LiSA「明け星 / 白銀」インタビュー|梶浦由記との強力タッグで再び彩るアニメ「『鬼滅の刃』無限列車編」の世界 (3/3)

「LiSAさんはきっと胸ぐらつかむだろうな」

──一方のエンディングテーマの「白銀」ですが、こちらは全体的に明るいムードで未来に向かっていくようなナンバーですね。

「白銀」は梶浦さん色に染まろうというよりは、自分自身のままで向かっていった楽曲ですね。

──等身大の自分で。

そうですね。でも梶浦さんと出会っていろいろ積み重ねてきたうえでのLiSAというか……なんて言うんでしょう。LiSAという鎧を着て、「師匠、また会いましたね」みたいな感じでした。NHKの「SONGS」に出演させてもらったとき、梶浦さんにピアノを弾いていただいて「炎」を歌ったんですよ。そのとき、梶浦さんと将棋を指している気持ちになったんです。

──対局をしているような?

はい。師匠に手合わせをしてもらっている感覚で。そういう礼儀作法というか、自分自身がいつもの戦い方では戦えない、この人の前では少しでも弱みを見せちゃいけないし1つでもミスったら食われる、という気迫をその対局で感じたんです。それを経て「白銀」では、梶浦さんと横並びで戦いに行くような感じでした。

──炭治郎たちが戦っている感じともどこかリンクするかもしれませんね。ちなみに歌詞を読んでいて、「from the edge」と重なるところがいくつかあるなと思いまして。「刃」もそうですが、「僕らは進む」というワードが共通して入っていたり。

そうですね。「刃」という言葉がよく出てきますけど、それは自分の技術であったり、自分が研ぎ澄ませて強くなっていくための武器をイメージして書かれているんだろうなと思いました。「鬼滅の刃」というタイトルを背負う楽曲として書いていらっしゃるんだろうと。「明け星」とは全然違って、ちゃんと次の回に希望を置いて1週間待たせてくれる、梶浦さんの愛情を感じる楽曲だなと思います。あと、梶浦さんはこの曲でも私のことを考えて楽曲を作ってくださったと感じていて。「未来の胸ぐら掴んで捻じ伏せろよ」っていう歌詞については、梶浦さんが「LiSAさんはきっと胸ぐらつかむだろうなと思って」と言ってました(笑)。

──(笑)。確かにあまり梶浦さんっぽくない言葉のチョイスですよね。

そうですよね、梶浦さんは胸ぐらつかまないですよねって(笑)。ちゃんと私が歌うことをイメージして、私になんて歌わせたいかを考えてくださるんです。

──LiSAさんもご自身で詞を書かれますが、梶浦さんの歌詞ですごいと感じる部分はどこでしょうか?

1つの言葉に意味がたくさんあるんですよね。自分自身の歌としても歌うことができますし、アニメと一緒になったときには世界観を壊さず、作品の中では聞こえないキャラクターの声も聞こえてくるような言葉がたくさん詰まっているなと感じます。「明け星」の「車輪(くるま)」っていう表現も、ここで漢字が入ってなかったら「くるま」が何を指すものなのか想像が膨らまないと思うんですよ。

──なるほど。改めて、今回2曲を梶浦さんと制作されてどんな手応えがありましたか?

トラックダウンが終わったとき、2人ですごく感動したんです。「鬼滅の刃」という作品に向けて作った楽曲ですけど、一緒に組んだからできた曲だなって。私自身も梶浦さんとじゃなきゃ表現できなかったことがあったし、梶浦さんも私だから託してくれたサウンドや言葉がここにあって、自分たちが最初に想像していたものを一緒に超えていけたというか。すごくワクワクを共有できた感じがしていますね。

「これ以上のものはない」と思いながら心を燃やし尽くすだけ

──「鬼滅の刃」への思いも伺えればと思います。今回改めて「無限列車編」に捧げる2曲を作って、再び物語に向き合われたと思いますが、キーとなるキャラクターの煉獄さんの魅力とはどこだと思いますか?

やっぱり煉獄さんはすごく誠実でまっすぐな人だと思いました。テレビアニメの「無限列車編」第1話はオリジナルエピソードで、過去に自分の父親が助けた家族を今度は自分が助けるところがすごくよかったです。お父さんの影をちゃんと背負っているんだなと思ったし、あれだけつらいことがあってよくグレなかったなって(笑)。自分の中の正義を貫き続けた煉獄さんの生き様を感じました。

──「鬼滅の刃」とこれだけ濃厚な道のりを一緒に歩んできて、改めてLiSAさんはどのようなものを受け取りましたか?

自分はデビューしてからずっとアニメの世界に関わらせてもらって、「ここにはすごいものがあるぞ」「ここにはすごく大きな愛情がいっぱいあって、だからこそこんなにも人を感動させられるんだぞ」と実感してきたんです。「鬼滅の刃」という作品を通じてアニメというもの自体が広く知ってもらえたり、スタッフの皆さんが命を懸けて作っていることがたくさんの人に作ってもらえたということで、報われたというのか、すごくうれしかったですね。「鬼滅の刃」はアニメが始まる前からたくさんの方の期待を集めていましたし、これを絶対に疎かにしてはいけないというスタッフさんの念入りな愛情と計画があったので、それがちゃんと多くの人に届いたということを見られたのは、本当に幸せな経験でした。

──先ほどは「出し切った」とおっしゃってましたが、今後また「鬼滅の刃」の曲を作る機会があるとしたら、湧き出てきそうですか?

「紅蓮華」を作ったときは「紅蓮華」にすべてを注いでいましたし、作品のすべてを背負うような気持ちでした。「炎」を作るときも「この無限列車編というエピソードの最高のラストを飾るぞ」と思って挑んで、いつも最後のような気持ちで作っているんですけど、新しいエピソードに出会ったら、そこに楽曲を付けるということはすごく楽しいだろうなと思います。今回も梶浦さんに託してもらった曲を聴いて「なるほど、そういう手があったか!」と思ったし(笑)。なので、もし今後も機会をいただけるとしたら、きっとそのたびに「これ以上のものはない」と思いながら挑んでいくでしょうね。

──毎回心を燃やし尽くすわけですね。

はい(笑)。

プロフィール

LiSA(リサ)

6月24日、岐阜県生まれ。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンドGirls Dead Monsterの2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビューを果たす。2014年1月に初の東京・日本武道館ワンマン「LiVE is Smile Always ~今日もいい日だっ~」を行い、翌2015年1月には日本武道館2DAYS「LiVE is Smile Always~PiNK&BLACK~」を成功させた。2019年4月にシングルとしてリリースしたテレビアニメ「鬼滅の刃」のオープニングテーマ「紅蓮華」が大ヒットを記録し、同年末には「NHK紅白歌合戦」に初出場。2020年には映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の主題歌「炎(ほむら)」で「第62回日本レコード大賞」大賞を受賞した。2021年5月、ソロデビュー10周年を記念したミニアルバム「LADYBUG」を発表。その後も9月にはTBS系テレビドラマ「プロミス・シンデレラ」の主題歌「HADASHi NO STEP」、10月には映画「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア」の主題歌「往け」、11月にはテレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編のオープニング / エンディングテーマ「明け星 / 白銀」と立て続けに新曲をリリースした。