音楽ナタリー Power Push - THEラブ人間
スピードワゴン小沢と語る2年間の結晶
THEラブ人間が現体制で初めてのフルアルバム「メケメケ」を完成させた。今作にはリードトラック「コント」をはじめとする10曲が収められている。今回音楽ナタリーではTHEラブ人間のファンであり、「コント」のミュージックビデオに出演しているスピードワゴンの小沢一敬を招き、バンドの核である金田康平(歌手)と2014年に加入した坂本遥(G)との座談会を企画。MVの撮影秘話のほか、クラウドファンディングという新たな試みのもと完成した今作でTHEラブ人間が伝えたかったことや、新体制になってからの曲作りの方法など、さまざまな角度から「メケメケ」の魅力を紐解いた。
取材・文 / 清本千尋 撮影 / 後藤壮太郎
撮影協力 / えるえふる
お笑い芸人のまんま俺の音楽に携わってくれてることがうれしかった
──今回は「コント」のミュージックビデオに小沢一敬さんが出演されているということで、鼎談を企画させていただきました。小沢さんはTHEラブ人間のメンバーともともとお知り合いだったんですか?
小沢一敬 まあ、そうですね。Twitterがきっかけなんですけど。
金田康平 俺のところにファンの子が「小沢さんが『これはもう青春じゃないか』って書いてますよ!」って連絡をくれて。で、小沢さんのところにも「THEラブ人間聴くんですね」みたいなリプライがファンから飛んでましたよね。
小沢 うん。僕、Twitterで好きな歌の歌詞をよく書くんですけど、去年の春頃、チュートリアルの徳井(義実)くんとかとバーベキューに行ったときの写真に「これはもう青春じゃないか」って添えてツイートしたんです。僕はTHEラブ人間を「砂男」(2011年発売「恋に似ている」の収録曲)ぐらいからずっと好きで。
坂本遥 俺より昔からTHEラブ人間を知ってるんですよね。
金田 そう。俺はファンの子に言われてびっくりして、小沢さんをすぐにフォローしてDMを送って。なんて送ったかはあんまり覚えてないんだけど、「これはもう青春じゃないか」以降の僕らの曲を聴いてほしかったので、「CDを送りたいです」って言ったら「持ってます」って返事が来て。きっかけはそこですね。あれは確か「きっとずっと彼女は友達」(2015年5月発売)のツアー中だった。
坂本 THEラブ人間のLINEグループで「え、あの小沢さんが!?」って盛り上がったよね。
金田 うん。で、小沢さんをライブにお誘いしたんですけどタイミングが合わなくて。ミュージックビデオに出演していただけることが決まってから、12月くらいに初めてお会いしました。
──小沢さんは金田さんと実際に会って話してみて、どんな人だと思いました?
小沢 もうね、最高だったね。
金田 あはは(笑)。その日はMVの中で小沢さんが言うセリフとかも決めるはずだったんだけど、小沢さんが「今日は仲よくなる会にしよう」って言ってくれて、結局飲んだだけでした。
小沢 だからMVの中のセリフとかも当日決めたんだよね。撮影はすごく楽しかったし、想像していた以上にポンポン進んですごくやりやすかったなあ。
金田 NGは一切なくて、1回目でやったものをよくしていくみたいな感じで進めていきましたね。このMV、実は小沢さんがアドリブでやったところがたくさんあるんですよ。俺がもともと監督の(加藤)マニに相談していたのは「別れ話をしてる男女がいて、その2人が実は漫才師で別れ話のあとに一緒にネタをやる」というアイデアだけ。今もっとも悲しみの最中にいる人が人を笑わせなきゃいけない状況になるっていうのが切ないなと思って。で、俺とかマニだけじゃわからなかったお笑い芸人のベタな動きを小沢さんが教えてくれて、たくさん取り入れました。スピードワゴンでは一切やらないようなことばっかりだったみたいですけど。
小沢 こうやって手をワーッと広げて足を上げたりなんかしたことないし、手を叩いて舞台に出て行ったこともない(笑)。
金田 MVに出てくる「メケメケ」っていうコンビの2人の動きとか仕草は小沢さんのアイデアを採用していて。小沢さん、最初に「早口すぎて口パクできないかも」って言ってたんですよ。で、口パクが成立しないならどうしたらいいかなって考えてたんですけど、本番になったら小沢さんはちゃんとできて。台本を熟読して練習して本番に臨むよりもその場で力を発揮するタイプなんだなと思いました。俺もどっちかというとそういう人間だからそういうところが似てたのがうれしかったですね。あと小沢さんの相方を演じてくれた女優の岩井七世さんもすごくよくて。
小沢 この子はすごく勘がよかったよね。
金田 うん。小沢さんは初対面だったけど、3シーンぐらい撮ったらもうコンビに見えてきて。最初の「どーもー!」って舞台に入ってくるシーンを撮ってるときに俺はスタイリストと一緒に泣いちゃった。小沢さんが小沢さんの職業であるお笑い芸人のまんま俺の音楽に携わってくれてることがうれしくてたまんなくて、なんだか涙腺が緩みましたね。このMVは本当にいろんな人に観てもらいたい。
小沢 観てもらいたいねえ。
──そもそも小沢さんはどういうきっかけでTHEラブ人間の音楽を知ったんですか?
小沢 定期的にレコード屋さんに行ってジャケ買いとかいろいろして新しい音楽を探すことが多いんだけど、THEラブ人間は後輩に教えてもらったんだったかな。定期的に洋邦問わず今一番好きな曲を10曲ぐらいCDにまとめて渡してくれる後輩がいるんですよ。で、1曲目に「砂男」が入ったCDをもらったことがあって。1曲目だから覚えちゃってね。本当にいい歌でさ。
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収録曲
- コント
- クリームソーダ
- GOOD BYE CITY
- じゅんあい
- こいのおわり duet by 柴田ゆう(sympathy)
- ハレルヤ track make by まつきあゆむ
- 幸せのゴミ箱
- 気分を出してもう一度
- FUSHIGI DANCE
- 花嫁の翼
- THEラブ人間 ワンマンツアー
- 2016年3月4日(金)福岡県 Queblick
- 2016年3月5日(土)大阪府 LIVE HOUSE Pangea
- 2016年3月19日(土)北海道 COLONY
- 2016年3月25日(金)宮城県 enn 3rd
- 2016年3月27日(日)愛知県 CLUB ROCK'N'ROLL
- 2016年4月3日(日)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
THEラブ人間(ラブニンゲン)
金田康平(歌手)、谷崎航大(Violin)、さとうまりな(B)、坂本遥(G)、服部ケンジ(Dr)、ツネ・モリサワ(Key)からなる6人組ロックバンド。2009年1月に金田を中心に結成され、同年4月に自主制作音源「恋街のすたるじい」を発売。2011年5月にインディーズ1stシングル「砂男・東京」をリリースし、7月に東京・渋谷CLUB QUATTROにて初ワンマンライブを行った。同年8月にビクターエンタテインメントからミニアルバム「これはもう青春じゃないか」でメジャーデビュー。2012年5月にメジャー1stアルバム「恋に似ている」、2013年4月にメジャー2ndアルバム「SONGS」を発表し、2013年末をもってベーシストのおかもとえみが卒業した。2014年3月にさとうまりなと坂本遥を迎え6名体制に。彼らのお披露目を兼ねた全国ツアーを経て、9月に新体制初のシングル作品「じゅんあい / 幸せのゴミ箱」を自主レーベル「喫茶恋愛至上主義」より発表。2016年2月にクラウドファンディングで資金を集めて完成させたアルバム「メケメケ」をリリース。3月よりワンマンツアーを行い、4月には2度目の渋谷CLUB QUATTRO公演を行う。2010年に始めた下北沢が舞台のサーキットイベント「THEラブ人間決起集会『下北沢にて』」は2015年で第5回を迎え、過去最大規模で大成功に収めた。
小沢一敬(オザワカズヒロ)
1973年10月10日生まれで、出身地は愛知県知多市。1998年12月に井戸田潤とお笑いコンビ・スピードワゴンを結成し、テレビや舞台など多方面で活躍している。2015年に地元・愛知県知多市のふるさと観光大使と「なごやめしPR大使」に就任。著書にTwitterなどでの発言をまとめた「失恋出来るなら恋したってかまわない」がある。スピードワゴンとしては毎月最終月曜日に下北沢にて主催ライブを開催中。