよ。あのときは30代後半で、自分が40代を迎えるうえで迎えるべき方向性を探りながら「ちゃんと大人になっていきたいな」と思っていた。そんな矢先にコロナ禍になってしまい、3年くらいがすっ飛んで40代になっちゃったんですよ(笑)。歩みは止めなかったものの……何も試せないまま時間が過ぎてしまったという無念さはあって。

──年齢の節目にコロナ禍を迎えたのは手痛いですね……。

ええ。次のステージに行かなきゃいけない、と思っていたところで足踏みをすることになって。だって、その前にやるはずだったド派手なドーム公演ができなかったわけですから。

──ああ、そうでした。2020年6月に予定されていた「宮野真守スペシャルライブ2020 in メットライフドーム」は中止になってしまいました(参照:宮野真守、2020年6月に男性声優アーティスト初のドーム公演開催)。

それは我々チームとしてはけっこう大きな痛手だったんですよ。あのとき考えていた計画が一旦白紙になってしまった。それもあって……このタイミングで声援ありのライブが戻ってはきたものの、考え方を1回変えなきゃなと。40代ならではの大人らしい表現がしたいという当初の目標を捨てて、「老体に鞭打つ」と決めたんです(笑)。

──(笑)。

これはホントに。だから今までのツアーの中でも一番踊ったかもしれない。それはもう年齢どうのこうのじゃなく、ここで面白いものを見せなかったら意味ないだろ!という。ちょっと無理するくらいの気持ちで、盛り盛りの演出を入れたんですよ。で、ホントは40代の大人としての魅力や方向性を探っていきたかったんだけど……と思っていたところにシンフォニックコンサートの機会が巡ってきて。結果、ここで新たな挑戦ができるという流れができたので、自分の中でも大きな意味を持つステージになりそうだなと思っています。「SINGING!」のツアーファイナルでシンフォニックの発表をしたんですけど、お客さんの反応はちょっと意外でした。僕としては「そうくるか」みたいなどよめきが起きると思っていたんですよ。でも発表をしたらワーッと喜びの声が上がって。お客さんも新しいスタイルへの挑戦を楽しみにしてくれていることがわかって、自分自身でもより楽しみになりましたね。

──楽曲の面でも、この先やってみたい新たな方向性のアイデアがある?

いろいろ考えてはいますけど、年が明けると僕はミュージカルの本番に入っちゃうので(参照:ミュージカルジョジョ始動!宮野真守が太鼓判「キャストみんなジョジョ顔」)、実際に着手するのはミュージカルが終わったあとになりそうです。そうそう、今回のシングルのカップリングに収録した「WANNA LOVE」は、ツアーで歌った15周年の曲「ICHIGO~甘くて Chu♡ぱいぜ~」で初めてご一緒した馬瀬みさきさんに作詞と作編曲をお願いしたんですけど、そういった新たな出会いやつながりも増やしていきたいなと思っています。

宮野真守

ライブ情報

billboard classics 宮野真守 Premium Symphonic Concert 2024

  • 2024年6月8日(土)東京都 東京ガーデンシアター
  • 2024年6月15日(土)京都府 京都コンサートホール
  • 2024年6月16日(日)京都府 京都コンサートホール

プロフィール

宮野真守(ミヤノマモル)

1983年6月8日、埼玉県生まれの声優、俳優、歌手。7歳から劇団ひまわりに所属し、子役として活動を始める。声優としてのデビューは2001年放送のNHK海外ドラマ「私はケイトリン」グリフェン役。以降はアニメ、ゲーム、洋画吹替など幅広く活躍し、2003年にはミュージカル「『テニスの王子様』 Remarkable 1st Match 不動峰」でも高い評価を集めた。ミュージカルや出演アニメのキャラクターソングで歌手としての実力も発揮し、2008年にシングル「Discovery」でアーティストデビュー。ライブ活動も積極的に行っており、2013年10月には初の東京・日本武道館公演を成功に収めた。2019年には初のアジアツアーを開催。2022年11月には通算7枚目のオリジナルアルバム「THE ENTERTAINMENT」を発表し、同年11月から12月にかけてアリーナツアー「MAMORU MIYANO ARENA LIVE TOUR 2022 ~ENTERTAINING!~」を行った。アーティストデビュー15周年を迎えた2023年は、9月から10月にかけて全国4都市8公演のツアー「MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2023 ~SINGING!~」を開催。12月には同ツアーのために制作された楽曲「Sing a song together」を通算24枚目のCDシングルとしてリリースした。2024年6月には東京・東京ガーデンシアター、京都・京都コンサートホールの2会場でオーケストラを従えたコンサート「billboard classics 宮野真守 Premium Symphonic Concert 2024」を行う。