音楽ナタリー Power Push - 前田敦子

激動の5年の“真ん中”にあった音楽

激動の5年間

──今回の1stアルバムは前田さんのソロ活動5周年を記念したものとなりますが、前田さんの場合、普通にソロアーティストがデビューしてからの5年間とはまったく違う道のりですよね。

違う人生を歩んできましたねー(笑)。

──ソロデビューシングル「Flower」と2ndシングル「君は僕だ」はまだAKB48に在籍していた2011年のリリースですし、AKB48卒業後は女優業に主軸を置きながらの活動で。前田さんにとって大きな変化があった時期なので、ソロデビュー5周年という実感はあまりないんじゃないかなと思うのですが。

そうですね。この5年間を振り返ると、私にとってはやっぱり激動の5年間だったなと思います。AKB48を卒業したというのは、やっぱり自分の中でもすごく大きな出来事で。そこから本格的に女優としてのお仕事を始めて……ソロでの音楽活動は、そんな激動の時期の中でちょうど真ん中にあったもの、という感覚です。

──女優としての活動が本格化していく中で、昔に比べればどうしても音楽の現場に携わる機会は減っているわけですけど、歌の表現力という点では女優業もしっかりフィードバックされているんじゃないかと、アルバム用に書き下ろされた新曲4曲を聴いて感じました。

うれしい! 私としても、今回のアルバムはそこを楽しんでほしいんです。正直な気持ちを言うと、「Flower」の頃の歌はできることなら歌い直したいくらい。でも、これまでの5年間を記録したものと考えたら、そのままのほうがいい。アルバムってそういうことだよなって。客観的に音楽を楽しむ立場で考えたらそのほうがいいかなと思って、結局そのまま収録することにしました。

歌手活動はいろんなことの中間にある心地いい場所

──「Flower」の時点では、ゆくゆくはソロでの音楽活動をと考えていたんですか?

あの頃はそこまで考えてなかったです。ちょうどほかのメンバーも少しずつソロ活動を始めていた時期だったので、「これから個々に何かをする1つのきっかけになるのかな」と前向きな思いでやらせていただいたのは覚えています。

──AKB48を卒業したあとは、もともとの目標であった女優業を本格的に始めたわけだから、完全に音楽活動を切り捨てるという選択肢もありましたよね。でも前田さんはそうしなかった。

前田敦子

意外と好きなことなんですよ(笑)、歌を歌うのは。あとはやっぱり、秋元(康)さんがつなぎ止めてくれているなって思うんですよね。秋元さんが毎回素敵な歌詞を書いてくれるから、歌いたいって気持ちにさせてくれるというか。この相思相愛は一生切り離せないものなのかもなって。

──秋元さんにはそのときどきで「前田敦子に歌わせたい言葉」というのがあるのかもしれないですね。

うん。いつも曲をもらうときはワクワク感があるんですよね。それをファンの皆さんが全力で受け止めてくれるので、歌手活動は……なんだろうな、私にとって常にいろんなことの中間にある、心地いい場所なんです。ソロではアイドルの頃とはまた違う、未知の出来事が体験できる感覚があって。歌を歌うだけじゃなくて、ジャケットデザインとかミュージックビデオの撮影とか……いろんなことが試せる場所だから好きなんだと思います。