ナタリー PowerPush - LiSA
“みんな”と見つけた私の“景色”
“景色”の最後が“曲がりくねった”ワケ
──ラストナンバーはLiSAさん作詞作曲の「winding road」。これ、けっこうな問題作ですよね。
なんでっ!?(笑)
──「Canvas boy × Palette girl」から「逆光オーケストラ」に至るまで、アニメのテーマ曲であるシングル曲を除くすべての曲で「山も谷も私の景色。私はその景色の中を猛スピードでストレートに、かつタフに突き進んで行くんだ」って宣言しているのかなって思ったんです。
まさにそういう感じですね。
──なのに、なぜこのアルバムを締めくくる1曲が「winding road」=曲がりくねった道なのかな?って気になって。
確かに山あり谷ありの私の日常、その全部を「ひとつの景色なんだぜ」って客観的に見渡せるようにはなったんですけど、だからってすべてを飲み込めるようになったわけではないですから。というのも、半年くらい前、身近な大切な人と2度と会えなくなるっていうことを生まれて初めて経験して。それからずっと「伝えていないこと、言えてないことはいっぱいあるのになあ」って後悔してるんだけど、その人が生き返ることはもちろんないから、その後悔や悲しみはいつまでも残り続けるんですよね。
──時とともに多少薄れはするだろうけど、なくなりはしないでしょうね。
でも、そういう思いをしていたって現実は回っていくし、私は歌い続けなければならない。それなら悲しいままでもいいから新しく1歩を踏み出してみれば、また「Canvas boy × Palette girl」みたいな明日が待っていてくれるんじゃないかな、って思ったんです。だから「winding road」っていう曲を作ったし、最後の曲にしたんです。この曲だけを聴いてほしくないから。それまでの11曲を聴いた上で聴いてもらったり、「winding road」のあとにまた「Canvas boy × Palette girl」をリピートしてもらったりしたとき、初めてこの曲の意味がちゃんと伝わると思ったので。
“みんな”を手土産にホームタウンで胸を張る
──アルバムリリース後、来年1月3日には武道館公演があるわけですけど、その直前、12月14日の地元岐阜での凱旋ライブも実はLiSAさんにとっては重要なステージになるんじゃないかな?っていう気がするんですけど……。
まさにまさに。岐阜を飛び出してきて以来、私自身は自分がカッコいいと思えるもの、最高だと思えるもの、パンクやロックをやり続けてきたつもりなんですけど、地元の友達や当時対バンしていた人たちの中には「アイツ、何やってんの?」って思ってる人もいると思うんですよ。テレビや雑誌やネットでの私を見て「なんかアイドルみたいなことやってんね」って思ってる人もいっぱいいるだろうし。でも今までの私には、その人たちに対して「カッコいいことをやってるんだよ」っていう自信もなかったし、そのことを証明できる材料や武器もなくて……。
──今の口ぶりだと地元に対して愛憎相半ばというか……。
もうヘイトだらけでした(笑)。9割くらいはヘイトかも。
──あはははは(笑)。武道館ライブという大一番の直前に、そのヘイトに決着を付けに行っちゃうあたり、やっぱりガールズパンク怪獣ですよ。
今の私にはその武道館で待っててくれる、すっごいたくさんの人たちがいる。今ならその“みんな”っていう名前のおみやげを手に「ただいま!」って胸を張って帰れるかなって(笑)。ただ決着をつけるっていうほど肩に力が入っているわけでもないんですよ。みんなと一緒に「LANDSPACE」っていう居場所を作れたおかげで、今、私の中にあった9割のヘイトの感情がだんだんラブに変わってきている。だから帰れる。そんな感じですね。
今の私なら「今日もいい日」に絶対できる
──その年明けの武道館はどんなライブにしましょう?
私がずっとキャッチフレーズのように使っている「今日もいい日だっ」っていう言葉をサブタイトルに付けている通り、今までの集大成。私のキャリアの中でも一番オイシイところだけをいっぱい詰め込んだパーティを作ろうと思ってます。ある意味、岐阜のライブと同じなんですけど「今までみんなと一緒に作り上げてきたものは間違ってなかったんだよ」って証明したいから、これまでやってきたライブをそのまんま武道館に持っていくつもりで。武道館だからってドレッシーにしたりするつもりはなくて、衣装もいつもと同じ。
──ボーリングシャツにマーチンの8ホールで。しかもちょっとエロくて(笑)。
でも空を飛ぶみたいな演出はなく(笑)。大きな会場だし、そういう大掛かりな演出の力を使ったほうがいいのかもしれない。うしろのほうのお客さんにもよりしっかり伝えたいことが伝わるのかもしれないんですけど、それをやっちゃうと、私とみんながこれまで思い描いてきたスゲー楽しいLiSAのライブのイメージを裏切っちゃう気がして。それならこれまでみんなと一緒にやってきたのと同じやり方でやってみたいんです。
──その方法でも1万人と一緒に「今日もいい日だ」と言い切れるライブにする自信は?
もちろんあります! 「今の私なら大丈夫だろうな」って信じてます(笑)。
- ニューアルバム「LANDSPACE」 / 2013年10月30日発売 / アニプレックス
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray+DVD] 4200円 / SVWC-7961~3
- 通常盤 [CD] 3150円 / SVWC-7964
収録曲
- Canvas boy × Palette girl
[作詞:古屋真 / 作曲:黒須克彦 / 編曲:akkin] - コズミックジェットコースター
[作詞:LiSA / 作曲:黒須克彦 / 編曲:黒須克彦] - crossing field
[作詞:渡辺翔 / 作曲:渡辺翔 / 編曲:とく] - DOCTOR
[作詞:LiSA / 作曲:カヨコ / 編曲:堀江晶太] - 僕の言葉で
[作詞:LiSA / 作曲:黒須克彦 / 編曲:黒須克彦・星野孝文] - best day, best way
[作詞:田淵智也 / 作曲:田淵智也 / 編曲:akkin] - ヒトリワラッテ
[作詞:wowaka / 作曲:wowaka / 編曲:wowaka] - say my nameの片想い
[作詞:LiSA・田淵智也 / 作曲:田淵智也 / 編曲:akkin] - うそつきの涙
[作詞:古屋真 / 作曲:清水葉子 / 編曲:akkin] - 逆光オーケストラ
[作詞:古屋真 / 作曲:磯崎健史 / 編曲:堀江晶太] - traumerei
[作詞:HIDEO NEKOTA / 作曲:HIDEO NEKOTA / 編曲:akkin] - winding road
[作詞:LiSA / 作曲:LiSA / 編曲:akkin]
初回限定盤Blu-ray / DVD収録内容
シングル曲「oath sign」「crossing field」「best day, best way」「traumerei」のビデオクリップ / メイキング映像 / CMスポット収録。
LiSA(りさ)
6月24日生まれ、岐阜県出身。学生時代よりバンド活動を始め、2008年に活動の拠点を東京に移す。2010年春にはテレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。Girls Dead Monsterでの活動が好評を博し、2011年4月にはLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビューを果たす。同11月にリリースしたアニメ「Fate/Zero」のオープニングテーマ「oath sign」と、アニメ「ソードアート・オンライン」のオープニング曲となった2012年8月のシングル「crossing field」はともにオリコン週間シングルランキング5位に輝く。その一方で2011年末に東京・日本武道館で開催された「リスアニ!LIVE 2011」でヘッドライナーを務め、2012年4月には2月リリースの1stフルアルバム「LOVER"S"MiLE」を携え、東京・日比谷野外大音楽堂でワンマンライブを開催。2010年にGirls Dead Monsterとして出演して以来、毎年「Animelo Summer Live」に招へいされるなど、そのステージパフォーマンスにも評価が集まっている。2013年には「best day, best way」「traumerei」(※「a」はウムラウト記号付きが正式表記となる)という2枚のシングルをリリースし、10月には2ndフルアルバム「LANDSPACE」を発表した。