ナタリー PowerPush - 摩天楼オペラ

“劇的ロック”集大成アルバムを全曲解説

M-2「天国の扉」

──2曲目は疾走感のある「天国の扉」。この曲は今春行われた全国ツアーで先行披露されたんですよね。

 そうですね、春に行った「journey to HEAVEN Tour」の全会場で、1曲目に演奏しました。

Anzi(G) この新曲を前回のツアーの1曲目に持ってきたのは、別にライブを盛り上げたいからという理由ではなくてこのアルバムへの布石だったので、別にお客さんが1曲目からノリノリにならなくてもいいと割り切って演奏しました。「journey to HEAVEN Tour」というツアータイトルもアルバムへの布石になってますし。あのツアーに参加した人たちはこのアルバムを聴いて、ニヤリとするんじゃないかな(笑)。

 実はそのツアーが始まる前に「天国の鍵」っていうバナーをオフィシャルサイトに貼っていて、そこをクリックすると「天国の扉」の前奏が聴けるっていうものだったんです。なのでその“鍵”を持って「journey to HEAVEN Tour」に来て、「天国の扉」に手をかけるというところまでを、ツアーでは表現しました。そしてアルバムを聴いて、その“扉”を開いたら「天国の在る場所」が待っているという流れなんですよ。

(Dr) そもそもこの曲は「Orb」と同じ時期に録ったもので、もう1年前にはあったんです。

 手探りで踏み出した一歩が、表向きには「Orb」でしたけど、裏では一緒に作っていた「天国の扉」がすでに存在していたので。その2曲があったことで、アルバムの曲作りがトントンと進んだのかな。軸になる2曲があるので、あとはそこからいろいろ崩して自由にやればよかったんです。

M-3「隣に座る太陽」、M-4「輝きは閃光のように」

──そこから3曲目「隣に座る太陽」に流れていきます。

 この「AVALON」には“自分の意識の改革”という考えが込められていて。「天国の扉」でうっすらとそれを提示して、「隣に座る太陽」で強引にその考えに引っ張るみたいな、アルバムの中ではそういう位置付けの1曲です。

──そして4曲目「輝きは閃光のように」では燿さんが作曲を手がけています。

燿(B)

 この曲はレコーディングの後半にできたんですけど、「AVALON」というテーマが決まってある程度曲がそろってきた段階で伊藤さんや小林さんとのコラボが決まって、「あ、そういう世界観だったら、こういう曲も欲しいな」と思って書きました。伊藤さんや小林さんはゲーム系のお仕事が多いですし、だったらゲーム音楽を彷彿とさせるメロディや展開をバンドサウンドで表現しようと考えて。

──そうなんですね。この曲はヘビーなリフと速弾きフレーズが交互に出てくるイントロも面白いですね。

 あれはスタジオでAnziくんが「こんなのどう?」ってすぐ作ってくれたフレーズなんです。

Anzi うちの楽曲は大概がスタジオでセッションしながら作っていくんで、燿が持ってきた曲の素材から感じたことを即興で弾いたら、あのフレーズができたんです。

M-5「3時間」

──続いて5曲目「3時間」。この曲はアルバムの中でもかなり異色で、サウンドのみならず歌詞もダークなミディアムナンバーです。

 歌詞は完全に曲に引っ張られて出てきたものです。憎しみばかりが出てきて、そのまま呪いの歌にしました(笑)。

──「私は お前を呪い続けるだろう」というストレートな歌詞が耳に入ったときの驚きといったら(笑)。実際に苑さんが歌詞を書くときは、今回みたいに楽曲の世界観に引っ張られて歌詞ができあがることが多いんでしょうか?

 そのほうが多いですね。さっき曲を聴いて映像が見えるという話をしましたが、実は歌詞を書くときは僕も同じで。楽曲自体がいろんな映像をすでに持っていて、その見えてきた映像を歌詞としてつづってます。この曲の場合は牢屋の中の映像だったんですね。そこに憎しみに燃える1人の男がいて……それを歌詞にしていきました。自分が復讐をする前に死んでしまう、そういう状況が一番憎しみが募るんだろうなと思って、死刑が執行される前の3時間に焦点を当てて書いたんです。

──そういうお話を聞いていると、作詞をしているというよりも、映画の脚本を書いてるみたいですよね。

 映像が浮かんできて、それを文字にしていくってことは、そういうことなのかもしれないですね。

──例えば映画を作ってみたいという願望ってありませんか?

 そんな(笑)。ないです、ないです。

──例えば摩天楼オペラの楽曲をテーマに、ビデオクリップとは違ったショートムービーのような映像を作るとか?

 ああ、そういうのだったらまだ……要は自分でビジョンが見えてるものを、映像で再現すればいいんですもんね。それは興味あります。「3時間」みたいな曲だったら挑戦してみたいです。

──この曲は彩雨さんの作曲ですが、なぜこういったタイプの曲を作ろうと思ったんですか?

彩雨 ループもので、盛り上がらない感じの曲が作りたかったんですよ(笑)。Aメロから作ったんですけど、淡々としたBGMみたいなノリを意識して。リズム隊もキーボードも同じフレーズを続けて、ボーカルもメロディの起伏があまりない、お経みたいな感じで鳴り響くような、そういう曲にしたかったんです。ただサビはドーンと盛り上がるんですけど、それでもどこか淡々とした雰囲気があって。その微妙な温度感はかなり意識しましたね。

 この曲の面白いところは、一切アップテンポにならないところで。このドゥーミーな感じが最初から気に入ってました。こういう曲ができるのも、今の摩天楼オペラの強みなんでしょうね。

ニューアルバム「AVALON」 / 2014年9月3日発売 / 2800円 / キングレコード / KICS-3098
初回プレス盤付属外箱ジャケット
通常仕様ジャケット
収録曲
  1. journey to AVALON
  2. 天国の扉
  3. 隣に座る太陽
  4. 輝きは閃光のように
  5. 3時間
  6. Stained Glass
  7. Jolly Rogerに杯を
  8. クロスカウンターを狙え
  9. 蜘蛛の糸
  10. 友に捧ぐ鎮魂歌
  11. Orb
  12. 天国の在る場所
初回限定仕様特典
  • 小林智美氏書き下ろしイラスト外箱付き
  • アナザージャケット1種ランダム封入(全5種/メンバーソロ写真仕様)
  • シングル『隣に座る太陽』との2作連動プレゼントキャンペーン応募券封入
摩天楼オペラ「AVALON TOUR」
  • 2014年9月17日(水)東京都 TSUTAYA O-EAST
  • 2014年9月19日(金)石川県 Kanazawa AZ
  • 2014年9月20日(土)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
  • 2014年9月23日(火・祝)北海道 札幌KRAPS HALL
  • 2014年9月25日(木)青森県 青森Quarter
  • 2014年9月27日(土)岩手県 Club Change WAVE
  • 2014年9月28日(日)宮城県 darwin
  • 2014年9月30日(火)大阪府 BIGCAT
  • 2014年10月2日(木)広島県 ナミキジャンクション
  • 2014年10月4日(土)熊本県 DRUM Be-9 V2
  • 2014年10月5日(日)福岡県 DRUM Be-1
  • 2014年10月7日(火)愛媛県 松山SALONKITTY
  • 2014年10月9日(木)兵庫県 神戸VARIT.
  • 2014年10月11日(土)京都府 磔磔
  • 2014年10月13日(月)愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2014年10月18日(土)東京都 日比谷野外大音楽堂
摩天楼オペラ(マテンロウオペラ)

2007年に結成されたロックバンド。2008年に苑(Vo)、Anzi(G)、燿(B)、悠(Dr)、彩雨(Key)という現在の編成になる。叙情的な歌詞とシンフォニックメタルからの影響が強いサウンドが特徴で、国内のみならず海外でもCDリリースやライブ活動を展開。2010年5月に初のホールワンマンライブを渋谷公会堂(当時・渋谷C.C.Lemonホール)で実施した。同年12月にはミニアルバム「Abyss」でメジャーデビュー。2011年7月にリリースしたメジャー1stシングル「Helios」は、オリコン週間ランキング初登場16位を記録した。同年10月にはメジャー2ndシングル「落とし穴の底はこんな世界」を発表。同月にさいたまスーパーアリーナで行われた「V-ROCK FESTIVAL '11」にも出演し、大きな注目を集めた。2012年3月、メジャー1stフルアルバム「Justice」を発売。同年後半に「喝采と激情のグロリア」というコンセプトのもとに、「GLORIA」「Innovational Symphonia」という合唱をテーマにしたシングルを連続リリースした。2013年3月にメジャー2ndアルバム「喝采と激情のグロリア」を発売。同年6月にはZepp Tokyoで単独ライブを行った。2014年7月にニューシングル「隣に座る太陽」を発表。9月3日にはメジャー3rdアルバム「AVALON」をリリースし、日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブを含む全国ツアー「AVALON TOUR」を9月から10月にかけて実施する。