LUNA SEAのリバイバルツアー「DUAL ARENA TOUR」および「ERA TO ERA」の映像作品リリースにあわせて、音楽ナタリーでは先月より連載企画を展開中。音楽ライターによるレビュー、10人のアーティストたちのコメント企画に続き、第3弾にして最終回にお届けするのは、トム・ブラウンの布川ひろきとモノマネ芸人たむたむという芸能界きっての“SLAVE芸人”対談だ。
布川は「M-1グランプリ」ファイナリストに名を連ねる実力派であると同時に、バラエティ番組「かまいガチ」の企画でLUNA SEAのコピーバンド“GACHI SEA”のメンバーとして日本武道館に立った経験を持つ。たむたむは、LUNA SEAのRYUICHIおよび河村隆一のモノマネを中心に幅広いメディアで活躍し、河村隆一本人から提供されたオリジナル曲「こんな広い世界で」を発表。SLAVEとしての夢を叶えている2人だが、その原点には少年時代にLUNA SEAから受けた衝撃が刻まれている。自ら体験してきたLUNA SEAのライブの魅力、芸人ならではの目線で語るLUNA SEAの影響力とは? 愛情を込めてじっくり語り合ってもらった。
取材・文 / 後藤寛子撮影 / はぎひさこ
布川が抱くGACHI SEA再演の野望
たむたむ 私なんぞを呼んでいただいてありがとうございます!
布川ひろき 光栄ですよ。こんな楽しい仕事があっていいんですか(笑)。
──よろしくお願いします。直近の話題として、2月に東京ドームでの「The Millennium Eve 2025」と「LUNATIC TOKYO 2025 -黒服限定GIG」がありましたが、たむたむさんは両日行かれていたんですよね(参照:LUNA SEA×GLAYの25年ぶり対バンに東京ドーム熱狂、夢バンド“テナシー”&“THE☆BAND”誕生も / これがLUNA SEAだ!“覚悟の夜”14年ぶり東京ドームワンマンにSLAVE熱狂)。
たむたむ はい! 初日のGLAYとの対バンは皆さんがワイワイ楽しまれている印象だったんですけども、2日目のワンマンは最初にLUNA SEAのメンバー5人の表情を見た瞬間から、RYUICHIさんの言葉通り“覚悟の夜”という気合いを感じて、こちらも半端な気持ちでは観られないなと思いながら拝見していました。結果的に……LUNA SEAは常に前回のライブを超えてくるんですけれども、あの日は僕が観てきた中で最ッ高のライブでしたね。過去最高のライブだったと思います。
──感動的でしたよね。一方の布川さんと言えば、コピーバンド“GACHI SEA”のメンバーとして、2022年に日本武道館で開催された「復活祭-A NEW VOICE-」に出演されています(参照:LUNA SEA「復活祭」でRYUICHIが新たな歌声披露、アンコールでGACHI SEAと一夜限りの共演)。
布川 いやあ……そうなんですよ。
たむたむ SLAVEとして、もう究極の夢ですよ! ドラムは真矢さんでしたし。
布川 一生の自慢ですね。日本武道館には「有吉の壁 Break Artist Live'21 BUDOKAN」で立ったことがあったので、正直そこまで緊張しないだろうと思っていたんですよ。でも、現場にLUNA SEAの5人が入った瞬間、かまいたちさんもジョイマンの高木(晋哉)さんも、全員固まりましたね(笑)。僕は普段ネタをやるときも全然緊張しないタイプなのに、「TRUE BLUE」を演奏してる最中は震えが止まらなくて「あれ? ヤバい、手が……!」みたいな状態でした。僕の地元の友達のSLAVEが札幌から観に来ていたんですけど、僕がINORANさんパートのアルペジオを弾いているところがモニタに映ったときにブルッブル震えてるのを見て、「これはもうダメだ」と思ったらしいです(笑)。今まででダントツに緊張しました。
たむたむ お笑い界のモンスターたちが集まっても緊張されるんですね。
布川 緊張したらあんなことになるんだなと思いましたよ。僕はINORANさん役を担当していたので、演奏中にご本人が横に立ってくださったんですけど、もうカッコよすぎて……。ずっと脳内で思い描いていたイメージと変わりなくてびっくりしました。「TRUE BLUE」のときは僕らのお笑いのノリにもちゃんと付き合ってくれて。でも「ROSIER」を演奏し始めたらビシッと締まる感じがすごかったですね。5人のおかげで、こっちまでカッコよくなれているような気がしました。
たむたむ 僕は普通にスタンドで観ていたんですけど、ステージ上で一緒に写真を撮っていましたよね。僕、LUNA SEAと写真撮るのが夢なんですよ! LUNA SEAと写真を撮って家宝にしたい。
布川 来てたんですね! 写真は撮りましたけど、夢のようなことすぎて、正直あんまり覚えていないです(笑)。ミスしたの、バレてなかったですか?
たむたむ 最高でしたよ。皆さんすごくカッコよくて、しっかりLUNA SEAの曲と向き合っていたことが伝わってきました。
布川 INORANさんモデルのギターを買って、練習はかなりしました。でも、本番でベストパフォーマンスができたかというとそうじゃなかったので、やっぱりもう1回やりたいなって全員で言っています。
小学生をも一瞬で撃ち抜いていたLUNA SEA
──そもそも、お二人はどのようにLUNA SEAと出会ったんですか?
たむたむ 小学校6年生のとき、「ミュージックステーション」で河村隆一さんが「I love you」を歌っているのを観たんですよ。当時はLUNA SEAのことをまったく知らなかったから、「なんだ、このカッコいい人は! こんなカッコいい人が世の中にいるの!?」って撃ち抜かれちゃって。そこから僕の人生は変わりました。そのあと、河村隆一さんが、「ふたり」というドラマで演じた“神永智也”名義でシークレットライブをやったことがあったんです。僕の9歳上の兄貴がX JAPANやLUNA SEAが大好きだったんですけど、兄貴がそのライブに応募してくれて。そしたらそれが当たったんですよ! 僕の初ライブは、小学校6年生のときに赤坂BLITZで観た神永智也のライブです。ボクサーの役だから、チケットの開演時間の横にも「ゴング」と書いてあったのを覚えています。
布川 ドラマ、観てたなあ。懐かしい! でも、SLAVEとしてはだいぶトリッキーな始まりですね(笑)。
たむたむ そうですね。赤坂BLITZのステージに、隆一さんが白いジャージっぽい衣装でシャドウボクシングをしながら入ってきたんですけど、それがもうめちゃくちゃカッコよくて! 本当に輝いていたんですよね。今でも鮮明に覚えています。
布川 へえ~!
たむたむ そこからLUNA SEAが活動再開したときに、「えっ、河村隆一さんってバンドのボーカリストだったの!?」とLUNA SEAを知り、さらにハマっていきました。布川さんのLUNA SEAとの出会いは?
布川 出会いとしては僕も小学校4、5年生くらいの頃ですね。6歳上の兄貴がロック好きで、2歳上の兄貴の友達にLUNA SEAをインディーズ時代から追ってるようなファンがいたりして、自然と聴くようになりました。でも、僕はその頃音楽に全然興味がなくて、特にどのアーティストが好きみたいなことはなかったんですよ。そんな中でLUNA SEAの「DESIRE」を聴いたとき、「なんだ、このカッコいい曲は!」と思って、一瞬で撃ち抜かれました。それからほかの曲もどんどん聴き始めて。もちろん河村隆一さんのソロも聴いてましたし、LUNA SEA活動再開後はそれまで以上に皆さんの曲を聴いていましたね。確か活動再開が中学3年頃で、一発目のシングルの「STORM」が発売前にラジオか何かで流れたんですよ。それを友達が録音して、毎日そいつの家で延々と流していたのを覚えています。だから、人生の中で一番聴いた曲は「STORM」じゃないかな(笑)。
LUNA SEAのおかげで今がある
──お二人とも、「なんだ、これは!」という衝撃とともにグッと心をつかまれる瞬間があったんですね。
たむたむ 忘れられない“出逢い”ですね。難しいほうの漢字でお願いします。
布川 (笑)。やっぱり第一印象として、RYUICHIさんの人を惹き付ける力がすごいんだなと感じました。
たむたむ 圧倒的だと思います。
布川 男の子も女の子もカッコいいと思えるカッコよさを身に付けるのってけっこう難しいことだと思うんですけど、LUNA SEAはちゃんと“漢”と書くほうの“漢”っぽさがあるというか。
たむたむ きれいでカッコいいだけじゃなく、熱さや荒々しさもあったりするんですよね。
布川 流行り言葉で言うと、シャバくない。「TRUE BLUE」がノンタイアップで1位を取ったとか、まさにシャバくない代表じゃないですか。僕なんて、とにかくなんでもいいからウケたいと思っちゃうけど(笑)、そんなことはせずに音だけで勝負でしょ? そういう自信がにじみ出てるんでしょうね。
たむたむ ……そんな男になりたかったなあ。当時、俺も河村隆一になるんだ!と思って音楽を始めたんです。ギター、ベース、ピアノも始めて、「バンやろ」(音楽雑誌「BANDやろうぜ」)でバンドメンバーを募集して。
布川 うわ、懐かしい!
たむたむ 今では考えられないけど、メンバー募集のコーナーに普通に住所とか書いてましたよね。今もライブやるときにお願いしてるドラマーは、そこで出会った人なんですよ。本当にLUNA SEAの存在で僕の人生が変わって……いつのまにかモノマネ芸人になってましたけど(笑)。
布川 僕は、芸人を目指して2人目に組んだ相方が高校の同級生なんですけど、そいつもLUNA SEAが大好きで、それで気が合ったからコンビを組んだみたいなところもありました。1人目の相方とは1回ネタ見せに行っただけで解散したから、2人目の相方がいなかったらそのままお笑いからフェードアウトしていた可能性もあるわけですよ。結局半年でいなくなりましたけど(笑)、2人目の期間がちゃんとあったからこそお笑いを続けられたので、LUNA SEAのおかげで今があると言っても過言ではない。
たむたむ おおー。お笑い界はLUNA SEA好きな人が多いですよね。ジャンル問わず人気な理由として、やっぱり楽曲のインパクトが大きいと思います。例えば「ROSIER」の「揺れて揺れて 今心が」っていうあのニュアンスに撃ち抜かれた人はたくさんいるはず。LUNA SEAに詳しくなくても、カラオケで「ROSIER」は歌うという話はよく聞きますからね。
布川 カラオケで「哀しいほど 鮮やかな 花弁の様に」を「花弁なのか」ってライブバージョンで歌ってる人がいると「おっ、知ってるね!」ってなりません?
たむたむ そこを知ってたらSLAVEですよね(笑)。
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たむたむ、LUNA SEA終幕に絶望する