ナタリー PowerPush - THEラブ人間
メジャー1stシングル完成 自主企画「下北沢にて」を語る
今年2011年8月に初の全国流通ミニアルバム「これはもう青春じゃないか」をリリースし、ファンのすそ野を一気に拡大させたTHEラブ人間。その後も精力的なライブ活動を繰り広げてきた彼らが、11月23日にメジャー1stシングル「大人と子供(初夏のテーマ)」を発売する。
淡い恋愛模様を綴ったミドルテンポのタイトル曲は、既にライブでは定番の曲。今回のシングルには、カップリング2曲を含む全3曲入りのCDに、ビデオクリップとライブ映像を全5曲収録した約30分のDVDが付いてくる。
ナタリーでは、注目のシングルリリースに加え、11月27日に下北沢5会場でのライブハウスサーキット型イベント「下北沢にて」を主催するTHEラブ人間を直撃。金田康平(歌手)とツネ・モリサワ(Key)に話を訊いた。
取材・文 / 遠藤敏文 撮影 / 中西求
僕の曲はあなたの曲だ
──メジャー1stシングル「大人と子供(初夏のテーマ)」がいよいよリリースされます。この曲を最初のシングルに選んだ理由は?
金田康平(歌手) 「最初のシングルは『大人と子供』でどうだ?」って言われて、最初は嫌だったんです。2010年の1月にインディーズで一度出していた作品だったんで、このタイミングでシングルを出すんだったら新曲で行きたいって思ってたんですよ。ただ、そのインディーズの音源は既に廃盤で、ライブかYouTubeの映像でしか聴くことができなくなっていて、「音源が手に入らないくせに毎回ライブでやるよね」っていう状態が1年くらいずっとあったんです。そうするとお客さんの頭の中でどんどん曲自体の力が大きくなって、このままこの曲に頼っていたらよくないんだろうなっていう葛藤が出てきて……。
──その葛藤はどうやって解消されたんですか?
金田 どうにかこれを乗り越えたいと思っていた時期に、京都で2回目のライブがあったんです。そこで後ろを振り向いてこの曲のイントロをタンって鳴らしたときに、背中越しからブワって歓声が来て。インディーズ盤は全国流通していなかったから音源も持っていないだろうし、京都には1回しか来ていないからYouTubeでしか観ていないはずだし。にもかかわらずイントロで歓声が上がるっていうのは、なんというかものすごいことだなって思って。そこで改めて「自分たちが作ったけど、自分たちの曲じゃない。それ以上にオーディエンスの曲になってる」っていう感覚になって、これはもう世に出すべきだなと。日頃ライブで「僕の曲はあなたの曲だ」っていうことを言い続けてはいるんですけど、それを目の前でまじまじと見ることができた気がします。
──なるほど。
金田 あとはドラムの服部(ケンジ)が入っての新録バージョンということですね。この曲を1回出していることを取っ払って完全にリスナーとして考えたときに、「ケンジのドラムの『大人と子供』聴きたい?」って自分に問いかけると、「うん、聴きたい」ってなるんです。だからオーディエンスの声とケンジの加入がリリースのきっかけですね。
──ライブのアンケートでも毎回上位の人気曲ですか?
金田 完璧そうですね。ほかの曲をやらないことはいっぱいあるんですけど、「あの曲やらなかったですね」っていうのは「大人と子供」くらいしか言われないんです。多分今「砂男」を外したら言われると思いますけど。
ツネ・モリサワ(Key) 今までのラブ人間にない感じの楽曲になってるのは確かだなって思います。多分金田くん発信の曲じゃなくて、みんなのセッションでできたフレーズにきれいに歌詞がハマった曲だと思うんで、それが大きいのかな。
映画よりもこの生活のほうがドラマチック
──バイオリンやキーボードを交えたバンドアンサンブルも特徴的ですが、ラブ人間の歌詞にはどの曲にも引っかかりのあるフレーズが出てきます。例えば今回のシングル「大人と子供」では「エイトビートでキスして」、カップリングの「レイプ・ミー」では「やっと形に出来たすべてをぶち壊しましょう / ぶち殺しましょう」といった歌詞がそうです。歌詞を書くときに鮮烈なフレーズを盛り込むことを意識しているんですか?
金田 意識していないです。多分これわかってるんですけど、頭でがんばって考えた架空の世界の美しさってあるじゃないですか。それよりも、普通の人間が生きている、こうやってコーヒー飲んだりタバコ吸ったりっていうことのほうがめちゃくちゃドラマチックだっていうことだと思うんです。僕は生活のことしか歌わないんですけど、この生活のほうがよっぽど映画とかドラマとかアニメよりもドラマチックなんですよね。だからこそ僕が書く歌詞は鮮烈だって言われるんだと思います。一生懸命に生きてる人の毎日のほうが美しいですからね。
──リアルな生活を歌っている分、ドロドロした部分も歌詞には表れています。アーティストによってはそこを隠す人もいますが、そうしないのはなぜ?
金田 例えば癌患者の映画を日本で作ります。「癌なんだ、俺」「私がずっと支えてあげる」「永遠の愛、サイコー!」で終わるじゃないですか。じゃなくて、癌になった彼氏を目の前にしたら、そんなにうまくは気持ちを整理できないってことですよね。もっとめちゃくちゃな葛藤があって、「私、この人と付き合っていても1年後に死んじゃうんだな」って絶対思うんですよ。そういう気持ちを歌いたいっていうか、そういう気持ちを踏まえたいです。そうしないとその子のことは歌えないっていう感じです。
CD収録曲
- 大人と子供(初夏のテーマ)
- レイプ・ミー
- 抱きしめて [ライブ音源]
DVD収録内容
- 砂男 [MV]
- 東京 [MV]
- これはもう青春じゃないか [ライブ映像]
- 抱きしめて [ライブ映像]
- 砂男 [ライブ映像]
THEラブ人間 presents 下北沢にて '11
日時:2011年11月27日(日)
会場:CLUB251 / Cave Be / Daisy Bar / MOSAiC / Laguna
料金:前売り2500円+1ドリンク / ライブ会場割引チケット2000円
チケット:チケットぴあ [Pコード: 152-305] / ローソンチケット [Lコード: 74910] / e+(イープラス)
出演者:THEラブ人間 / 壊れかけのテープレコーダーズ / ひらくドア / ソンソン弁当箱 / MOROHA / キングヌラリヒョン / テツコ / チョンマゲブラザーズ / salsa / SUNN / 井乃頭蓄音団 / ガール椿 / SUNDAYS / the ARROWS / バックドロップシンデレラ / マリリンモンローズ / 未完成VS新世界 / ザ・ラヂオカセッツ / thatta / THIS IS PANIC / ANIMA / Sorrys! / ミートザホープス / オワリカラ / The John's Guerrilla / 蜜 / DENSHI JISION / 雨先案内人 / 忘れらんねえよ / らしょうもん / 太平洋不知火楽団 / Jackson vibe / 渡辺シュンスケ(cafelon)with TKC(PLATON)&おかもとえみ(THEラブ人間)/ 東京カランコロン / waffles / テングインベーダーズ / フジロッ久(仮)/ ZZZ's
THEラブ人間(らぶにんげん)
金田康平(歌手)、谷崎航大(Violin)、おかもとえみ(B)、服部ケンジ(Dr)、ツネ・モリサワ(Key)によるロックバンド。2009年1月、金田が中心となり結成され、同年4月に早くも自主制作音源「恋街のすたるじい」を発売。2010年8月には、都市型フェスティバル「SUMMERSONIC」への出演権を賭けたオーディション企画「出れんの!?サマソニ!?」を勝ち抜き、「SUMMER SONIC2010」幕張公演に出演を果たした。また同年9月にツアーファイナルとして下北沢のライブハウス3会場を貸し切り「THEラブ人間決起集会『下北沢にて』」を実施し、成功を収める。
全曲の作詞作曲は金田が担当。リアリティを重視した歌詞と叙情的なサウンドで注目を集める。2011年5月には、インディーズ1stシングル(初全国流通盤)「砂男・東京」をリリース。さらに7月15日に東京・渋谷LUBQUATTROで初のワンマンライブ「THEラブ人間の単独演奏会~はじめてのラブレター~」を開催し、650人の動員を記録した。8月にはビクターエンタテインメントからミニアルバム「これはもう青春じゃないか」でメジャーデビュー。11月にメジャー1stシングル「大人と子供(初夏のテーマ)」を発売し、ライブハウス5会場での自主イベント「下北沢にて」の2回目を開催する。