ナタリー PowerPush - 宮野真守

新体制で次のフェーズへ

「生まれてくれてありがとう」

──カップリングの2曲についても聞かせてください。「覚醒エタニティ」は女性向けの恋愛ゲーム「妖かし恋戯曲」の主題歌ですが、こちらは宮野さんのもう1つの軸であるロック路線の第2章、発展系というか。

そうですね。それをまた小山寿さん(作詞・作曲)、高橋浩一郎さん(編曲)という信頼している2人と制作できたのはうれしかったです。やっぱりこの2人が作るサウンドはめちゃめちゃカッコいいので。お2人と作った「ウルトラマン列伝」の主題歌である「DREAM FIGHTER」「ULTRA FLY」では底抜けに気持ちいいロックでしたが、今回は妖艶で美しいサウンドに挑戦しました。

──アルバム「PASSAGE」でも表現されていた和をモチーフにした世界観を、さらに押し進めたような。そして「Happy Happy Birthday」は宮野さん自身の作詞によるバースデーソングで、こちらは「NEW ORDER」とはまた違った、Jin NakamuraさんとCJ VANSTONさんによるおしゃれでさわやかなハウストラックですね。

改めて3曲のクレジットを見ると、本当にすごい布陣だなと思います。恐ろしいシングルだなと(笑)。Jinさんはアルバムで和とR&Bが融合した「Identity」を作ったあと、ありがたいことにデモを何曲かいただいたんです。「CJと一緒に作った曲があるんだ」って。その中の1曲がこの「Happy Happy Birthday」の元になる楽曲だったんです。とてもハッピーな気持ちになれるサウンドだし、僕の琴線を大きく刺激するメロディラインだったので、僕のほうから「この曲でバースデーソングが作りたい」とお話しました。

──なぜバースデーソングを作ろうと?

宮野真守

以前からバースデーソングを作りたいなと思ってはいたのですが、5月から始まるライブツアーに僕の誕生日が含まれているので、バースデーソングがあったら盛り上がるかなと思ったのがきっかけです。バースデーソングって、やっぱり特別なものだと思うんですよね。毎日が誰かの誕生日だし、毎日誰かにとっての特別な曲になったら素敵だなって。この仕事をしていてありがたく思うのが、毎年誕生日になるとファンの皆さんからたくさんの声を届けてもらえるんです。その中に「生まれてくれてありがとう」と言ってくださる方がたくさんいて、こんな幸せな気持ちにしてくれる言葉はないですよね。たくさんの人に自分が生まれたことを感謝してもらえるなんて、この仕事をしていなかったらそういう思いとも出会えなかったのかなと思うと、本当にかけがえのないことだなって。そういう自分にとって大事な言葉や思いを今度は僕から皆さんに歌詞に込めて届けられたらいいなと思ったんです。

──自分が皆さんに伝えたい思いを歌った曲でもあるし、ほかの誰にでもあてはまる曲だと。

はい。この曲を気に入ってくれた人が、大切な誰かのために歌ってくれたりしたら、素敵な連鎖が起こるなあって。そうなったら、とてもうれしいですね。

過去に壊したものの中にも大事なことが詰まっている

──バランスよく次の一歩を提示した1枚になりましたね。

そうですね。話せば話すほど実感します。どこを食べても甘いみたいな(笑)。

──ジャケットもまた……。

NEW ORDERですね(笑)。今までやってない方向性でカッコよく決めるなら、やっぱ合成だなと(笑)。“新体制”をイメージした近未来なビジュアルになりました。PVでは“新体制”というキーワードから、新しい体制を掲げ、旧体制を打ち壊す“反体制”をイメージしています。こちらも今までにない男らしいPVになったと思います。

──具体的に壊したい、捨て去りたい自分の中の“旧体制”を挙げるとしたら?

そうだなあ……。具体的に挙げるとなると難しいですね。自分の中に今まであったイメージを打ち壊して新しいことに挑戦するんですけど、打ち壊したものを捨てるという感覚はあまりなくて……。それはたぶん役者をやってるからというのも大きいのかも知れませんが、過去に壊したものの中にも大事なことが詰まっているんです。これを捨てる気はまったくなくて、新しいものは追い求めていくけど、無駄なものはないんですよね。捨てたいものは……ネットに上がってる変顔写真ぐらいかなあ(笑)。

──あははははは(笑)。

気を付けますってぐらいで。はははは(笑)。

──写真はともかく(笑)、過去の失敗もそれはそれとして自分が歩いてきた道になっているというか。

そうなんです。だから僕はけっこう、過去の失敗を思い返すんです。そこから見えてくるものもあるので。

「現状維持」の難しさ

──2014年、30代に突入した宮野真守として新たに見せたいもの、やりたいことは何かありますか。

2013年という素晴らしい1年を越えたことで、2014年はグンとハードルが上がった実感があるんですよ。このハードルを下げない、ってことが実はすごく重要で。新しい体制を打ち出すと言いながらも、現状を維持することがとても大切な年になると思っています。今まで見てくれていた人たちに対して、クオリティを下げないで見せていく。そこに対してのトレーニングはしていきたいと思うんですけど、かと言って現状維持になっちゃう年になってしまったら、つまらないですよね。

──確かに、このハードルを下げないって実は生半可なことではないですよね。

まずは目の前に迫っているライブツアーが勝負どころになると思うので、今はそれを考えています。

──相当な努力を積んで現状を下げないようにがんばっても、単に「現状維持」としか見られないっていう。

だからこそ、2014年の一歩目をこの「NEW ORDER」でスタートさせられることは、自分の中でもすごく大きくて。チャレンジの詰まったこのシングルで1年を始められるのは、自分にとって大きな意味があります。

──でも、きっとこれでまたハードルは少し上がっちゃいますけどね(笑)。上がり続けて、さらに先を提示しなきゃいけないという、つくづく因果な職業だと。今度のツアーも、武道館ワンマンを華麗に決めた男が次に見せるツアーですからね(笑)。

ですよねえ(笑)。やりたいプランはいくつか浮かんでいるので、それをみんなで話し合ってどこまで実現できるか。5年間で自分なりのライブのスタイルもできたと思いますので、そこをしっかりと固めつつ、新しい要素をお見せできるようにしたいです。

宮野真守(みやのまもる)

1983年6月8日、埼玉県生まれの声優、俳優、歌手。7歳から劇団ひまわりに所属し、子役として活動を始める。声優としてのデビューは2001年放送のNHK海外ドラマ「私はケイトリン」グリフェン役。以降はアニメ、ゲーム、洋画吹替など幅広く活躍し、2003年にはミュージカル「『テニスの王子様』 Remarkable 1st Match 不動峰」でも高い評価を集めた。ミュージカルや出演アニメのキャラクターソングで歌手としての実力も発揮し、2008年にシングル「Discovery」でメジャーデビュー。2009年3月には1stアルバム「BREAK」を発表した。ライブ活動も積極的に行っており、2013年10月には初の日本武道館公演「MAMORU MIYANO SPECIAL LIVE 2013 ~TRAVELING!~」を大成功に収めた。2014年2月に通算10枚目となるニューシングル「NEW ORDER」をリリース。