音楽ナタリー Power Push - 前田敦子
激動の5年の“真ん中”にあった音楽
秋元さんの歌詞は「or」「or」「or」
──同じバラードタイプの楽曲でも、「やさしいサヨナラ」とこれまでのバラードとでは表現力、声の色合いが変わってきていると感じるんですよ。その変化はご自身でも感じますか?
はい。でも意識して変えたものではないですね。歌詞って普段だと使わない、ちょっと恥ずかしい言葉が並んでたりするじゃないですか(笑)。それを躊躇なく歌えるようになってきたのかなとは思います。
──歌詞について、前田さんから秋元さんに対して意見することはあるんですか?
秋元さんはいつも「or」「or」「or」って、メロディに合うフレーズをいくつか書いてくれるんです。「自分で選んでいいですよ」って。そのひと言がけっこう違ったりするんですよ。同じようなニュアンスでも、響きや印象が全然違う。その歌詞を、いつもディレクターさんと一緒に選んで決めています。
──へえ、考える余地をきちんと歌い手に委ねているんですね。
いろいろとアイデアが浮かんじゃうみたいで。曲作りのときはそれを考えるのも楽しみですね。
何をやってもいい感じの年齢になった
──アルバム用の新曲のうち、表題曲「Selfish」はミュージックビデオも制作されました(参照:前田敦子が奔放な女演じる新曲MV、ランジェリー姿やキャバレーシーンも)。
これは「さよなら歌舞伎町」(2015年1月に全国公開された映画。前田は染谷将太扮する主人公・高橋徹の恋人、飯島沙耶を演じた)でご一緒した廣木隆一監督が撮ってくださって、ラブホテルのシーンは撮影場所も「さよなら歌舞伎町」と同じなんです。お風呂のシーンはラブホテルで撮ってるんですけど……なんかエロくないですか?
──エロいですね(笑)。そういうシーンの撮影に照れはないんですか?
なかったですね。それこそ5年前の私だったら絶対表現できなかったと思います。
──そう考えると、歳を重ねるのも悪くないですね。
確かに。何をやってもいい感じの年齢になったな、25歳ってそういうときだなって感じはすごくありますね。
30代まではあっけらかんと“Selfish”に
──今日のお話を聞く限り、まだ音楽でいろいろと挑戦してみたいことがあるようですが、具体的にこれからやってみたいことはありますか?
もっと生で歌う機会を増やしたいです。
──ライブを。
はい。じゃないと、これから長く音楽を続けていくことが困難になる気がして。やっぱりアーティストの皆さんは、ライブをたくさん重ねて自分を見つけていくんだろうなと思うんですよ。私はソロでのライブは2回くらいしかやったことがなくて、圧倒的に経験不足なんです。それはちょっとさみしいなと思って。
──ライブだと過去のレパートリーも歌っていくうちに捉え方も変わってくるでしょうし。
そうですね。せっかく私のために書かれた曲がこんなにたくさんあるんだから、どんどん自分のものにしていきたいんです。今回こうしてアルバムという形で5年間を振り返って、改めて思いましたね。
──では音楽以外で、プライベートなことも含めてやってみたいこと、挑戦してみたいことはありますか?
とりあえず、30歳になるまでに、もう少し人生が進んでたらいいなと思います。そして誰かと結婚したい(笑)。結婚はしてみたいですし、子供は産みたいですし……。この間、宮沢りえさんとお仕事させていただいて、改めてりえさんは尊敬できる方だなあと思ったんです。りえさんの背中を知らず知らず追いかけている自分がいて。りえさんは主婦として普通にお母さんをしながら仕事と両立をしていて、たまに娘さんのお弁当の画像とかを送ってくれるんですよ(笑)。りえさんから「これも幸せだよ。女っていろんな幸せがあって楽しいよね」ってメールをもらったときに、深いなあって。いろんなことを、いい意味でわがままにやっていきたいです。
──“Selfish”に。
そうですね(笑)。今は“Selfish”に。40歳くらいになったらもう少し大人な女性になりたいなと思うんですけど、30代まではあっけらかんと生きて、いろんなことに挑戦していきたいと思います。