たむたむ、LUNA SEA終幕に絶望する
──今回はLUNA SEAのライブの魅力に迫る特集の取材ということで、それぞれ特に思い出に残っているライブを教えてください。
たむたむ いやあ……思い出だらけなんですけど、強いてあげるなら2000年の東京ドームでの「FINAL ACT」かな。LUNA SEAが終幕してしまうラストライブ2DAYSということで、当時はネガティブな気持ちもあったんですよね。LUNA SEAに撃ち抜かれて、俺はこの人たちになるんだ!って楽器を持って、ようやくバンドを始めたタイミングで終幕してしまう……テレビで終幕の記者会見の映像が流れていたとき、テレビにリモコン投げましたからね、本気で。それくらいLUNA SEAが僕の人生だったのに、LUNA SEAがいなくなったら、この先の人生どうしたらいいの?って。勝手に好きになって、勝手にそんな気持ちになってるだけなんですけど、そういう心境でした。
布川 そうですよねえ、わかります。
たむたむ ネガティブな気持ちを抱えたままだったのは僕だけじゃないと思いますけど、そこからの「LUNATIC TOKYO2025」ですよね。オープニングで「FINAL ACT」の映像が流れて背筋が伸びたし、過去最高のライブを見せてくれて、そのネガティブな気持ちがやっと晴れた気がします。
布川 めちゃめちゃいい話ですね! 僕は札幌に住んでいたので、真駒内(セキスイハイム)アイスアリーナによく観に行っていました。もちろんたくさん思い出があるんですけど、伏線回収的な意味で印象に残っていることがあって。1度目の活動休止中の1997年に出た「REW」という映像作品が、最後「WISH」のアコーティックバージョンで終わるじゃないですか。このアレンジ自体もカッコいいなと思って記憶に残っていた中で、僕が出演させてもらった日本武道館が「WISH」のアカペラバージョンで始まったんですよ! あの日もRYUICHIさんが活動休止からの復活だったから、僕の中で「REW」につながって感動しました。当日、裏でGACHI SEAの練習をしていたんですけど、「これはヤバい」と思って1回練習止めちゃいましたもん(笑)。あの始まりはめちゃくちゃカッコよかった。
たむたむ カッコよかったですよねえ。
布川 「REW」も、当時友達の家でずーっと流してたんですよ。Jさんがマイクテストで「ファッキュー、ファッキュー」って言うんですけど、それがカッコよくて。僕も今、マイクテストでたまに言います(笑)。
LUNA SEAが作り出す究極のショータイム
──ひと言で言うのは難しいと思いますが、LUNA SEAのライブの魅力をどういうところに感じますか?
たむたむ そもそも、LUNA SEAがライブバンドであり続けているということ自体が、バンドの最大の魅力でもありますよね。音源も宇宙的、破壊的なクオリティなのに、ライブでそれを超えてくるので。やっぱりライブバンドだなと確信しながら最大の魅力を存分に感じる幸福感というか……LUNA SEAと生きている空間が幸せすぎるんですよ。
布川 いい言葉!
たむたむ だから、1回行くと、また行きたい、また行きたいとなるんですよね。SLAVEの皆さんもそうだと思いますが、LUNA SEAのライブが決まったら、事務所に「この日はNGです」と伝えますから(笑)。仕事を優先しなきゃいけないのかもしれないですけれども、申し訳ないけれども、この日はNGにしてくれって。
布川 (笑)。僕が感じるLUNA SEAのライブの魅力は、わかりやすいところだとドラムソロですよね。いろんなジャンルのライブを観に行きますけど、あれだけしっかり時間をとって、しかもめちゃくちゃ盛り上がるドラムソロはほかにないと思います。あと、SUGIZOさんがバイオリンを弾いたり、音楽的な表現の幅広さがある。そうやってほかとの違いがすぐ言えることって、かなり大事だと思うんですよ。ライトなファンにも伝わりやすいし、もちろんディープなファンは日毎の違いを楽しめるし。僕、バイオリンを使っていてびっくりしたのは、SUGIZOさんとU字工事の福田(薫)さんくらいですよ(笑)。
たむたむ はははは!
布川 あとは、5人のバランスがいいですよね。
たむたむ そうそう、LUNA SEAのライブは1つのショーなんですよね。1本の映画を観るくらいの完成度というか。SEが流れて1曲目が始まる瞬間とか、RYUICHIさんが「ネクソーン!」と言ってタイトルコールしたあとの真矢さんのカウントの間とかが、究極のショータイムとして完成されている。ストイックなメンバーならではの細かさ、繊細さが伝わってくるところも好きです。
布川 ライブで盛り上がるところでも昔のINORANさんは動かなかったりして、1人ひとりの見せ方があるんですよね。もともと好きでしたけど、GACHI SEAでINORANさんのパートをやらせてもらってからさらにINORANさんに注目するようになって。僕は芸風的にけっこう動くタイプなので、INORANさんから“静”のよさを知りました。もしかしたらなんですけど……「M-1グランプリ」の決勝でやったネタでは、僕はずっと死んでて動かないんですよ。そういう見せ方ができたのは、INORANさんの影響かもしれないですね!
たむたむ INORANさんから来てたんだ!(笑)
LUNA SEA=トム・ブラウン!?
──今おっしゃったステージでの見せ方もそうですし、昨年41カ所を回るバンド史上最大規模の全国ツアーをやったり、15年ぶりに東京ドームでワンマンを開催したり、挑み続ける姿勢もLUNA SEAの魅力だと思います。スタンスやパフォーマンス面で影響を受けたことはありますか?
たむたむ 1人ひとりのストイックさですよね。もちろん全員の音にストイックさを感じますし、個人的にはやっぱりRYUICHIさんのストイックさにしびれます。特に、昨年のツアーに何本も行かせていただいた中で、RYUICHIさんが喉のコンディション的につらそうな部分があったんですけど……ただ、そこで負けない強さ? ストイックとも違うのかな、あの状況の中で走り続けられる強さを目の当たりにして。僕が初めて神永智也のライブに行ったときより、その勢いが増しているのを感じたんですよね。「どれだけ強いんだ、この人は」と思って……。さらに、最近はそのストイックさを間近で感じる場面がありまして。ジムにRYUICHIさんと一緒に行かせてもらってるんですよ。
布川 ええー、すごい!
たむたむ RYUICHIさん、本当にすごいんですよ。間近で見ていて、「ああ、こうやってLUNA SEAのRYUICHI、河村隆一が作られてるんだな」と思います。真顔で「腹筋3000回ね!」とか言うので。
布川 3000回!? ボケじゃなく?
たむたむ ボケとかまったく1つもないんですよ(笑)。本当にやるので、マジしかないんです。僕が「腰がちょっと痛いかもしれないです」みたいなことを言ったら、(RYUICHの声マネで)「たむたむはね、ネガティブワードが多い」って叱られたことがあります。
布川 カッコいい!
たむたむ 「1000kg上げろ、みたいな物理的に難しいことは仕方がないけども、根性でいけるところはがんばって」と。実際にRYUICHIさんは過酷なトレーニングをやっているし、そう言われると背筋がピーン!と伸びますよね。そこからはもう、何に対してもYES!の精神です。
布川 ポジティブワードに(笑)。
たむたむ 普段の生活からポジティブでいなきゃいけないなって、勉強になります。
布川 いいですね。例えば「PRECIOUS...」という曲は、がなったりもするけどサビはすごく聴きやすくて、音楽的にも珍しい曲だと思うんですよ。そういうバランスは、僕らのネタにも自然と影響しているかもしれないですね。“LUNACY”は狂気という意味ですけど、僕らも“狂気的”ってよく言われますし。
たむたむ 攻めてますよね。
布川 あえて攻めようとか狂気的にやってるつもりはないけど、結果的に狂気と言われて、同時にポップな面もあるよねと言われたりもするんです。LUNA SEAにも狂気的な面とポップな面があるから、LUNA SEAの楽曲を聴いてきたから自然とそういうふうになっていったのかなって。
──確かに、トム・ブラウンのネタはその両面がありますよね。ネタがテレビで流れると子供が喜ぶという話も聞きます。
布川 そうなんですよ。幼稚園児がすごく喜んでくれる。女子高生には嫌われるので、そういう面ではLUNA SEAの皆さんとは全然違いますけど(笑)。ダークで狂気的なところを持ち続けながら、大衆性やポップさもしっかりあるバランスは、LUNA SEAならではの部分ですし、曲が重かったり激しかったりしても、すごく聴きやすいんですよね。全然タイプの違うアーティストさんですけど、僕は竹原ピストルさんも好きで。ピストルさんは、歌詞の内容を変えたくないから、メロディを変えることで聴きやすくしたり、いろいろ試行錯誤していたらしいんですね。LUNA SEAの皆さんは、それをもっと感覚的にやっているのかなと思います。
たむたむ トム・ブラウンの漫才のネタは、どちらかが考えているんですか?
布川 一応2人で作ってます。
たむたむ おっ、LUNA SEAと一緒ですね! LUNA SEAの楽曲はすべてLUNA SEA名義ですから。
布川 わはははは! 確かに一緒ですわ! 俺らLUNA SEAと一緒だったんだ(笑)。
「未来には光しか見えない」LUNA SEAとともに……
──お二人の愛情がたっぷり伝わってきましたので、今度はこれからのLUNA SEAに期待することを聞かせていただけますか。
布川 僕が好きなマンガで「僕はビートルズ」という作品がありまして。The Beatlesのコビーバンドが1960年代にタイムスリップして、The Beatlesより先にThe Beatlesの曲を発表するというストーリーなんですけど、それに対して本物のThe Beatlesがどこにも出していない新しい曲を作るんです。「さすがThe Beatlesだ、俺たちがただコピーしている間に本物は違う発想で新しい曲を生み出していたんだ」という展開に感動したんですよね。LUNA SEAも、ちょっと大変な期間を乗り越えたわけじゃないですか。そういうときだからこそ、また違うタイプの曲ができる可能性があるなと思っていて。あっと驚くような新曲を聴きたいですね。日本武道館で共演させていただいたときも、僕がSUGIZOさんに「LUNA SEAの曲の中で一番好きな曲はなんですか?」って聞いたら、「次に出る1曲です」と言っていたんですよ。
たむたむ うわあ、未来なんだ!
布川 未来なんですよね。カッコよすぎて、ちょっと反応できなかったですもん。なかなか言えないですよ。僕らが「一番面白いのは次に作るネタです」なんて言ったら「ああ、はい」ってなっちゃうけど(笑)、SUGIZOさんが言うと言葉に負けていない。だから、そういう曲に期待しています。
たむたむ ドームで「新曲を作る」と言っていましたしね。RYUICHIさんが「未来には光しか見えない」と言っていたので、その言葉を信じて、僕はもうLUNA SEAとともに生きていくのみです!
布川 LUNA SEAに期待することを聞かれてるのに(笑)。
たむたむ ははは! いや、LUNA SEAがこれからも突き進んでいってくれるのは確実なので。期待というと……月並みですけど、末永く健康に、ずっとLUNA SEAを続けていってほしいというところですね。
布川 それは本当にそう!
たむたむ とにかく、SLAVEの皆さんには今回リリースされた映像作品6本は絶対手に入れてもらいたいですね! 生のライブならではのよさもありますが、ライブの熱さや迫力がすごく伝わってくる映像になっているので。ライブに行った人も、行っていない人も、絶対観ていただきたいです。
布川 あと、昨今コンプライアンスが厳しくなってるじゃないですか。とはいえ本気で腹の立つ人がいて中指を立てたくなるときもあると思うので、そういうときはJさんみたいに指2本でやるのをオススメします(笑)。その精神でSLAVEの皆さんは生きていってください!
プロフィール
LUNA SEA(ルナシー)
RYUICHI(Vo)、SUGIZO(G, Violin)、INORAN(G)、J(B)、真矢(Dr)からなるロックバンド。1989年に現編成での活動を開始し、1991年にYOSHIKI(X JAPAN)主宰の「Extasy Records」から1stアルバム「LUNA SEA」をリリースする。翌1992年に2ndアルバム「IMAGE」でメジャーデビューを果たした。1994年のシングル「ROSIER」がロングヒットを記録し、東京・東京ドームや神奈川・横浜スタジアムなどでライブを行うなど日本を代表するロックバンドへと成長する。しかし2000年11月に“終幕”を発表し、同年12月26、27日に行われた東京ドーム公演をもってバンドの歴史に幕を下ろした。終幕以降も各メンバーはソロアーティストとしてのキャリアを重ね、精力的な音楽活動を展開。2007年12月24日に東京ドームで一夜限りの復活ライブを行い、このライブをきっかけに2010年8月に“REBOOT”と称して本格的な再始動を発表した。2015年6月には主催フェス「LUNATIC FEST.」を千葉・幕張メッセで行い大成功を収める。2023年10月より過去のツアーを再現する「DUAL ARENA TOUR」を開催。結成35周年を迎えた2024年には、再び過去のツアーを再現するツアー「ERA TO ERA」シリーズを展開した。2025年2月にアニバーサリーイヤーを締めくくる東京ドーム公演を行った。
LUNA SEA (@LUNASEAOFFICIAL) | X
たむたむ
1985年生まれ、東京都出身のモノマネ芸人。「ものまね王座決定戦」「千鳥の鬼レンチャン」などに出演している。モノマネのレパートリーは、河村隆一、萩本欽一、GACKT、大森元貴(Mrs. GREEN APPLE)など。妻はものまねタレントの沙羅。
たむたむ (@tamuramasakazu) | TikTok
布川ひろき(ヌノカワヒロキ)
1984年生まれ、北海道出身。相方のみちおと2009年にトム・ブラウンを結成。「M-1グランプリ」では2018年と2024年に決勝に進出した。2022年にはバラエティ番組「かまいガチ」の企画でLUNA SEAのコピーバンド・GACHI SEAを結成。同年8月に東京・日本武道館で行われたLUNA SEAの単独公演「LUNA SEA 復活祭 -A NEW VOICE-」に出演した。