音楽ナタリー Power Push - LiSA
総理、地蔵、ポップアイコンが教える 正しい夢の追いかけ方
なりたいものになれなくても誰かが待っていてくれる
──今の話って若い子には特に聞いてもらいたいですね。言ってしまえば、LiSAさんは一番なりたいものにはなれていませんよね?
そうですね。ミュージカル女優にもダンサーにもバンドマンにもなれてない。
──それでも表現することが好きだから、求められるがままに飛び込んだアニソンの世界にちゃんと居場所があった……いや、その世界にはLiSAさんを愛してくれる人たちがビックリするくらいたくさんいた。
だからみんなも将来、もしも一番なりたいものになれなかったとしても、すべてを諦める必要なんて全然ないんだなって思ってます。
──自分の個性……LiSAさんであれば「表現することが好き」「歌がうまい」という個性を大事に育みながら、ワンスアゲインとばかりにまた別の道を模索してみたら、その個性を生かせる場があったわけだから。
そうそう。私の話をするなら「バンドやりたい」って頑なに願ってがんばっていた時期、一生懸命こだわって思い切り駆け抜けたあの頃は間違いじゃなかったとは思ってるんです。それにあの頃の私だったらガルデモとの出会いを「バンドと違って自分が選んだものじゃないじゃん」って思ったかもしれない。ある意味降って湧いたようなチャンスですし。でも誰かに自分が求められるような機会、それに自分が応えられる機会に恵まれたなら、それが一番の願いじゃなかったとしても絶対に引き受けたほうがいい。自分が世界から求めてもらえるってホントに幸せなことだし、なんで自分が求められるのかっていったら、過去の経験があるからなんだから。私ならミュージカルやダンスやバンドの経験があったからから、アニメのスタッフさんに求められて、その求めに応えられたし、LiSAになれたんですよね。
──しかも、その第2志望の世界は当然第1志望に劣るものでは……。
全っ然なくて。第1志望の世界を経験してないから断言はできないけど、もしかしたらその世界以上に楽しいかもしれないんですよね。実際、私は今、スゲー楽しいわけですし。
「hate」は歌うが4レターワードは歌わない
──そしてカップリング1曲目は「AxxxiS」。サウンドのトーンやマナー、それから先ほども触れた通り歌詞のテーマは「Brave~」と近しいですよね。
そうですね。
──「“前ならえ”に抵抗しだした僕らは一人じゃない」。まさに自分とLiSAッ子たちという“僕ら”が、誰かに倣うわけではない唯一無二の確信を得たことを歌っている。
私のルーツにはパンクがあるけど、私にとってのパンクって誰かを攻撃するものではなくて、その攻撃的な音でみんなを巻き込んでいくものなんですよね。
──ただ「束になって 立ち上がって 理不尽相手の徹底抗戦へ」とも歌ってますよね。
でもやることは「抗戦」だけです。「hate」とは歌うけど、「f」から始まる4文字は絶対に歌わないのに近いというか。私はパンクロッカーでありたいと思うと同時にポップアイコンでもありたいし、そんな私ができる反骨は誰かの決め付けや偏見にはっきりと「No!」と言うことなんだろうなって思ってます。
──「No!」の対象はLiSAさんを取り巻く状況についてだけ? 特にSNSが普及してからというもの、誰かが強い言葉を発すると、それこそ「前ならえ」的にみんなの空気がそちらの方向に流されていくことがままありますよね。個人的にはそのムードに「No!」と言う、ある種現代的な詞なのかな?という気もしました。
私自身は作詞の古屋さんに「“私”は理不尽には徹底抗戦するし、そうすればみんなと楽しい未来を作っていけるって確信している」ということしか伝えてないんですけど、古屋さんはそういう社会的な空気も汲んで詞を書いたのかもしれないですね。古屋さんは田淵さんと一緒で、ある意味ファン目線で客観的にLiSAという存在を見てくれている方ですから。「LiSAにはこういうものと戦っていてほしい」「こういう言葉を歌ってほしい」っていう理想の姿があるはずだし、その私が戦うべきものの1つに今の時代があると思ってるのかもしれない。実際、古屋さんは私によく言うんですよ。「テレビで観たよ」「テレビの中のLiSAって自分のやるべきことや、オレのやってほしいことをちゃんとやってくれるから『よし、よし』って思うんだよね」って。
──テレビという社会的に影響力の強いメディアの中でLiSAさんがLiSAさんらしく振る舞うことを願っているし、それをうれしく思っている、と。
そういう感じなんだと思います。
“総理”であり、“主人公”であり、“地蔵”であり
──田淵さんや古屋さん、それからLiSAッ子たちはなんでLiSAさんに願いを託すんでしょう? なぜ「LiSAなら僕たち、私たちの希望に応えてくれる」と信じたくなるのか?
なんでなんでしょうね。でも言われると確かに「私って総理みたいだな」っていう気はします。
──総理?
同じ考えや政策のもと集まった与党の人たちの中から「我々の意見をこの人に代表して発してもらうのが効果的だ」ということで選ばれたのが総理大臣なわけですよね?
──それも総理大臣の担う大きな側面の1つですよね。
だから私も「たとえオレの考えであっても、この女に伝えさせたほうがポップに届けられる」と思われてるんだろうなって。映画の主人公と言ってもいいかもしれない。映画のテーマは監督や脚本家のものだけど、それを代弁するのは映画の主人公である、みたいな感じ。
──それってまさにポップアイコンですよね。みんなの願いや希望を世の中に広く表象してみせる存在。
またはお地蔵さん(笑)。
──確かに誰かに願いを託されるアイコンという意味では同じだ(笑)。
私、昔お世話になったバイト先の人とか、実家の近所の人から、なぜかいまだにかわいがられるんですよ。岐阜の実家に帰ると、近所のおばちゃんが「リンゴ持ってきや」ってお供えするみたいに渡してくれることがしょっちゅうあって。そんなに私、物欲しそうにしてるかな?ってくらい(笑)。
──あはははは(笑)。
物欲しそうにはしてないと思うんだよなあ……。それでも声をかけたくなる、願いを託してみたくなる存在だと思ってもらえているなら、それはすごく幸せなことですね。しかも私はお地蔵さんと違ってみんなの願いを叶えるだけじゃない。私に希望を託してくれる人、例えば古屋さんや作曲のebaくんや編曲の江口(亮)さんに「○○って感じの曲を歌いたいんですよね」って話せば、みんなが力を貸してくれて、カッコいい曲を作ってくれる。この関係ってすごくいいなと思っています。
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- ニューシングル「Brave Freak Out」 / 2016年8月24日発売 / アニプレックス
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1728円 / SVWC-70181~2
- 期間生産限定盤 [CD+DVD] 1728円 / SVWC-70183~4
- 通常盤 [CD] 1296円 / SVWC-70185
初回限定盤・通常盤CD収録曲
- Brave Freak Out
- AxxxiS
- ツヨガリ・ファンファーレ
- Brave Freak Out -Instrumental-
期間生産限定盤CD収録曲
- Brave Freak Out
- AxxxiS
- シャッフル
- Brave Freak Out -TV ver.-
初回限定盤DVD収録内容
- 「Brave Freak Out」ミュージッククリップ
期間生産限定盤DVD収録内容
- TVアニメ「クオリディア・コード」ノンクレジットオープニング映像
LiSA「LiVE is Smile Always~NEVER ENDiNG GLORY~」
the Sun
2016年11月26日(土)神奈川県 横浜アリーナ
OPEN 16:00 / START 17:00
the Moon
2016年11月27日(日)神奈川県 横浜アリーナ
OPEN 15:00 / START 16:00
LiSA(リサ)
6月24日、岐阜県生まれのボーカリスト。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビュー後はアニメ「Fate/Zero」のオープニングテーマ「oath sign」、「ソードアート・オンライン」のオープニングテーマ「crossing field」などスマッシュヒットを連発。2013年にはシングル「best day, best way」がノンタイアップながらオリコン週間シングルランキング6位を記録し、また10月に発表したアルバム「LANDSPACE」がオリコン週間アルバムランキング2位をマークし、アニソンシーン内外で高い人気を誇る存在となる。2014年末には「COUNTDOWN JAPAN 14/15」に、2015年夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」や「氣志團万博」にも出演するなどさらに活動の幅を広げている。デビュー5周年となる2016年4月にはミニアルバム「LUCKY Hi FiVE!」をリリース。さらに6月にはこの5年間で発表してきたミュージックビデオをまとめたDVD / Blu-ray「LiSA MUSiC ViDEO CLiPS 2011-2015」を発表した。そして8月には6年目の幕開けを飾るシングル「Brave Freak Out」を発表し、また11月にはキャリア最大キャパシティとなる神奈川・横浜アリーナで2DAYSライブ「LiVE is Smile Always~NEVER ENDiNG GLORY~」を開催する。