音楽ナタリー PowerPush - LiSA

揺るぎない確信と“PiNK & BLACK”を手に ネクストステージにぶっ放す快作「Launcher」

LiSAですらない「エル・アイ・エス・エー」という存在

──お話を聞くぶんに「LiSA」は個人の固有名詞ではない。もっと広範な何かを指す名詞になっている感じなんですね。

1月11日、東京・日本武道館でのLiSA「LiVE is Smile Always~PiNK&BLACK~ ちょこドーナツ」公演の様子。

確かにLiSAはLiSAだけのものじゃないですね。なんて言うんだろう? もはや本名の私でも、シンガーのLiSAでもない。もっと抽象的な「エル・アイ・エス・エー」っていう合言葉みたいなものというか、その合言葉のもとにみんなが集まってくれてはじめてLiSAという存在が作られているというか……。

──田淵さん、古屋さん、ebaさん、カヨコさんをはじめとしたクリエイター陣やレーベル、プロダクションのスタッフも含めた存在がLiSA?

もっと広い存在、LiSAッ子(ファン)も含めた存在がLiSAなんだと思ってます。みんな、ただ「エル・アイ・エス・エー」の合言葉のもとに集まってLiSAの描く物語を体験するだけじゃない。私にいろいろなことを気付かせてくれる存在でもあるわけですから。去年武道館で悔しい思いをしながらも「前に進もう」と思えたのは応援してくれるみんながいたからだし、「アコガレ望遠鏡」が生まれたのも「修学旅行」での出会いがあったからですし。みんながいてくれないとLiSAはきっと今ここにいられなかったはずなんですよね。

じんと作った俯瞰的で意地悪で面白い曲

──アルバム中盤以降の“BLACK”サイドは、当然前半戦以上にタフ。「イキった態度でぼやく」「もう、キレイゴトに 興味なんてない」と歌う「L.Miranic」を起点に、その「L.Miranic」以上にハードなことを歌っています。

「L.Miranic」をリリースしたときは、ちょっとおっかなビックリではあったんですけどね(笑)。この詞を私が書いたことに驚く人もいるんじゃないかな?って。でもあの詞の世界に共感してくれる人が意外なくらいいっぱいいて。それに味を占めた結果、“BLACK”サイドがこうなってしまったというか……(笑)。

──あはははは(笑)。「みんなが共感してくれるなら」とばかりに、じんさん作編曲のギターロック「ANTIHERO」で攻めに攻めた詞を書いてみた、と。

あっ、やっぱり「ANTIHERO」が攻めてることってバレてます?(笑)

──そりゃバレますって! ネット音楽を中心に活動していたじんさんの曲に乗せて、ネット界隈での有名人とその取り巻きのありように疑問を呈する……というか、明らかにカウンターを当てにいってるんだから(笑)。

1月11日、東京・日本武道館でのLiSA「LiVE is Smile Always~PiNK&BLACK~ ちょこドーナツ」公演の様子。

あはははは(笑)。これこそがさっきの反対。「私が一番おいしく調理できるはず」ってことで書いた詞なんです。まず、私がこれまでじんくんの楽曲やライブにゲストで呼んでもらっていたから(参照:じん、9人のVoと魅せたメカクシティライブ)、今回は私の作品に参加してもらいたくて。ただ、じんくんに詞まで書いてもらうと、じんくんの曲になってしまうから「じゃあLiSAが紡ぐべき言葉ってなんだろう?」って考えて。結果出てきたのが、このとてもとても悪い歌詞なんです(笑)。

──じんさんの楽曲でネットに対して「?」を突きつける皮肉の効かせ方は、まさに第2章ならではの手つきですよね。

確かに、自分の中の悪い感情も認められるようになった今だから書けた詞ですね。主人公はネットで起きていることをただDISってるわけではないですし。ネットでの誰かの発言についてイヤだなって思う自分の存在も認めているし、過剰な賞賛や悪口をネットに吐き出したくなる気持ちも理解していますし。あと、それがあまりホメられたことではないことも(笑)。その全部を俯瞰した上で、意地悪で、しかも面白い詞を書けたなって思ってます。

「エレクトリリカル」が狙う不意打ち感

──「Launcher」が一筋縄ではいかないのが、全体が単に“PiNK”と“BLACK”の2色に塗り分けられているわけではない。2色がマーブル状になってますよね。「Bad Sweet Trap」まで“BLACK”サイドが続いたかと思ったら、突如“PiNK”サイドの1曲、やたらとポップで楽しげなチップチューン仕立てのパンクナンバー「エレクトリリカル」が飛び込んできたり。

そういうことを突然やっちゃえるのがLiSAらしさなんです(笑)。もしこの曲を今年の武道館でやることになっていたら、たぶんそれはあのドーナとナッツが出てくるダンスパートのはずで……。

──確かに。武道館では「もう2度と踊らない」ってボヤいていたけど、今後この曲をプレイすることになったら、また踊るんだろうなっていう気がします(笑)。

1月11日、東京・日本武道館でのLiSA「LiVE is Smile Always~PiNK&BLACK~ ちょこドーナツ」公演の様子。

ホントに大変だったから、できればもう踊りたくないんですけど(笑)、でも「エレクトリリカル」で狙ったのは、あのダンスパートと同じ不意打ち感ではあるんです。突然着ぐるみが出てきて、みんな一瞬ポカーンってなった、あの感じ。「Bad Sweet Trap」までの私はロックモード。かなりキツめの本音をバーンとカッコよく歌った直後に「なーんちゃって」と言ってしまう。いきなりゲームの世界のことを楽しく歌い出したら、LiSAッ子のみんなはきっと「LiSAっぽいな」って笑ってくれると思ったし、このアルバムで初めて私のサウンドに触れる人は「あっ、LiSAってこういうヤツなんだ」ってわかってくれるんじゃないかなって思って。

ニューアルバム「Launcher」2015年3月4日発売 / アニプレックス
「Launcher」
初回限定盤 [CD+Blu-ray] 4860円 / SVWC-70056~7 / Amazon.co.jp
初回限定盤 [CD+DVD] 4104円 / SVWC-70058~9 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 3240円 / SVWC-70060 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. Mr.Launcher
  2. Rising Hope
  3. rapid life シンドローム
  4. アコガレ望遠鏡
  5. BRiGHT FLiGHT
  6. L.Miranic
  7. FRAGILE VAMPIRE
  8. ANTIHERO
  9. Bad Sweet Trap
  10. エレクトリリカル
  11. 君にピエロ
  12. No More Time Machine
  13. シルシ
初回限定盤Blu-ray / DVD収録内容
  • 「LiVE is Smile Always~LiSAMMERLAND~」
    1. OP映像
    2. crossing field
    3. コズミックジェットコースター
    4. ミライカゼ
    5. say my nameの片想い
    6. 覚醒屋
    7. 僕の言葉で
    8. traumerei
    9. DOCTOR
    10. シロイトイキ
    11. いつかの手紙
    12. アシアトコンパス
    13. EGOiSTiC SHOOTER
    14. ROCK-mode
    15. WiLD CANDY
    16. Rising Hope
    17. 逆光オーケストラ
    18. BRiGHT FLiGHT
    19. best day, best way
  • No More Time Machine -MUSIC CLIP-
LiSA(リサ)

LiSA6月24日、岐阜県生まれのボーカリスト。学生時代よりバンド活動を始め、2008年に活動の拠点を東京に移す。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビューを果たす。以降、アニメ「Fate/Zero」のオープニングテーマ「oath sign」や、アニメ「ソードアート・オンライン」のオープニングテーマ「crossing field」などスマッシュヒットを連発。また2013年にはシングル「best day, best way」がオリコン週間シングルランキング6位を記録し、アニソンシーン内外で高い人気を誇る存在に。そして2014年1月3日には初の東京・日本武道館公演を開催し、同5月リリースのシングル「Rising Hope」(アニメ「魔法科高校の劣等生」オープニングテーマ)はオリコン週間シングルランキングで4位をマーク。2014年12月にアニメ「ソードアート・オンライン II」《マザーズ・ロザリオ》編のエンディングテーマ「シルシ」をシングルとしてリリースした。2015年1月には東京・日本武道館で2DAYSにわたるワンマンライブ「LiVE is Smile Always~PiNK&BLACK~」を開催し、3月にはその武道館公演で披露した「Mr.Launcher」を含む3rdアルバム「Launcher」をリリースした。