lynch.|結成13周年ライブに向けて 明徳(B)復帰を前にしたバンドの意気込み

慎重に判断を重ねた謹慎、再開、復帰

──「戻ってきた。万歳!」という感覚ではなかったわけですよね。実際、ステージからも浮かれた雰囲気は微塵も感じられませんでした。

葉月 そうですね。しかも映像を含め、ああいった演出が伴っている以上、「明徳の復帰に向けてずっと準備してたんですか?」と言われたらもちろんそれは事実なわけです。でもすべてを気にしていると何もできなくなってしまうんで……実際、準備はしてました。だけど、実行できるかどうかはかなりギリギリまでわからなかったんです。その答えを待ってから準備をしても遅いんで、GOサインが出た時点ですぐに動けるように、映像とかも準備を進めていました。もしかしたらあの告知映像は後半部分が世に出ないまま、終わっていたかもしれないです。

左から増田勇一、lynch.。

──当然ながら、会社的な事情なども含めて、検討や調整しなければならないことがたくさん出てくるわけですよね。改めて今回のことを事務的に文章にするとすれば「2017年いっぱいをもって明徳さんの謹慎が解けた」という解釈でいいんでしょうか?

葉月 そうですね。ただ、彼自身が正式にメンバーとして復帰するのは3月11日からなんです。でも発表だけはその前にしておきたかった。「明徳がいるなら幕張に行きたい」と思ってくれる人も絶対いてくれるはずだし、その逆の人もきっといるだろうし。そこでファンの人たちにも、考えるための期間を与えたかったんです。

──発表から開催までの期間はそのための70日間でもあるというわけですね。少々厳しいことを聞くようですが、そもそも明徳さんの復帰について、バンド内で異論はなかったんですか?

葉月 と言うか、それ以前に明徳自身がlynch.をやりたいのか、そうじゃないのかがしばらくは判断できないような状態だったんですね。

──本心ではやりたいと思っていても、それに伴うさまざまなことを考えると、やるべきではないと思えてしまうとか。

葉月 うん。人前に出ること自体が怖いというのもあっただろうし。彼が外に出られるようになった直後、まず僕が飲みに誘って、「自分の希望としてはいずれ戻したいと思ってるんだけども、お前自身はどうなんだ?」と尋ねたんですけど、その時点で彼は即答できずにいました。だから僕もメンバーやマネージャーに「あいつ戻しましょうよ」という話をするわけにいかなかった。

玲央(G)

玲央 それがおそらく2016年12月末のこと。2017年1月以降も月に1回はメンバーとスタッフが集まって、lynch.の今後について話し合う機会を設けていたんです。まず僕ら自身の謹慎期間はいつまでにすべきなんだろう、とか。そうした話をしている中で葉月から「できることなら明徳を戻したい」という話が出てきたんです、「レコード会社との契約を失うとしても戻したい」と。

──明徳さんの脱退直後にそういう話があったんですね。

玲央 でもメンバー内でいろいろと話を重ねた結果、メジャーデビュー以来ずっとお世話になってきたキングレコードを、そういった理由で離れていくというのは不義理だろうという話になり。で、「サポートメンバーを加えて音源も出して、ライブ活動もして、ちゃんと実績を作りながら会社側に検討してもらおうじゃないか」という結論に至ったんです。反対意見の人がいる状態で進めるべき話ではないし、強引に進めてしまったら明徳自身が戻ってきたところで彼は居場所を失うことになる。だから、そういう話ができるようになるまで、まずはがんばろうという話で。加えてもう1つ、禊と言うわけじゃないんですけど、「明徳に付き人みたいなことをしてもらう期間を設けてはどうか?」という案がスタッフ側から出ていたんです。

……バカだねえ

──見習いメンバーのような形でローディ的な仕事を任せる、ということですか?

玲央 ええ。その考え自体は理に適ってると思うんです。バンドから付かず離れずの距離にいられることで勘が鈍るようなことも避けられるわけですから。ただ、彼のそういう姿がファンの目にも届くことになるわけで、それはファンにとって耐えがたいことなんじゃないかという話になったんです。それよりもむしろステージや音楽活動から離れてもらって、どれほどの影響をバンドに与えているかを実感してもらったほうがいいという結論になった。そのほうが音楽活動できることのすばらしさ、ありがたさということも自覚できるはずだから。それを当たり前のことのように思っていたからこそ過ちを犯した部分もあったはずです。

lynch.

葉月 やらかしたという事実はあっても、やっぱり僕は彼自身が望むならバンドに戻したいという気持ちがあったんです。インディーズ時代はベーシスト不在の時間も長かったバンドですけど、やっぱり彼は彼で、自分の居場所をこのバンドの中に作っていたわけで。正直に言うと約1年間、複数のサポートベーシストの皆さんに手伝ってもらってきた中で、明徳がいなければっていう感覚が僕の中で薄れてきていたんです。

──そうだったんですね。

葉月 と言うのも、サポートしてくれた皆さんがすぐさま楽曲のイメージを形にしてしまうことに感動しっぱなしで、改めて「優れた演奏家のすごさ」を痛感したからなんです。ただ僕の中で薄れていた感覚が蘇ったのは、カウントダウンライブのリハのときで。明徳が1年ぶりにスタジオにやってきて「INVADER」のイントロを弾いたとき、「あ、この人すごいな!」って素直に思ってしまった。それまで何かが欠けてるという意識がさほど強くはなかったはずなのに、その瞬間にパズルがピタッとハマった感覚があった。もちろんサポートの皆さんと比べて技術がどうこうと言う意味じゃなくて、「このバンドにはこの音だ」という説得力をものすごく感じさせられて。それである種の安心感を覚えたんです。

悠介 やっぱり安心感の違いはありますね、全体的に。単純に一緒にやってきた時間が長いからかもしれないけど、安心感について言えば、実際ほかのどんなプレイヤーにも劣らないと思う。しかもあいつの人柄と言うかキャラクターが、やっぱり憎めないんですよね。

lynch.

晁直 リハ前の段階から彼に対する期待度が上がってたんですよ。と言うのも、共通の知人にあいつが「俺、この1年でベース3倍うまくなっとるんで」と言っていたって話を聞いていたんで(笑)。

葉月 ……バカだねえ(笑)。

玲央 3倍ではなかったと思うな(笑)。

悠介 あいつのそういう部分が大事なんです(笑)。

晁直 俺も別に悪く言おうと思って今の話をしたわけじゃないんですよ(笑)。だけどそういうあいつらしさは変わってないんだなと思って。lynch.を1年間離れてたわけじゃないですか。だから表向きな出来事を把握できていたとしても、活動の裏側をあいつは知らないわけで。当然、自分がしてしまったことについては理解してるはずだけど、「ホントにわかってる?」と言いたい気分になることも、たまにはある。

lynch.13th ANNIVERSARY-Xlll GALLOWS- [THE FIVE BLACKEST CROWS]
lynch.13th ANNIVERSARY-Xlll GALLOWS- [THE FIVE BLACKEST CROWS]

2018年3月11日(日)千葉県 幕張メッセ 国際展示場
OPEN 15:00 / START 16:00

プレイガイド情報

lynch. TOUR'18「THE NITES OF AVANTGARDE #2」"A BLOODY REVENGE"
  • 2018年4月30日(月・振休)大阪 なんばHatch
    OPEN 16:45 / START 17:30
  • 2018年5月2日(水)愛知県 Zepp Nagoya
    OPEN 18:15 / START 19:00
  • 2018年5月11日(金)東京都 Zepp Tokyo
    OPEN 18:15 / START 19:00
lynch.(リンチ)
lynch.
名古屋出身のロックバンドで、2004年8月に葉月(Vo)、玲央(G)、晁直(Dr)の3人にサポートベーシストの4人を加えた形で始動。2005年4月に1stアルバム「greedy dead souls」をリリースし、並行して精力的なライブ活動を行うことで、地元・名古屋で話題を集める。2006年に悠介(G)が加入し、年内に4枚のシングルをリリース。2010年12月にはサポートメンバーだった明徳(B)が正式加入。2011年6月、アルバム「I BELIEVE IN ME」でメジャーデビューし、ライブを行う会場の規模を徐々に拡大させていく。2015年10月にはアルバム「D.A.R.K. -In the name of evil-」でヨーロッパデビュー。2016年9月にアルバム「AVANTGARDE」を発売し、10月にはヴィジュアル系の大型ライブイベント「VISUAL JAPAN SUMMIT 2016」に出演する。同年12月に明徳が脱退したことによりライブ活動を一時休止するも、2017年2月に活動再開を発表。4月に東京・新木場STUDIO COASTでワンマンライブ「THE JUDGEMENT DAY」を行い、成功を収めた。5月にゲストベーシスト5人を迎え、新作CD「SINNERS-EP」を発売。6月より全国ツアー「THE SINNER STRIKES BACK」を実施し、千秋楽を東京・日比谷野外大音楽堂で迎えた。11月にシングル「BLOOD THIRSTY CREATURE」をリリースし、12月に開催した地元愛知でのカウントダウンライブ「lynch. COUNTDOWN LIVE『2017-2018』」では、明徳(B)の復帰をアナウンスした。2018年3月11日に千葉・幕張メッセ 国際展示場で行う結成13周年ライブ「lynch.13th ANNIVERSARY-Xlll GALLOWS- [THE FIVE BLACKEST CROWS]」をもって再び5人編成となり、4月からは東名阪ツアー「lynch. TOUR'18『THE NITES OF AVANTGARDE #2』"A BLOODY REVENGE"」を実施する。