エレキギターを使うのは“ごまかし”だった
──今アレンジやミックスのこだわりを伺いましたが、使う楽器についてはどう考えていますか? 例えばマリンバだったりハンドクラップだったり、ちょっと聴いただけで「ブクガっぽい」とわかるようなおなじみの音色がブクガの曲では多く使われている印象があります。
そうですね。でもロックバンドが毎回エレキギター、鍵盤、ベース、ドラムだけで曲を作っても、そこに疑問は感じないと思うんです。僕はどちらかというとバンドサウンドよりもクラシックや現代音楽が好きなので、チェロ、ビオラ、バイオリン、マリンバ、ピアノみたいな楽器編成でいつも曲を作るのは、自分としてはそんなに不自然なこととは思っていなくて。僕、そもそもエレキギターが好きじゃないんですよね。
──カオティック・スピードキングや大森靖子さんのサポートなどで頻繁にエレキギターを弾いているのに(笑)。
ははは(笑)。ブクガは、最初の「bath room」ってアルバム(2015年発売)ではエレキギターをけっこう使ってるんですが、入れたくて入れてるというよりは“ごまかし”だったなと思ってて。
──ごまかし?
ギターを入れると音がすぐまとまるんですよ。けど自分がスキルアップするのにつれて、ギターを入れる必要がどんどんなくなってきた。たぶん今後、ドラムもだんだん音数が少なくなっていくんじゃないかなと思います。最小限のパーカッションだけでも十分な気がしていて。ベースの役割をするもの、オケのハーモニーの部分、リズム、歌が最低限あれば十分だと思うんです。今回のシングルの2曲もそうなんですけど、間を意識して、必要以上に叩かない最小限のフレーズを作りたいんです。飾り立てて豪華っぽく聞こえるようにしても、「無理に派手に聞こえることになんの意味があるのか?」って気持ちになっちゃうんですよ。余白を作れるところにはどんどん作っていって、そこは聴いてくれる方が想像で埋めてくれたらって思ってます。
──エレキギターを使わないのは、聴く人によっていろいろな解釈ができるようにするためだと。
一聴してわかりやすい音楽を求める人がいるのももちろんわかっています。ブクガもバックバンドを入れて生演奏でライブをすることがあるんですが、そのときはCD音源を再現するのでなく、アレンジを変えてテンポも上げて、まったく別物としてやっています。そういうのが聴きたい人もいると思うし。単純にバンドは楽しいし勉強にもなっています。
──今は生演奏でライブをするときはロックバンド編成でやっていますが、例えば小編成の室内楽団なんかと一緒にステージに立って、音源に寄せたライブをしたいという気持ちもあるんでしょうか?
そうですね。着席のコンサートホールで、ストリングスの前でダンスを踊るみたいな。そういうライブも来年あたりやりたいなと思ってはいます。
バンドセットのライブ経験がメンバーにもたらしたもの
──楽器の音数を少なくした結果なのか、それとも各メンバーの歌い手としての成長なのか、今回のシングルはこれまでの音源と比べて歌声が前に出ている印象がありました。
そうですね。歌がうまくなったのは僕も今回かなり感じました。だからごまかす必要がないので、歌を前に出しても大丈夫になった。声への加工も最小限にしているから、今までより人間的な感じになったかもしれないです。
──やっぱりそうなんですね。
バンドセットのライブをやり始めたのも意味があったなと思います。通常のオケでライブをするのとは違って、生演奏だと歌声がバンドの音圧に負けちゃうんですよ。メンバーはそれが悔しくて声量を上げるトレーニングをしたみたいで、今回のレコーディングの際にけっこうみんな歌がうまくなってて(笑)。
──サクライさんは、4人それぞれをボーカリストとしてどう評価してますか?
コショージは抑揚を付けた歌い方をするので、歌詞が感情的になる部分を歌わせています。音を取るのが苦手みたいで「音程がわからない」ってずっと言ってますけど、感情表現の仕方は一番心得ていると思います。葵ちゃんはけっこう僕の好きな歌い方をしてくれる人ですね。初めの頃はホントに棒読みみたいな歌い方だったんですけど、いつも送ってるデモに僕が入れた仮歌に影響されたのか、細かい部分で僕の好きな歌い回しになってきて。歌自体もうまくなったので、サビ前とか大事なところを任せることが多くなりました。
──なるほど。
和田はもとからうまく歌えたので、困ったときにすごく使いやすいですね。安定しています。唯ちゃんに関しては、昔は今聴いたらびっくりするくらい活舌が悪くて声も出てなかったんですが、今は歌も断然うまくなって声量も出るようになって。バンドセットでもソロパートでちゃんと聴こえるくらい声がしっかりしています。でも、うまくなったとはいえ、まだまだ全員歌のスキルアップはしてほしいですね。歌に説得力が欲しい。
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ブクガは“自分を表現するツール”という感覚
- Maison book girl「cotoeri」
- 2017年12月13日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
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[CD]
1300円 / TKCA-74600
- 収録曲
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- 言選り
- 十六歳
- 雨の向こう側で
- 言選り(instrumental)
- 十六歳(instrumental)
- 雨の向こう側で(instrumental)
- Maison book girl(メゾンブックガール)
- 2014年11月に活動を開始した、矢川葵、井上唯、和田輪、コショージメグミの4人からなる“ニューエイジポップ”ユニット。音楽家のサクライケンタが総合プロデュースを担当し、現代音楽とアイドルポップスを融合させた複雑かつキャッチーな楽曲で支持を集めている。2015年9月に1stアルバム「bath room」をリリースし、同年12月にはアメリカのオルタナティブロックバンド、Ringo Deathstarrの東名阪公演にサポートアクトとして出演。2016年11月に2度目のワンマンライブを東京・WWW Xで行い、チケットは即日完売となる。同月、シングル「river(cloudy irony)」で徳間ジャパンコミュニケーションズよりメジャーデビューし、2017年4月にアルバム「image」を発表。5月に東京・赤坂BLITZでのワンマンライブを成功させる。12月にシングル「cotoeri」をリリースした。
公演情報
- Maison book girl
「Solitude HOTEL 4F」 -
2017年12月28日(木)
東京都 Zepp DiverCity TOKYO
OPEN 18:00 / START 19:00
前売 4000円 / 当日 4500円(共にドリンク代別)