宮野真守がシングル「Discovery」でアーティストデビューを果たして10年。彼は声優、俳優として第一線で活躍しながらも精力的に音楽活動を重ね、16枚のシングルと6枚のオリジナルアルバムを世に送り出してきた。エンタテインメント性の高いライブパフォーマンスも着実に評価を集め、その規模も年々拡大の一途をたどっている。
デビュー10周年を祝したベストアルバム「MAMORU MIYANO presents M&M THE BEST」は、全シングルの表題曲を網羅した「SINGLES BEST」と、ファン投票によって選ばれた14曲に新曲2曲を加えた「SONGS BEST」の2枚組。初回限定盤にはさらに、歴代ライブ映像から同じくファン投票により選ばれたパフォーマンスをまとめたBlu-ray / DVD「LIVE BEST」が付属する。アーティスト宮野真守の魅力がファン目線を通して凝縮された1作だ。
多忙を極める中で彼を突き動かす、音楽へのあふれる情熱の源はなんなのか。音楽ナタリー9回目の登場となる今回のインタビューは、彼がこのベストアルバムに詰め込んだ音楽愛、そしてファンや仲間たちへの愛情が伝わる内容となった。
取材・文 / 臼杵成晃
ファンと一緒に作ったアーティスト宮野真守の10年
──アーティスト活動10周年というのは改めてどんなお気持ちですか?
あっという間でしたね。僕は先に役者として活動していたので、ここからアーティストとして何ができるだろうと、そのときそのとき一生懸命考えて思い切りやっていたら……いつのまにか10年経っていました(笑)。それは単純にびっくりですけど、こうしてベストアルバムを作らせていただいたことで、自分の音楽を振り返るいいきっかけになりました。多少なりとも成長も感じられたので、しっかり10年歩んで来れたんだなと。
──確かに、過去の活動履歴をデータで並べてみると、役者としての活動と並行してこれだけコンスタントにリリースとライブを重ねていれば、それはあっという間に感じるだろうなあと思います。
そうなんですよ。コンスタントに作品をリリースして、毎年ちゃんとライブをやらせていただいていたので、本当にそのときそのときで全力を注ぎ込んできたらここまで来ていた、という印象です。
──10年前と言うと音楽ナタリーもまだオープンして2年目ですけど、その頃はまだ声優アーティストやアニメソングを厚く取り上げていなかったんですよね。シーンがどんどん活性化して音楽の幅が広がってきている熱量を感じて、「これはもっと着目しておいたほうがいいんじゃないか」と話していた覚えがあります。
確かにそうかもしれないですね。音楽性にこだわりを持った方々が周りにも多くいて、刺激を受け合いながら進んできたところもあると思います。
──そんな10年の間に、宮野さんはシングルを16枚、オリジナルアルバムを6枚発表してきました。ベストアルバムはすべてのシングル表題曲に加え、ファン投票による楽曲、さらにファン投票によるライブ映像という盛りだくさんの内容で。
これはプロデューサーからの提案なんですが、すごくうれしかったですね。ファンの皆さんと一緒に作っていくことも楽しみでしたし……それは僕が10年間やってきた音楽活動の特徴でもあると思うんです。皆さんと一緒に作っていく、楽しんでいくというやり方でライブをやって、そこで感じた思いが次の楽曲につながっていったので。アルバムを作る側にも参加してもらえるリクエストという方法は、自分らしくていいなと思いました。
──DISC 1がシングル表題曲を時系列で並べた「SINGLES BEST」、DISC 2がファン投票で選ばれた14曲に新曲を加えた「SONGS BEST」となっています。DISC 2の曲順は?
リクエストいただいた中から投票の多かった14曲を入れたのですが、こちらも曲順は時系列で並べているんです。曲に優劣が付いているようには見せたくなくて。ただ、圧倒的1位はバラードの「MOONLIGHT」でした。上位にはバラード曲が多く入っていて、僕がバラードで伝えたいことや、大事にしている思いがみんなに伝わっているんだなあと確認させてもらえる結果になりました。一方で、ライブパフォーマンスに投票してもらったDISC 3の「LIVE BEST」は、僕のエンタメ性、ダンスパフォーマンスも支持されているんだなとわかる投票結果だったんですよ。こちらは「Magic」が圧倒的1位でした。
──ベスト盤には「初めて聴くのに最適な1枚」という側面もありますよね。初めの一歩としてシングルのまとまったベスト盤は最適な1つの手段ですけど、あとは「コアなファンにオススメを教えてもらう」という手段もあって。このベストはそのどっちも入っているという。
そうですよね。まさに宮野真守の入門書と言える作品になったかなと思います。
瑞々しい結晶
──DISC 1「SINGLES BEST」の1曲目、1stシングル「Discovery」はまさにちょうど10年前、2008年6月のリリースです。デビューした頃の気持ちってまだ覚えていますか?
「Discovery」はありがたいことに、デビューのタイミングからゲームのタイアップをいただいたんです。最初からタイアップ曲を作るというお仕事をさせていただいたことは、すごくクリエイティブで刺激的でした。作品に寄り添いながらも、宮野真守らしさを生かした打ち出し方をプロデューサーとじっくり話し合いながら見つけていく、ということをデビュー作で体験できたのはとても幸運でした。僕にとっては、Jin Nakamuraさんに出会えたことも大きかったですね。
──Jin Nakamuraさんは宮野さんの10年を語るうえで重要なキーパーソンの1人ですね。
「Discovery」では編曲を担当してくださったのですが、叙情的な部分をすごく大事にしながらも、疾走感のあるポップチューンに仕上げていくという……デビュー曲から攻めた表現をしていたなあと思います。Jinさんはその後、僕の音楽活動に欠かせない楽曲たちを何曲も書いてくれましたけど、曲だけじゃなく心の面でもいろんなきっかけをくださいました。それはJinさんだけじゃなく、これまで関わってくださった方々みんなそうで。しかもちゃんと一歩一歩、僕の成長にあわせて一緒に進んでくれていたんだなあと改めて感じますね。
──恵まれた環境ですよね。
デビュー当初から、知識が足りないながらもいろんな意見を言わせてもらっていたんです。楽曲で振り返ると、ノウハウがどんどん染み付いて、積み上がってきたんだなとよくわかる。「この曲はこういう意見を言ったなあ」とか「このライブを体験して、こういう曲がやりたいと思ったからこう伝えたんだなあ」とか、どんどん積み上がってきているんですよ。
──過去のレコーディング音源を聴いて「今ならもっとうまく歌えるのに」「まだ青かったな」と感じるところもありますか? 今の自分で録り直してみたいと考えるようなことはない?
もちろん、こういう歌い方ができたな……とか思うこともあるのですが、歌い直したいとは、僕はあまり思わないんです。これはお芝居も一緒で、過去のアニメ作品を演じ直したいとか思わないんですよね。むしろ、当時の瑞々しさには一生勝てないなという気持ちが強くて。過去の楽曲たちにはその瑞々しい結晶が残っているので、若いなあと感じるけれどそれが素晴らしいなと。自分で言うのもなんですけれど(笑)。
──なるほど。スキルを身に付けたからこそ出せなくなるものもある。
あるある。全然ありますね。喉も体も消耗品だし、少しずつ変化はしていくので、そのときどきの自分にできることを全力でやってきた証拠が作品には残っていると思うんです。録り直したくないと思ってしまうのはそこなんでしょうね。
──「SINGLES BEST」の時系列に沿った曲順で眺めてみると、クレジットにも歴史を感じますね。自作詞の表題曲は6曲ありますが、最初は2009年の4作目「REFRAIN」です。
自作詞が増えてきたことは自分の中でも大きな出来事で。「REFRAIN」では生みの苦しみがありましたけど、これは自分からやりたいと言い出したことなんです。その衝動は自分でもびっくりしました。プレイヤーとしての誇りは持っていたけれど、クリエイティブなことへの憧れはあって。Jinさんの曲だからこそ歌詞を書きたいと思い、何度もリテイクしてリテイクして……やっとたどり着いた歌詞にはやはり尊いものがあったし、ここで一歩踏み出したからこそ「僕はこう歌いたい、こういう思いを伝えたい」というポリシーが芽生えたんだと思うんです。
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エンタメでみんなのためにできること
- 宮野真守「MAMORU MIYANO presents M&M THE BEST」
- 2018年6月8日発売 / KING RECORDS
-
初回限定Blu-ray盤
[CD2枚組+Blu-ray]
4644円 / KICS-93711~2 -
初回限定DVD盤
[CD2枚組+DVD]
4644円 / KICS-93713~4 -
通常盤 [CD2枚組]
3564円 / KICS-3711~2
- DISC 1【SINGLES BEST】
-
- Discovery
- …君へ
- J☆S
- REFRAIN
- ヒカリ、ヒカル
- オルフェ
- DREAM FIGHTER
- ULTRA FLY
- カノン
- NEW ORDER
- BREAK IT!
- シャイン
- HOW CLOSE YOU ARE
- SHOUT!
- テンペスト
- The Birth
- DISC 2【SONGS BEST】
-
- Kiss×Kiss
- Not Alone
- MOONLIGHT
- Last Around
- SUPER★SOUL
- Beautiful Life
- GOLDEN NIGHT
- THANK YOU
- FOREVER LULLABY
- Identity
- passage,
- Gravity
- EVER LOVE
- POWER OF LOVE
- そっと溶けてゆくように
- EXCITING!
- DISC 3(初回限定盤Blu-ray / DVD)【LIVE BEST 】
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- Prologue -Rush and Fly-(LIVE TOUR 2015 ~AMAZING!~)
- Magic(LIVE TOUR 2015 ~AMAZING!~)
- FRONTIER(LIVE TOUR 2015-16 ~GENERATING!~)
- シャイン -Prince Mix-(LIVE TOUR 2017 ~LOVING!~)
- NEW ORDER(LIVE TOUR 2015 ~AMAZING!~)
- Theme of AMAZING!(LIVE TOUR 2015 ~AMAZING!~)
- 愛の詩~Ulyssesの宴~(SPECIAL LIVE 2013 ~TRAVELING!~)
- Garnet(LIVE TOUR 2014 ~WAKENING!~)
- 恋はホップステップジャンプ(SPECIAL LIVE 2012 ~FIGHTING!~)
- TRANSFORM(LIVE TOUR 2015-16 ~GENERATING!~)
- Happy Happy Birthday(LIVE TOUR 2014 ~WAKENING!~)
- IT'S THE TIME(LIVE TOUR 2012-13 ~BEGINNING!~)
- STY Non Stop Remix(LIVE TOUR 2016 ~MIXING!~)
- Crazy Wonder Night(LIVE TOUR 2016 ~MIXING!~)
- POWER OF LOVE(LIVE TOUR 2017 ~LOVING!~)
- GOLDEN NIGHT(LIVE TOUR 2016 ~MIXING!~)
- そっと溶けてゆくように(Music Video)
- EXCITING!(Music Video)
ツアー情報
- MAMORU MIYANO ARENA LIVE TOUR 2018 ~EXCITING!~ supported by JOYSOUND
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- 2018年6月2日(土)
兵庫県 ワールド記念ホール - 2018年6月3日(日)
兵庫県 ワールド記念ホール - 2018年6月10日(日)
埼玉県 さいたまスーパーアリーナ - 2018年6月16日(土)
愛知県 日本ガイシホール - 2018年6月17日(日)
愛知県 日本ガイシホール
- 2018年6月2日(土)
- 宮野真守(ミヤノマモル)
- 1983年6月8日、埼玉県生まれの声優、俳優、歌手。7歳から劇団ひまわりに所属し、子役として活動を始める。声優としてのデビューは2001年放送のNHK海外ドラマ「私はケイトリン」グリフェン役。以降はアニメ、ゲーム、洋画吹替など幅広く活躍し、2003年にはミュージカル「『テニスの王子様』 Remarkable 1st Match 不動峰」でも高い評価を集めた。ミュージカルや出演アニメのキャラクターソングで歌手としての実力も発揮し、2008年にシングル「Discovery」でアーティストデビュー。2009年3月には1stアルバム「BREAK」を発表した。ライブ活動も積極的に行っており、2013年10月には初の日本武道館公演「MAMORU MIYANO SPECIAL LIVE 2013 ~TRAVELING!~」を大成功に収め、2015年2~3月に開催された全国ツアー「MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2015 ~AMAZING!~」では最終公演として日本武道館2DAYSを行った。デビュー10周年を迎えた2018年6月には初のベストアルバム「MAMORU MIYANO presents M&M THE BEST」を発表し、初のアリーナツアー「MAMORU MIYANO ARENA LIVE TOUR 2018 ~EXCITING!~ supported by JOYSOUND」を開催。
2018年6月12日更新