音楽ナタリー Power Push - LITTLE CREATURES

シンプルの美学

聴いたことのない音楽が生まれる場

──皆さんはそれぞれ、いろいろなアーティストのサポートミュージシャンやプロデューサーとして活躍しています。3人でやるときとそうではないときの頭の切り替えは大変じゃないですか?

鈴木 あまり意識しないですね。以前よりも切り替えみたいなのは意識しなくなったかも。3人で集まると、自ずと3人のモードになっていくというか。

青柳 人が何人か集まったときに、そこで出てくる話題ってあるじゃないですか。それって人が変わると変わる。音楽もそんな感じですね。「この3人が楽器を持つと、こういう音楽的なコミュニケーションが発生する」みたいな。

──ひさしぶりにそろうと、発見があったりするのでしょうか?

栗原 今回一緒にやって、「ツボは突くよな」って思いました。青柳が作ってきた曲を聴いて、シンプルな曲ばっかりなんだけど、普通だったらギターがドンッと入ってくるであろうところに絶対に入ってこない……とか。あと、ベースがずっとシンコペーションで裏に入ってくるとか、「3つしか音を出してないけど、これギターソロだよな?」みたいなフレーズとか……そういうセンスってほかの人にはない。ないというか、ある人が少ないというか。やっぱりさすがだなって感じました。

鈴木 僕は最近、この人(栗原)と違うアーティストの現場で一緒になったりするんです。そういうときのほうが、「この人こんなことできんだ」って驚きがあったりしますね。「普通にオーソドックスなやつもうまいんだな」みたいな(笑)。

栗原 この間一緒の現場で、正人がめちゃくちゃテンポの速い曲をウッドベースで弾いていて。「ランニングでずっと突き進めるものなんだな」って感心した。エレべで弾くより全然強烈だった。

──LITTLE CREATURESは、そんな3名の音楽的な実験の場所っていうイメージがあります。

青柳 みんなほかのところでオーソドックスなこともいっぱいやっているしね。だから何か別の新鮮な音楽をやりたくなるんだろうし。そしてこの3人の中ではそれが許されるから。あとはまあ、楽しい時間にしたいというか(笑)。やっぱり新しい音楽とか、聴いたことのない音楽が生まれる場に立ち会いたい……クリーチャーズはそれができるバンドだと思うから。

「まだやってんですね」

──そういえば昨年デビュー25周年を迎えられて。

鈴木 「へー、25年もやってるんだ」って言われた。

青柳 「まだやってんですね」ってのはよく言われるよね。

──それは作品があまり出ないからだと思います。

青柳 露出もしないし、ライブもやらないし(笑)。

鈴木 この間考えたんだけどさ、このペースでやっていくと、たぶんアルバムをあと4枚出すくらいで死んじゃうんだよ。

──いつからこういうペースになったんでしょうかね。きっと最初は野心を持って楽器を手にされたと思うんですけど。

青柳 でも、デビューしてからずっとこんな感じだよね。

鈴木 まあ、売れてないってのはあるかも。売れてないからか、「早く作れ」みたいなプレッシャーもなかったからね。「勝手に作れば」みたいな感じで。

栗原 ちょっと今の寂しくなる(笑)。でもバランスよくやれてきてるよ。

LITTLE CREATURES

──25年、楽しんで続けてこられましたか?

青柳 バンド的にはまあ。

栗原 まあ楽しいですね。

鈴木 アルバムを作るときは毎回新鮮だし。

青柳 うん。きっかけになるお題を考えるのは毎回楽しい。それを2人はどう聴くかなって。面白がりながらそういう発想をするのは楽しい。

栗原 あとここまでやってきて、周りの好きなミュージシャンの人が、クリーチャーズのことを好きでいてくれるのはうれしい。

青柳 あと、クリーチャーズはすごく仕事を選んでいるという印象を持たれているんですけど、そんなに選んでいないっていう(笑)。

鈴木 要するにオファーが来ないってことだよね(笑)。

栗原 俺今普通にパンクバンド(東行&ファッキューヒャッキュー)とかもやっているし。

──忙しそうに見えるから、声がかからないんじゃないですかね。これからもこのペースですか?

青柳 急に作品を出しまくるとかね。「あれっ? どうしたの?」って言われるくらい。

鈴木栗原 あはははははは!(笑)

栗原 出しまくるっての面白いね(笑)。

──9月には全国ツアーが始まりますね。

青柳 そうですね。CDのサウンドよりも、よりフィジカルな感じになると思う。CDとそのままのところと、若干はみ出すところ。その違いのところも楽しんでほしいですね。

──アルバム同様、ツアーも3人のみの編成になるのでしょうか。

青柳 そうですね……ダンサーとかは付けないです(笑)。

ニューアルバム「未知のアルバム」 2016年7月13日発売 / 2700円 / TCCL-001 / CHORDIARY
「未知のアルバム」
Amazon.co.jp
収録曲
  1. 海原
  2. 未知の世界
  3. 夢ならば
  4. 絡めとられて
  5. かんちがい
  6. 声なき者
  7. 月の顔
  8. 嘘の朝
  9. 赤いスカート
  10. 隼飛ぶ
  11. わずかばかり
LITTLE CREATURES「Unknown Tour 2016」

(※決定分)

  • 2016年9月22日(木・祝)東京都 東京グローブ座
  • 2016年9月30日(金)愛知県 Tokuzo
  • 2016年10月1日(土)京都府 磔磔
  • 2016年10月2日(日)大阪府 NOON+CAFE
LITTLE CREATURES(リトルクリーチャーズ)
LITTLE CREATURES

1987年に高校在学中の青柳拓次(Vo, G)、鈴木正人(B, Key)、栗原務(Dr, Perc)が結成。1990年にシングル「THINGS TO HIDE」でデビュー。3人がそれぞれサポートミュージシャン、プロデューサーとして他のアーティストのプロジェクトに関わったり、ソロ作品を発表したりしながら、不定期的にバンド活動を続けている。2000年には自主レーベルCHORDIARYを設立。2010年にはベストアルバム「OMEGA HITS!!!」と、さまざまなアーティストたちがLITTLE CREATURESの楽曲をカバーした「Re:TTLE CREATURES」を発表。2015年はデビュー25周年イヤーと位置付け、東京や沖縄でアニバーサリーライブを実施した。2016年7月に約5年半ぶりのフルアルバム「未知のアルバム」をリリース。9月には約11年ぶりの全国ツアー「Unknown Tour 2016」をスタートさせる。