加藤ミリヤ|飛び立って“うちらの時代”を 今「ディア ロンリーガール」を歌う理由

渋谷という迷宮

──2曲目「迷宮」も理貴さんがトラックメイクを担当しています。これはどんなイメージで制作に着手したんですか?

理貴くんに「今っぽいヤツある?」みたいな感じで、いくつか聴かせてもらった中で「これがいいな」って。いつもだとちょっとドレイクっぽいトラックを選びがちなんです。だから、もうちょっとビート感があって、多少軽やかさがあるモノを選びたいなと思っていて。理貴くんには「意外でした」って言われました。いつも重めのトラックを選ぶから。

──トロピカルフレイバーとレゲエフレイバーが今どきですが、アコギ使いが1990年代のR&Bっぽいですよね。ベイビーフェイスみたいな。

そう! そこがすごく気に入ったんです。R&Bと言うか、TLCを感じるわ、みたいな。

──最近はケレラがお気に入りということでしたが、ほかにはどの辺を聴いているんですか?

ウィロー・スミスの新しいアルバム(「The 1st」)もすごくよかったです。あとはリナ・サワヤマっていう、日本人なんだけど子供の頃からイギリス在住で英語が第一言語っていう人がいて。「RINA」と言うアルバムを出していて、それはメッチャよかったです。ケレラは「LMK」って言う曲が特に衝撃でした。

──リリックはどんなことから着想を得て書いたんですか?

「新約ディアロンリーガール」の子が夜の渋谷を歩いてる、っていう歌を書きたいなと思って。それだけと言えばそれだけで、要は自分の話。確か金曜日だったと思うんですけど、自分が夜、渋谷を歩いていたときに感じたことを書いたんです。

──渋谷とか歩くんですか?

全然歩きますよ。センター街はあまり行かないけど、文化村通りとか道玄坂とか。そのときに思ったことをそのまま書いたんです。

──それで「迷宮」ってことは、迷子にでもなったんですか?(笑)

「うう、迷宮……」と思ったんですよ。「すごい、寂しいの、やだなあ」みたいな。「でも誰といたいんだろ?」みたいな。友達に会いたい気分じゃない、みたいな。自分がややこしくなってるから、いろいろと(笑)。

──自分がややこしいって(笑)。それ、どういうことですか?

なんか面倒なんですよ、人と会うのが。一時期は積極的に人に会ってみよう、っていう時期があったんですけど。

──その前にはケータイに入ってる電話番号を整理した、みたいなことを言ってましたよね。

ありましたね、そういう時期も。なんか周期的にそういう時期が来るみたい(笑)。今はわりと遮断期なんです。だから、夜中に渋谷を歩いてると「お一人様歓迎」って思う。本当書いた通りなんです。

この場所に自分が収まれるのって、いいな

──今回のシングルのジャケット写真やMVは渋谷で撮影していますが、「ディア ロンリーガール」の頃から12年経った渋谷の街は、ミリヤさんの目にどんなふうに映りましたか?

人の種類が増えた気がします。私が一番よく行ってたのは中高生時代で、あの頃はギャルブームでもあったので、渋谷に行けば制服着てる自分と同世代の子たちが「自分たちの場所」みたいな感じでいっぱいいたんですよね。まあ、私にはその子たちしか見えてなかったのかもしれないけど、今回のMVを撮ったときは夜の8時くらいから朝の6時くらいまでずっと渋谷にいたら、もう本当にいろんな人が通るんですよ。

──撮影は渋谷のどの辺りで?

ほとんどセンター街です。あとはスクランブル交差点とか。そうすると援交してるっぽい子もいるし、道ばたで寝てる人もいるし、ウチのスタッフが置き引きに遭っちゃったりして治安の悪さも気になりました。あと、「なんでこの時間に駅じゃない方向にミニスカートの子が1人で歩いていくんだろう?」とか。

加藤ミリヤ

──普通のサラリーマンも多いですしね。

そう。サラリーマンも多い。十代の頃に渋谷に行くと、若い人しかいないと思ってたんだけど、今はそうじゃない。おじさんがいっぱいいるし、全身入れ墨のおばさんも通っていったし、若者だけじゃなくていろんな人がいるなって。

──そんな渋谷は好きですか?

好きです。やっぱり日本のカルチャーが集まってるなと思うので、今回写真を撮ったときはテンションが上がりました。この場所に自分が収まれるのって、いいなって。マルキュー(109)とかセンター街とかはシンボルだからなくならないでほしいなって思うし。そういう意味では、これ以上治安が悪くなっていくと大人が介入してきて大人しくなっちゃうかもしれないから、治安を守りつつ、あの無秩序な感じが残ったらいいなあと思います。

音楽との向き合い方は変わっていく

──ミリヤさんは来年6月で30歳になります。二十代の残り半年、どんなふうに過ごしたいですか?

あと半年ですからね。みんなにねぎらってもらいたい(笑)。「がんばったね」って言われるような日々を過ごしたいです。

──三十代に向けたビジョンはありますか?

音楽との向き合い方は変わっていくと思います。人に歌を書いてみたいっていうのもあるし、あと裏方として動くようなこともしたいなって思います。

──裏方というのは? 

曲作りとかプロデュースじゃなくてもいいんです。マーケティングでもいいし、アイデア出しでもいいし。でも、ビジネスマンになりたいと思ったことはないんです。経営者には絶対向いてないから。ただ自分の感性とか、「それだったら、コレとコレを一緒にやったらよくない?」みたいなアイデアを、今までは自分の中だけでやっていたから、今度は外に向かって使ったら面白いことになるのかなって思ったりしますね。

──歌いたいテーマも変わっていきそうですか?

もうちょっと自分主体になってもいいかなと思います。私が今こうだからこういうことを言ってるだけ、みたいな。極論を言うと(目の前にあった炭酸水のボトルを見て)例えば「炭酸水について歌いたい」と思ったら、それを書けばいい。今までは「これは別に誰も求めてないか」ってやめちゃうことが多かったんです。だけど、炭酸水のことを歌って、「炭酸水の曲だったんだ」でも別にいいじゃん、みたいな。「あなたのことが好き」とか「愛してるのに」みたいなものじゃないことをしてみたいなっていう気持ちはありますね。

──じゃあ1回、ラブソングを封印してみるとか?

それは嫌です。でも、それをはっきり言わなくてもいいのかなって。「好きなら好きって言いたい」みたいな書き方じゃなくてもいいと思うし、もっと自由なテーマで曲を書いていけたらいいなと思ってます。

加藤ミリヤ
「新約ディアロンリーガール feat. ECD」
2017年12月6日発売 / Sony Music Records
加藤ミリヤ「新約ディアロンリーガール feat. ECD」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
1700円 / SRCL-9602~3

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加藤ミリヤ「新約ディアロンリーガール feat. ECD」通常盤

通常盤 [CD]
1300円 / SRCL-9604

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CD収録曲
  1. 新約ディアロンリーガール feat. ECD
  2. 迷宮
  3. 少女時代-DFT remix-
初回限定盤DVD収録内容
  • 「新約ディアロンリーガール feat. ECD」Music Video&Making

加藤ミリヤ Christmas Premium Live -歌の会 2017-

2017年12月11日(月)大阪府 Billboard Live OSAKA
[1st]OPEN 17:30 / START 18:30
[2nd]OPEN 20:30 / START 21:30
2017年12月18日(月)東京都 Billboard Live TOKYO
[1st]OPEN 17:30 / START 18:30
[2nd]OPEN 20:30 / START 21:30
加藤ミリヤ(カトウミリヤ)
加藤ミリヤ
1988年生まれ、愛知県出身のシンガーソングライター。2004年9月にシングル「Never let go / 夜空」でメジャーデビューする。その後「ECDのロンリーガール feat. K DUB SHINE」のアンサーソングである「ディア ロンリーガール」、UA「情熱」をサンプリングした楽曲「ジョウネツ」など話題作を数多く発表。女性からの共感を呼ぶリアルな歌詞が魅力で、同年代女性のカリスマとして支持されている。2009年5月には同い年の清水翔太とコラボシングル「Love Forever」を発表し、人気アーティスト同士の共演は大きな話題を集めた。また同年11月には初の日本武道館ワンマンライブを開催。2011年に初のベスト盤「M BEST」でオリコン週間ランキング初登場1位を記録した。2014年には清水とのコラボツアー「加藤ミリヤ・清水翔太 THE BEST 2MAN TOUR 2014」で全国を回る。翌年には峯田和伸(銀杏BOYZ)とのコラボシングル「ピース オブ ケイク -愛を叫ぼう- feat. 峯田和伸」を発表。2016年には小説家として、自伝的小説「幸福の女神」を刊行する。2017年4月にはアルバム「Utopia」をリリースし、12月に「ディア ロンリーガール」を再構築した「新約ディアロンリーガール feat. ECD」を発表した。