音楽ナタリー Power Push - LITTLE CREATURES
シンプルの美学
今回のは聴ける
──制作が終わってみて、いかがですか?
鈴木 なんか聴けるというか。僕、自分が関わった音源って、完成したばかりのときにはあまり聴かないんです。でも今回のは聴ける。
──普段は聴かない理由は?
青柳 制作時に聴きすぎているから(笑)。
鈴木 飽きちゃってるっていうね(笑)。時間が経ってから聴いたほうが穏やかに聴ける……それはあるなあ。なんで今回は聴けるんでしょうかね。まあ、青柳のカラーが強いってのもあるかも。
青柳 ああ。カラーはあるけど、あまり我は出ていない感じかな。
鈴木 うん。
栗原 俺はライブ用に練習しなきゃいけないので、終わったあとすげえ聴いています。体に入れないと。
青柳 あと、いい音で録ってもらえたというのはでかい。奥田さんの音がいい。
鈴木 たしかに、その音を楽しんでいるってのはあります。
ミュージシャンとして当たり前のこと
──前作には名嘉真祈子さん(ex. トルネード竜巻、ぱいなっぷるくらぶ)がゲストアーティストとしてクレジットされていましたけど、今作は3人のみで作り上げましたね。
栗原 ライブでそのままできるように作りましたから。アルバムの内容がそのまま3人でライブでできる作品。
青柳 そのへんは多少、現在の音楽シーンへのアンチテーゼ的なところもあると思う。コンピュータに頼ることなく、アルバムをほとんど再現できるという。そういう「ミュージシャンとして当たり前のことをやっているよ」っていうのを表現したいというのが、1つの思いとしてありましたね。
──自分たちで作る際に、ラップトップをいじり倒して作る音楽に面白さはもう感じられないのでしょうか。
青柳 いや、打ち込みの音楽好きですよ。でも作り手にもよるのかもしれませんが、ロジカルに作れてしまうのがつまらないって思うときがあるんですよね。
栗原 でも、もう前にやっちゃってるしね。
青柳 あと、今改めて楽器が楽しい。
栗原 特に楽器奏者の人は、楽器弾きたいなって思うし。
青柳 反応が速いじゃないですか、生楽器同士のほうが。セッションの中でテンポが動いたり盛り上がっていったりっていうのは、やっぱりすごく体を使って遊んでいる感じがします。
──なるほど。先ほど青柳さんが「ロジカルに作れるものがつまらない」とおっしゃったところ、少し詳しく聞かせていただけますか。
青柳 僕は自分の感じていることがよくわからないことがあって、それを整理整頓しながらロジカルに表現すること自体にはあまり興味がないというか。コンピュータを使って音楽を作っていると、どうしても理屈や思考みたいなものに近づいていって、整える方向に向かってしまうことってあると思うんです。それよりも、“アーティスト自身が手に負えないくらいの音楽”が生まれるほうが、僕は楽しいんですね。
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収録曲
- 海原
- 未知の世界
- 夢ならば
- 絡めとられて
- かんちがい
- 声なき者
- 月の顔
- 嘘の朝
- 赤いスカート
- 隼飛ぶ
- わずかばかり
LITTLE CREATURES「Unknown Tour 2016」
(※決定分)
- 2016年9月22日(木・祝)東京都 東京グローブ座
- 2016年9月30日(金)愛知県 Tokuzo
- 2016年10月1日(土)京都府 磔磔
- 2016年10月2日(日)大阪府 NOON+CAFE
LITTLE CREATURES(リトルクリーチャーズ)
1987年に高校在学中の青柳拓次(Vo, G)、鈴木正人(B, Key)、栗原務(Dr, Perc)が結成。1990年にシングル「THINGS TO HIDE」でデビュー。3人がそれぞれサポートミュージシャン、プロデューサーとして他のアーティストのプロジェクトに関わったり、ソロ作品を発表したりしながら、不定期的にバンド活動を続けている。2000年には自主レーベルCHORDIARYを設立。2010年にはベストアルバム「OMEGA HITS!!!」と、さまざまなアーティストたちがLITTLE CREATURESの楽曲をカバーした「Re:TTLE CREATURES」を発表。2015年はデビュー25周年イヤーと位置付け、東京や沖縄でアニバーサリーライブを実施した。2016年7月に約5年半ぶりのフルアルバム「未知のアルバム」をリリース。9月には約11年ぶりの全国ツアー「Unknown Tour 2016」をスタートさせる。