ブクガは“自分を表現するツール”という感覚
──ちなみにサクライさんがプロデュースするもう1つのグループ、クマリデパートの曲を作ったり、ほかのアーティストに楽曲提供する際はブクガとは違うことを意識しているんですか?
ブクガとはまったく別ものとして考えていますね。楽曲提供にしろ、一聴して僕の曲だとわかるように気を付けてはいます。クマリデパートの場合、最近の曲はどれも「みんなこういうロックなのが好きだろう」みたいな感じであえて勢いだけで3時間くらいで作ったやつです。クマリデパートでは「わかりやすくてキャッチーな曲だけをやろう」と思ってるので。
──ブクガで作っているのはサクライさんが作りたい曲、クマリデパートで作っているのは多くの人が聴きたいであろう曲、ということなんですね。
そうですね。ある意味、お客さん目線なんです。楽しんでもらうことを最優先に考えているんです。逆にブクガに関しては、楽しんでもらうってことをなるべく考えないようにしてます。僕が作りたいものを作って気に入ってくれる人がいたらラッキー、みたいな。
──なるほど。でも「気に入ってくれる人がいたらラッキー」というスタンスでありながら、ブクガは今年に入ったあたりから音楽ファンの注目度が一層高まっている印象があり、ブレイク前夜のような空気を感じるようになりました。そういう感覚はサクライさんの中にもありますか?
どうなんですかね。僕あんまり最近現場に行けてないんですけど、Twitterとかを見てたり、MVについてコメントしてくれる人のうち半分くらいが外国の方なので、自分が知らない人にも聴いてもらえてるんだなっていう実感はあります。だったら僕はこのやり方のまま、ブクガの質をどんどん上げていくしかないんだなって気持ちになりました。みんなが体験したことがないような、もっと面白いものを提供しなければってホントに思います。曲についてももちろんですけど、ホームページのデザインやアー写、グッズなど含めて。
──サウンド面だけでなくトータルでブクガをプロデュースしているわけですからね。
はい、例えば撮影のときはカメラマンの横に、どっちが撮ってるのか分からないくらいべったり付いて指示してますしね。自分でも言ってることがめちゃくちゃ細かいなと思うし、別にそうしたくてしてるわけじゃないんですけど、気になって仕方がないんですよ。「ブクガのことは自分のこと」っていう意識が強い。自分のことなのでどうしても気になるし、手抜きできないんだと思います。
──では今後も、ほかのクリエイターにいろいろなことを任せることはなく、“サクライケンタ完全プロデュース”という形で続けていくつもりですか?
そうですね。ブクガは“自分を表現するツール”っていう感覚なんです。僕は別に歌がうまいわけでもないですし、ダンスが踊れるわけでもない。そんな僕が作るものに、それぞれの個性をプラスして表現してくれるのがメンバーなんです。
──メンバーとサクライさんの関係性は昔と比べて変わりました?
例えば家族や恋人でもそうだと思うんですけど、一緒にいるときに無理にしゃべらなくても大丈夫、何も言わなくてもわかり合ってる、っていうことがありますよね。最近はだんだん慣れてきて「いい意味で口数が減った」って感じです。もちろん、しゃべりだしたらお互いすごいしゃべるんですけどね。そもそも僕もメンバーも明るいタイプではないし。そういうところで、独特ないい関係性が築けているのかなというのを感じてます。
よくある宣伝文句とは違う、本物の「ここだけでしか体験できない」
──今のブクガの状況を、サクライさんはどう見ていますか?
まだ全然だと思ってます。
──具体的に言うと何が足りていないんでしょうか。
もちろん自分が曲を書いてるので、僕がもっとスキルアップしないといけないですし、全部がまだまだだと思ってます。今回のシングルで一段階上がった手応えはあるんですけど、そのおかげで「まだ全然面白いところに行けそう」っていう新しい景色と可能性が見えた感があるので。
──結成当時に思い描いていたイメージがあったと思いますが、3年経った今、当初の想定と変わった部分は何かありますか?
やりたかったことについては、ニュアンスとしてはできてはいますが、全体のスケールアップのために単純にもっとお金をかけたいですね。前にやっていたプロジェクト(いずこねこ)の頃から「自分が表現したいことを誰かにステージでやってもらう」ということをしていたので。昔と比べてブクガはその密度が高いと言うか。障害物がなくなって、自分とメンバーが直接つながってる感覚が強くなりましたね。何も言わずとも、僕が思ってるMaison book girlをみんなちゃんと理解してくれてると感じます。
──いい状態ですね。サクライさんの中で「今後ブクガをこうしていきたい」みたいなビジョンはあるんですか?
今まで別になかったんですけど(笑)、今回のシングルは「たくさんの人に聴いてもらいたい」っていうことをけっこう考えました。AIで歌詞を作ることが取っ掛かりになって、興味を持ってくれる人がいたらいいなとか。やっぱりいいものを作っても、人に聴いてもらわないと意味はないので。「聴きたい人が聴いてくれたらいい」っていう気持ちは変わらないけど、「聴きたくなる以前に知らない」っていう人がいるのはすごいもったいないと思っていて。
──そうですよね。
聴いたらファンになってくれる可能性がある人が、知る手段がないから知らないまま、っていうのはお互いもったいないじゃないですか。聴いたら好きになってくれそうな人に伝えたいけど、どの人がそうなのかはわからないので、できるだけ多くの人に聴いてもらうっていう方法を取るしかないなって思ってます。
──なるほど。
今回のシングルはカップリング含めけっこう気合いを入れて作ったし、作品としていいものができたと自負しているので、それをちゃんと広めたい。売りたい……と言うか聴いてほしい。今がそのタイミングだと思うんです。
──ライブについては何か今後の展望はありますか?
とりあえず年末のワンマンでは、やりたいことは全部やろうと思っていますし、それをお客さんが好きなように感じてくれたらいいなと思ってます。よくある宣伝文句の「ここだけでしか体験できません」みたいなレベルじゃなく、本当にあの会場でしか体験できないことをするつもりです。あとで映像で観てもわかりにくい、その場にいないと理解できないことをいろいろやりたいと思います。
- Maison book girl「cotoeri」
- 2017年12月13日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
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[CD]
1300円 / TKCA-74600
- 収録曲
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- 言選り
- 十六歳
- 雨の向こう側で
- 言選り(instrumental)
- 十六歳(instrumental)
- 雨の向こう側で(instrumental)
- Maison book girl(メゾンブックガール)
- 2014年11月に活動を開始した、矢川葵、井上唯、和田輪、コショージメグミの4人からなる“ニューエイジポップ”ユニット。音楽家のサクライケンタが総合プロデュースを担当し、現代音楽とアイドルポップスを融合させた複雑かつキャッチーな楽曲で支持を集めている。2015年9月に1stアルバム「bath room」をリリースし、同年12月にはアメリカのオルタナティブロックバンド、Ringo Deathstarrの東名阪公演にサポートアクトとして出演。2016年11月に2度目のワンマンライブを東京・WWW Xで行い、チケットは即日完売となる。同月、シングル「river(cloudy irony)」で徳間ジャパンコミュニケーションズよりメジャーデビューし、2017年4月にアルバム「image」を発表。5月に東京・赤坂BLITZでのワンマンライブを成功させる。12月にシングル「cotoeri」をリリースした。
公演情報
- Maison book girl
「Solitude HOTEL 4F」 -
2017年12月28日(木)
東京都 Zepp DiverCity TOKYO
OPEN 18:00 / START 19:00
前売 4000円 / 当日 4500円(共にドリンク代別)