millennium parade|時代を牽引する表現者たちの矜持

常田大希×佐々木集×山田遼志 鼎談

今の時代でも起こっている対立構造が根本にある

──「Philip」のMVは、常田さんと佐々木さんが所属するPERIMETRONがクリエイティブディレクションを担当し、山田さんがディレクション / アニメーションを手がけられています。今回は皆さんに「Philip」のMVがどのように作られたのかをお話しいただければと思っています。今作は、どんな着想から生まれたものだったんですか。

山田遼志

山田遼志 初めは昭和時代の映画を観たことからなんですけど、「男は昔狼だったのが犬になってしまった。そして今ではロボットになってしまった」みたいなフレーズがその映画に出てきたんですよ。それが着想のもとで。平成が令和になっても何も変わらず、むしろロボット的な人が増えてきている世の中の状況……それは犬のキャラクターに置き換えても一緒なんじゃない?みたいな。人間社会に置き換えられることは、犬にとっても同じことだと捉えて描いた。旧態依然とした制度とか構造にがんじがらめになってるというか、制度の犬になって、思考すら取り上げられているというか。

佐々木集 今の時代において、思考停止した状態で生活が進んでいく部分を「ロボット化だな」と感じますね。感情を出さないほうが社会が成り立っていくような、全体主義的な社会に対する違和感がある。で、そこに遼志さんから以前もらっていた企画がハマるんじゃないかと思ってつながっていった。

山田 「Philip」以前から持っていた企画と、ハードボイルドな「Philip」が合いそうだと。自分のアイディアに佐々木くんがメッセージを重ねてくれて、常田くんがうまいことハメてくれたという感じでした。

佐々木 このタイミングだから声をかけたのはもちろんなんですけど、それ以前に遼志さんから作品の企画をもらって。その中にドーベルマンをメインキャラとして据えたものがあったんですけど、それがかなり印象に残ってたんです。「Philip」の元になった「Stem」にも自分はグッときてて。しかも「Stem」は俺と大希のつながりを作ったきっかけの曲でもあったので、この座組み、世界観で1本作ったらハマるんじゃないかなと思ったんですよね。

──常田さん自身も「Philip」を作るときから山田さんと一緒にやるイメージがあったんですか?

常田 うん、以前から「こういう企画がある」「こういう絵がある」っていうのを見せてくれてたので。ハマりそうだなという感覚はあった。それに遼志さんとは以前から何回かやっていて、タイミングを見て気合いが入ったものをやろうとは話してたんですよ。

山田 最初は、millennium paradeの前のシングル「Fly with me」のMVをやります?みたいな話になってたけど、「攻殻機動隊」のタイアップが決まったからナシになって(笑)。「うわ、マジかよ」ってなった直後に「企画出してください」と言われて。それが形になったのが「Philip」ですね。

──山田さんはもともと、Daiki Tsuneta millennium parade時代のライブでVJを務められていたこともあったそうで。

常田 そうですね。俺にとってずっとキーになる映像作家だったので。でも、遼志さんはまったくマスじゃない感覚を持った、いわゆるポップじゃない表現をする人なので……。

山田 はははははは(笑)。

常田 そこで、集みたいなPERIMETRONのクリエイティブディレクターと組めば、遼志さんの世界観の違った一面を見せるんじゃないかなと。そういうバランス感もいいんじゃないかと、この2人を見て思ってました。

──実際、ポップな形で狂っている世の中を映しているようなMVだと感じました。資料にもストーリーと相関図が描かれていますが、社会的な構造について言及するよりも、人から人へ受け継がれる意志を持ってきたエンディングがPERIMETRONらしいし、millennium paradeの表現の核心に通ずるものだなと。

佐々木集

佐々木 実際、遼志さんが書いたドーベルマンの物語を見たときに、自分がSNSとかを見て感じていたことと重なったんですよ。情報1つに右往左往したり、いちいち情報に反応しないといけないと思い込んでる人たちを見るのが、めちゃめちゃ嫌になってた。その中で、一貫して自分の主義思想を通している人は強いと思ってたことと、遼志さんが描いてきた絵がぴったりだと感じて。

山田 今回の物語の構造で言うと、保守派で優生思想のグループと、リベラルで進歩主義的なグループの2つがいて、まさに今の時代でも起こっている対立構造が根本にあるんです。その中で大事なのはどちらがいいのかを選ぶことじゃなくて、議論をして考えていくことなんだということを言いたかったんですよね。さまざまな立場の間で揺れ動く美しさや儚さがコンセプトです。

佐々木 で、保守派として出てくる犬たちは、愛玩犬と呼ばれる犬種をモチーフにしていて。犬も、かわいがられるために進歩してきた犬とか、かわいがられるために改良されていった犬たちが人気ランキングのトップにいるんですよ。その事実をこの作品中では「保守派」として捉えていて。人間にも、何かとの癒着によって生きていくことを主義主張にする人と、もっと野生的 / 本能的であるべきだという「リベラル派」が対峙する世界がある。その間で苦悩するヤツが、MVの主人公であるドーベルマン・Stanなんです。

山田 実際のデータを見ていくと、全世界の犬の7割がパリア犬、つまりインドやギリシャにいる野生の犬なんです。それがちらほらMVに出てきていて。

常田 へえー!

──つまり、表立って見えている構造の外に、実は7割も何にも属さず名前のない生き方をしている犬が存在していると。

佐々木 そうそう。インドとかで繁殖してる、素体みたいな犬。あれをパリアって言うの。一番の貧困層にいる民衆を意味するパーリヤから来てるみたいなんだけど。それを、今回のMVの中でも民衆として捉えているという。

常田 なるほど。めちゃくちゃ面白いね。

佐々木 犬の事前知識は、遼志さんと一緒に2人で死ぬほど本読んでリサーチした(笑)。勉強すればするほど、人間とも重なる部分が見えてきて。それをタイミングと楽曲を照らし合わせながら作っていきましたね。

──PERIMETRONとmillennium paradeは映像と音楽の総合的な表現として密接に関わっていて、2つで1つという部分がかなり多いと思うんですね。2つが合わさることで最終的にどこを刺したいというディスカッションは重ねるんですか?

常田 いや、「Philip」は制作物が超多かったんで、映像は集に任せましたね。もちろん「ここの次にどういう部分を詰める」という話はしてるし、特に今回は遼志さんを立てたいっていうのは共通認識としてあったかな。作品がどういうメッセージを持ってるかというのも、個々のスタンスが滲んだ結果出てくるものだとは思ってたので。

佐々木 大希が曲を作る時点で、社会と向き合って作るのが大前提になっていると俺は思うんですよ。だから、俺は俺で今社会に対して感じていることを加えていかないと、映像と音楽がマッチしていかないんですよね。両方が独立していっちゃうと意味がないというか、そもそも仲間で作って仲間で発信していくことに俺らの強度があると思ってるので。

常田 でも、仕上がった作品を見て、この座組みでもっと深めたいなと思った。素晴らしいものができたけど、これも始まりでしかない感じがする。

山田 ふふふふ(笑)。いや、さすがだなあ。

左から山田遼志、常田大希、佐々木集。

任せられるか任せられないか

──昔からの盟友である常田さんと山田さんは、お互いの表現のどういう部分がハモったんだと思いますか。

常田 遼志さんは、俺の思う意味でのプロフェッショナルさを持ってるんだよね、アーティストとして。だから任せられちゃう。任せられるか任せられないかってのは超大事なんですよ。

──人と人のつながりを信じる常田さんの、信頼の尺度として。

常田 そう。いろんなところでいろんな仕事してるけど、やっぱ上がってくるものとか見てると、なかなか任せられる人っていないんですよ。でも、遼志さんに限っては、お尻を叩きまくるだけでいい(笑)。

常田大希

山田 はははははは(笑)。プレッシャーかけるだけでいいと。

常田 本当に信頼できるから、アーティストとして。ストイックだし、追い込んだ分だけさらに素晴らしいものが上がってくるんで(笑)。

山田 恐れ入ります!(笑) 常田くんは、会ったときから自分には想像できない領域の音楽をやっていて。そのうえで、今自分がやっている音楽はどうやったら社会とつながるのかを考え続けてる。そこがプロのアーティストだなと思っていて……これはいまだに覚えてるんだけど、僕がVJやったときに「この曲のここの裏拍で(映像を)入れましょう」って常田くんが言ったところで、僕が全然タイミング合わなくて。覚えてないでしょ?

常田 ううん、覚えてるよ。

山田 そこで「ああダメだ」と思ったんです。裏拍でスイッチングのボタンを押せないの。

佐々木 そりゃ音楽やってないんだから、仕方ないよ!

山田 いや、でも僕からするとさ、そんな細かいタイミングまでこだわって突き詰めてるんだなと思って。そりゃ当たり前なんだけど、それで自分はまだまだだと思ったの。「なんかいいよね」「感動させればいいよね」みたいな単純さに陥らないところ。自分はやっぱりずっと描いてるとサボりたくなってくるし、面倒くさいし手痛いし。サボりたくなる。そのストイックさが素晴らしいと共に、リスペクトして影響を受けている部分です。誰にも想像できないものを突き詰めて、その上で社会と常に接続するっていうすごさをいつも感じてますね。

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いい仕事した