Maison book girl×金澤ダイスケ│オタク女子たちが表現する“現代アート”

4人のキュレーターがそれぞれ話を聞きたい次世代アーティストとトークする「Coming Next Artists」シーズン2の対談企画。第10回ではキュレーターの金澤ダイスケ(フジファブリック)がMaison book girlを指名し、グループ結成の経緯や7月31日にリリースされるニューシングル「umbla」、今後の展望についてまで話を聞いた。

取材 / 近藤隼人 文 / 酒匂里奈 撮影 / 後藤壮太郎

Coming Next Artists シーズン2

Maison book girl(メゾンブックガール)
Maison book girl
矢川葵、井上唯、和田輪、コショージメグミからなる4人組グループ。通称ブクガ。音楽家のサクライケンタが楽曲制作や世界観構築などを全面的にプロデュースし、現代音楽を下敷きにした独自の音楽性が話題を呼ぶ。2015年9月に1stアルバム「bath room」をリリース。2016年11月にメジャーデビューし、2017年4月にメジャー初のアルバム「image」を発売した。2018年11月にはメジャー2作目のアルバム「yume」を発表。同年11月25日に東京・日本橋三井ホールにて昼夜2部構成のワンマンライブ「Solitude HOTEL 6F」、12月16日に東京・ヒューリックホール東京でワンマンライブ「Solitude HOTEL 6F yume」を開催する。2019年7月にはシングル「umbla」をリリース。9月16日に京都・KYOTO MUSE、9月22日に東京・渋谷WOMBで同作の発売記念ワンマンライブ「Amazon presents Maison book girl LIVE」を行う。

金澤ダイスケが感じた“違和感”

──「Coming Next Artists」シーズン2は金澤さんをはじめとするキュレーターの方々が話を聞いてみたいアーティストと対談する企画です。今回、金澤さんがMaison book girlさんを指名されたのはどうしてですか?

金澤ダイスケ もともと名前は存じ上げていまして、実際に音を聴いたときに「あれ、なんかちょっとおかしいな?」といい意味での違和感を感じました。その違和感について、根掘り葉掘り聞いていきたいと思いました。

──金澤さんが感じた“違和感”とはどんなものですか?

金澤 スティーヴ・ライヒ的な現代音楽っぽさや、詩の朗読だけの曲がある部分です。何が派生して作られた女性グループなんだろうとか、いろいろ考えてしまいました。自分的には美術館のような、少しファンタジー的な要素を感じていて。そういった部分にとても注目してます。曲を作っているのはサクライ(ケンタ)さん?

コショージメグミ そうですそうです。

金澤 なるほど。ではまず結成の経緯から聞いてもいいですか?

Maison book girlと金澤ダイスケ。

コショージ 最初にサクライさんと私が「新しい音楽活動を始めよう」と話し合ってスタートして、そこから女の子4人グループにしたいという話になって、メンバーを募りました。

金澤 楽曲に変拍子を取り入れるのはコショージさんの提案だったんですか?

コショージ いえ! もともとサクライさんが変拍子の曲をよく書く方だったので、それでですね。ポエトリーリーディングは私が提案しました。最初は詩の朗読だけをやっていて、4人集まってからは曲とポエトリーリーディングを半々くらいのバランスでやるようになりました。

──ポエトリーリーディングはどういう経緯で提案しようと思ったのですか?

コショージ 私がBiSを辞めたあと、1人でライブをできる機会をいただけたんです。でも特別歌がうまいわけではないのでどうしようかなと思ったときに、歌詞なら書けると思って、サクライさん作曲のインスト曲に合わせて歌詞を書かせてもらったんです。それを初めてライブでやって、そこからブクガができた感じです。

金澤 初めてのライブが終わって、もう一度やりたいと思ったということは、自分なりの達成感や手応えがあったんですね。

コショージ 1人でステージに立つのは初めてで……実は嫌すぎて、ポエトリーリーディングをしながらめちゃくちゃ泣いちゃったんですよ。でも、ライブを観てくれた人がすごくよかったと言ってくれて。そのおかげでまたやりたいと思えたんだと思います。

金澤 そうなんですね。最近のライブ映像を拝見して、演出を含めとてもコンテンポラリーな印象を受けました。演出はサクライさんと皆さんで一緒に考えてるんですか?

コショージ ライブの演出はサクライさんと技術周りを担当してくださってるhuezさんと私で話し合ってます。やりたいことをバンバン投げて、実現可能な案の中から決めてますね。

出身は北は北海道、南は福岡まで

金澤 そのやり方がかれこれ4年、5年と続き……やっていく中で関係性が変わってきたりしました?

コショージ まったく変わらないです(笑)。

金澤ダイスケ

金澤 まったく変わらないんだ(笑)。僕も曲を書く人間として、こういうメンバーがいるからこういう曲を書こうって思うことがあるんですよ。だから4人のパーソナルな部分が曲に投影されているんじゃないかなと思って。皆さんは、全員出身地がバラバラですよね。

コショージ そうです。そんな詳しいところまで……!

金澤 (矢川葵のほうを見ながら)大阪でしょ。(井上唯のほうを向き)福岡で……。

コショージ 新潟です。

和田輪 北海道です。

金澤 北は北海道、南は福岡まで。メンバー間で地域の差を感じることはありますか?

和田 ポエトリーリーディングをするとき、大阪出身の矢川は方言が出ちゃうんですよ(笑)。

金澤 方言出ますよねえ。

矢川葵 すごい出ます。逆になんでほかの3人が標準語をしゃべれてるのかわからなくて。みんな地方出身なのに……。

井上唯 たぶんみんなちょっとはしゃべれてないんだと思うのよ。しかもサクライさんも大阪出身だから誰も正解がわからない(笑)。

金澤 ちなみに僕も茨城県出身なので、標準語がまったくわからないような状態で。僕もポエトリーリーディングをしたら、訛りながら詩を朗読すると思います(笑)。あと皆さんは変拍子の曲でも当たり前のように踊ってますよね。変拍子の曲に合わせて踊るのって難しくないですか?

コショージ 正直最初は変拍子ということ自体を理解していなかったので、4拍子の曲と同じ感覚で踊っていました。

金澤 すごいですね……。僕は変拍子の曲のときは、体になじむまで練習するんですよ。

コショージ そもそも始めた頃はみんな素人だったので、4拍子も体になじんでなかったのがよかったのかもしれないです。