ナタリー PowerPush - 摩天楼オペラ

“劇的ロック”集大成アルバムを全曲解説

M-10「友に捧ぐ鎮魂歌」

──10曲目は最初にも話題に挙がった「友に捧ぐ鎮魂歌」。ここからアルバムはクライマックスに突入します。アルバム特設サイト(参照:摩天楼オペラ 3rd Album『AVALON』【特設サイト】)に掲載されている苑さんのセルフライナーノーツにはこの曲について、「先に逝ってしまった友人への思いを歌ったバラード」と記載されていますが。

 そうですね。本当に先に逝ってしまったプライベートの友達について書いた曲です。

──バラードなんですけど、曲が進むにつれていろんな展開をしていきますよね。その展開の起伏が心情の変化を表しているような印象を受けましたし、特に後半の静かになるパートではハッとさせられました。この曲の歌詞はアレンジがすべて決まってから書いたものなんですか?

 はい、曲の全体像が見えてから書いたものです。曲ができてからAnziに「歌詞はどういうのがいい?」って聞いたら、鎮魂歌っていうイメージをもらって。そこから自分の中で鎮魂歌っていうと、この歌詞の子のことがすぐに浮かんだんです。それにこの曲のドラマ性もその子への思いを歌うにはぴったりで、「これを歌うのは今なんだな」と気付かされて書きました。

──そうだったんですね。

 この歌詞の子は非常に若くして逝ってしまったんですけど、きっと一緒にいたあのとき、あの子は楽しかったんだろうなとか、その一瞬一瞬を思い出しながら歌詞を書いたんですよね。もしかしたらその一瞬一瞬というのが「AVALON」の中で歌われている“安息の地”なのかな、ともちょっと思いながら……うん。

M-11「Orb」

──このドラマチックな展開を持つ「友に捧ぐ鎮魂歌」から11曲目「Orb」へと続く流れは、このアルバムにおける盛り上がりのピークと言えるかと思います。前回お話を聞いたときに、「Orb」という曲ができたことで“劇的ロック”という新たなテーマが見つかった、次のアルバムの方向性が決まったと言っていましたが、この曲がアルバムの終盤に入ったことで「AVALON」という作品で何をやりたかったのか、何を伝えたかったのかがより明確になったように思います。

 なるほど。

──アルバムのこの流れで聴くことで、シングルとして聴いたときとはまた違った力強さ、壮大さが感じられました。

Anzi(G)

Anzi それは僕も思いました。「Orb」が持ってるメロディ感と歌詞の重みが変わったというか。「友に捧ぐ鎮魂歌」と「天国の在る場所」に挟まれることによって、この曲の重みをより感じるようになりました。

──曲順も大きく関係していると思いますが、「Orb」本来が持つ歌詞やメロディの魅力が前後の曲によって、より盛り上げられたというか、そういう相乗効果があるのかもしれませんね。

 それはアルバムという1つの物語の中で、クライマックスに「Orb」がぴったりハマったから、そう感じるのかもしれないですね。

M-12「天国の在る場所」

──いよいよラストナンバー「天国の在る場所」まできました。この曲は“劇的ロック”というテーマを最大限に表したアレンジで、しかも聴いてるといろんな絵が頭の中に浮かんでくる。本当に「AVALON」という作品のラストを飾るにふさわしい1曲だと思いました。

 僕的にもすごくてんこ盛りな1曲です(笑)。僕が今作れる最高のメロディをつぎ込んでますし、なおかつ歌詞もアルバムで歌われてきたことの答えを集約したような内容ですし。

──この曲が最後に来たことですごく前向きな終わり方になりましたよね。ポジティブな気持ちで聴き終えられるというか。

 そうなりましたね。すごく生命力にあふれている曲だと思います。歌詞の内容的にはすごく哲学的なことを歌っているので、もしかしたら伝わらない人もいるかもしれないけど、楽曲自体が持つ温かさは伝わると思うので、そういう面でも聴いた人が元気になってくれたらいいなって思います。

──このアルバムを何度も聴き返して思ったんですが、「天国の在る場所」から再び1曲目「journey to AVALON」に戻ったときに、例えば一度終わった生命が再び生まれ変わるような、そういうイメージも受けました。

 それは僕も感じました。別に「天国の在る場所」が死ぬことではないんですけど、「journey to AVALON」が生命の誕生を思わせるようなメロディなので、一旦終わった物語がまた始まる印象はありますよね。もうひと人生楽しめそうというか。

──そうやって繰り返し聴き込むことで、また各曲に対する印象や歌詞の感じ方も変わっていくのかもしれませんね。

 そうですね。あとは聴いたときの年齢によって、印象や感じ方が変わるんじゃないかな。なのでこのアルバムは長きにわたって、じっくり楽しんでほしいですね。

ニューアルバム「AVALON」 / 2014年9月3日発売 / 2800円 / キングレコード / KICS-3098
初回プレス盤付属外箱ジャケット
通常仕様ジャケット
収録曲
  1. journey to AVALON
  2. 天国の扉
  3. 隣に座る太陽
  4. 輝きは閃光のように
  5. 3時間
  6. Stained Glass
  7. Jolly Rogerに杯を
  8. クロスカウンターを狙え
  9. 蜘蛛の糸
  10. 友に捧ぐ鎮魂歌
  11. Orb
  12. 天国の在る場所
初回限定仕様特典
  • 小林智美氏書き下ろしイラスト外箱付き
  • アナザージャケット1種ランダム封入(全5種/メンバーソロ写真仕様)
  • シングル『隣に座る太陽』との2作連動プレゼントキャンペーン応募券封入
摩天楼オペラ「AVALON TOUR」
  • 2014年9月17日(水)東京都 TSUTAYA O-EAST
  • 2014年9月19日(金)石川県 Kanazawa AZ
  • 2014年9月20日(土)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
  • 2014年9月23日(火・祝)北海道 札幌KRAPS HALL
  • 2014年9月25日(木)青森県 青森Quarter
  • 2014年9月27日(土)岩手県 Club Change WAVE
  • 2014年9月28日(日)宮城県 darwin
  • 2014年9月30日(火)大阪府 BIGCAT
  • 2014年10月2日(木)広島県 ナミキジャンクション
  • 2014年10月4日(土)熊本県 DRUM Be-9 V2
  • 2014年10月5日(日)福岡県 DRUM Be-1
  • 2014年10月7日(火)愛媛県 松山SALONKITTY
  • 2014年10月9日(木)兵庫県 神戸VARIT.
  • 2014年10月11日(土)京都府 磔磔
  • 2014年10月13日(月)愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2014年10月18日(土)東京都 日比谷野外大音楽堂
摩天楼オペラ(マテンロウオペラ)

2007年に結成されたロックバンド。2008年に苑(Vo)、Anzi(G)、燿(B)、悠(Dr)、彩雨(Key)という現在の編成になる。叙情的な歌詞とシンフォニックメタルからの影響が強いサウンドが特徴で、国内のみならず海外でもCDリリースやライブ活動を展開。2010年5月に初のホールワンマンライブを渋谷公会堂(当時・渋谷C.C.Lemonホール)で実施した。同年12月にはミニアルバム「Abyss」でメジャーデビュー。2011年7月にリリースしたメジャー1stシングル「Helios」は、オリコン週間ランキング初登場16位を記録した。同年10月にはメジャー2ndシングル「落とし穴の底はこんな世界」を発表。同月にさいたまスーパーアリーナで行われた「V-ROCK FESTIVAL '11」にも出演し、大きな注目を集めた。2012年3月、メジャー1stフルアルバム「Justice」を発売。同年後半に「喝采と激情のグロリア」というコンセプトのもとに、「GLORIA」「Innovational Symphonia」という合唱をテーマにしたシングルを連続リリースした。2013年3月にメジャー2ndアルバム「喝采と激情のグロリア」を発売。同年6月にはZepp Tokyoで単独ライブを行った。2014年7月にニューシングル「隣に座る太陽」を発表。9月3日にはメジャー3rdアルバム「AVALON」をリリースし、日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブを含む全国ツアー「AVALON TOUR」を9月から10月にかけて実施する。