LACCO TOWERインタビュー|ベスト盤でたどる20年の歩み「回り道したことさえもよかった」 (2/2)

過去を継承しつつ、新しいLACCO TOWERの道を示す

──ベストアルバム「絶好」のDISC 3、DISC 4では、バンドとしての個性を見出そうとしていたインディーズ時代の軌跡を確認することができます。しかも今回は真一さん加入前、2006年に発表された「雨」「紫陽花」という2曲も収録されていて。

松川 改めて聴くと、やっぱり雰囲気がまったく違いますよね。

塩﨑 そうだね。ただ、今となってはもちろん昔の曲も好きと言えるので、今回はそこもちゃんと収録しようと。

塩﨑啓示(B)

塩﨑啓示(B)

細川 基本はすべてのアルバムからまんべんなく楽曲を選んでいくことをコンセプトにしていたしね。そのときどきの核となる曲をしっかり選んでパッケージしていきました。

塩﨑 インディーズ時代は、自分たちにやれることはこれしかないだろうという気持ちを持って、とにかくカッコいい曲を作ってライブしまくってたんですよ。年間100本のライブをするとか当たり前だったから、本当に時間のない中、曲を作り続けていた。だからこそすべての曲に対して、思い入れは相当強いですね。

──2013年には2代目ギタリストが脱退、細川さんが新メンバーとして加入されました。今回のベストでは「藍染」「斜陽」「後夜」「未来」の4曲がリレコーディングされていますが、これらはすべて細川さん加入前の楽曲。それを今の5人でアップデートしたことに大きな意味があるのではないかと思いますがいかがでしょう?

細川 そうですね。なのでリレコーディングに関しては僕が一番時間をかけさせてもらったと思います。個人的には初代、2代目ギタリストのことは尊敬しているし、ギタープレイ自体もすごく好きなんですよ。当然、当時の音源を愛してくれていた人もいるわけなので、思いきりガラッとフレーズを変えるのは違うなという気持ちはありました。とは言え、やっぱり僕なりの色も出したいところはあったので、そのバランスをかなり考えましたね。過去のいい部分は継承しつつ、しっかりと新しいLACCO TOWERの道を示すことができるように。

──ほかの皆さんはどんな思いでリレコーディングに臨みましたか?

重田 どれもライブで育ててきた曲なので、ライブ感を出しながら自由に演奏させてもらった感じですね。ライブで培ったフレーズも当然盛り込まれているし、大介が新しいアレンジでギターを弾いてくれたところもあったから、楽曲としてさらにパワーアップさせることができたんじゃないかな。

重田雅俊(Dr)

重田雅俊(Dr)

真一 基本はライブさながらな感じでレコーディングしたんですよ。特にボーカルなんてほぼ一発録りくらいな感じでしたからね。大介のギターが入ったことも含め、あらためて“The LACCO TOWER”なサウンドに仕上がっていると思います。

──松川さんは過去の曲を歌い直してみて何か感じたことはありました?

松川 いい意味で「当時の歌は元気だったなー」って思いますね(笑)。当時は「どうだ、これが俺らだ。とにかく聴け」みたいな感情が強かったと思うんですけど、今はまたバンドとしてのベクトルが違ってきている部分もあって。なので、今回は今の自分にできる元気さを出した感じですね。真一が言いましたけど、どの曲もほぼ一発で、今の僕をしっかり詰め込むことができました。「ちょっと歳を重ねてこうなったけど、これもいいでしょ?」という感覚ですね。

──今回のベストを聴いていると、時間の流れの中で変化していく声色や表現を感じられます。そこも大きな聴きどころだなと。

松川 年を重ねることでなくすものもたくさんあるとは思うんですけど、僕はそこに執着するのではなく、常に得たものを全面的に見せていこうという感覚で歌ってきたんです。なので、それによって生まれる変化をアルバム全編にわたって楽しんでもらえたらうれしいですね。

松川ケイスケ(Vo)

松川ケイスケ(Vo)

俺、天才だなって思いました

──そして、2016年にLACCO TOWERはメジャーデビューしました。そこからの約5年分の軌跡はアルバムのDISC 1、DISC 2に収められています。

細川 LACCO TOWERはある意味、インディーズ時代にベテランになってるんですよ(笑)。だからメジャーに移籍するうえで思っていたのは、「『インディーズ時代のほうがよかった』とは絶対に言わせない」ということだったんです。そんな気合いを持って走って来たメジャーでの約5年は、インディーズの15年にしっかり張り合えるものになったと思います。今回改めてメジャーで発表した曲たちを聴き返しても、「インディーズ時代と変わらずいい曲書けてんな!」と思えたので、バンドとして大きな自信にもなりましたね。

真一 数で言ったらメジャーで作った曲のほうが多いですからね。よくこれだけの曲を作ってこれたなって、バンドとしての才能を素直に実感するところもありました。

真一ジェット(Key)

真一ジェット(Key)

細川 うん。DISC 1、DISC 2は僕らの意地を感じる誇り高い2枚だよね。

──さらに「魔法」「棘」「非公認」という新曲を収録することで、未来に向けた最新のLACCO TOWERをしっかり見せてくれているのも素晴らしいと思います。

細川 こうやってベストを出させていただいたうえで、僕らは今、新曲が一番好きなんですよ。

松川 そうだね。僕も新曲が一番いいと思ってます。バンドがそういう状態でいられるのってすごくうれしいことですよね。

──「魔法」はちょっと新しい表情を感じさせてくれる仕上がりですね。

重田 そうですね。ありそうでなかった展開というか、楽器隊としてはけっこうチャレンジな部分が多かったと思います。バンドとしての可能性がここからまた広がっていきそうな予感がするというか。

松川 歌詞に関しては、タイトルから決めて書いていきました。人生って、夢や希望にあふれた魔法のような時間とそれがどんどん溶けていく瞬間、その両方を抱えて生きていくもの。人間は溶けてなくなってしまったものばかりを愛おしく感じることが多いけど、でも溶けずに残っているものにちゃんと気が付くことも大事だなと思うんですよね。そんな思いで書いていきました。今の年齢になったから書けた歌詞かもしれません。

──「棘」はMVも公開されていて、とにかく激しくてカッコいい1曲ですね。

真一 この曲がLACCO TOWERにとっての最新曲なんですけど、やっぱり一番カッコいいですね。最初から最後までカッコいい流れを目指す中で、普段とは違うAメロ→Bメロ→Cメロ→サビという構成を思いついた瞬間……「俺、天才だな」って思いました。

塩﨑 ナタリーさんでお馴染みの天才発言、今回は出るまで長かったな(笑)。最新曲にして一番カッコいいというのはもちろんなんですけど、一番チャレンジをした曲でもあるんですよ。ベースに関しては、こんなに高速な指弾きをしたのはたぶん初めて。気合い入れまくって録りましたね。マイクに入らないくらいの声で「おりゃ!」とか言ったりしながら(笑)。

松川 歌詞はあえて中二病くさい内容にしました。マンガの「カイジ」(「賭博黙示録 カイジ」)を読んでたタイミングでもあったので、“ピンゾロ”という言葉を使いつつ(笑)。

──そして「非公認」は、松川さんのささやくようなタイトルコールで幕を開けます。

細川 ケイスケのささやきで始まったらグッと心を持ってかれるんじゃないかなと思って、急遽お願いしたんですよ。新鮮な感じになったので、入れてもらってよかった。

細川大介(G)

細川大介(G)

松川 ああいうささやきは歌とは違うからちょっと緊張しますよね(笑)。この曲は、これまでずっと応援歌を作らせてもらっていたJリーグチームに向けたものなんですよ。いろんな事情があって公式でのサポートは終わってしまったんですけど、僕らは今でも純粋にチームを応援しているし、真一や啓示はスタジアムにもよく行ってますからね。頼まれてなくても応援歌を歌ってもいいんじゃないかと。公認じゃないなら「非公認」でいいじゃん、ってことですね(笑)。

重田 そのチームのサポーターの方たちの中で、俺らの存在がけっこう根付いている感覚もあるんですよ。高校の吹奏楽部がLACCO TOWERの曲を演奏してくれたこともあったし。そういうのはやっぱうれしいですからね。引き続き応援してもいいよねっていう。

──本作を経て、この先のLACCO TOWERがどんな活動を見せてくれるのかがより楽しみになりました。今後も期待しています。

松川 またこうやっていろんな話をさせていただく機会をいただけるように、しっかりがんばっていこうと思います。

真一 天才は止まらないから、大丈夫ですよ!

塩﨑 最後にしっかり放り込んだな(笑)。

LACCO TOWER

LACCO TOWER

イベント情報

LACCO TOWER「絶好」発売記念インストアイベント

  • 2022年12月7日(水)東京都 タワーレコード新宿店
  • 2022年12月10日(土)群馬県 タワーレコード高崎オーパ店
  • 2022年12月11日(日)大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店

プロフィール

LACCO TOWER(ラッコタワー)

松川ケイスケ(Vo)、塩﨑啓示(B)、重田雅俊(Dr)、真一ジェット(Key)、細川大介(G)からなる2002年結成のロックバンド。“狂想演奏家”を名乗り、結成当初より楽曲タイトルはすべて「日本語ひとつの言葉」にこだわり続けている。ロック、パンク、ポップス、歌謡曲など特定のジャンルにカテゴライズされない、ソウルフルかつエモーショナルなサウンドが魅力。その叙情的な世界観とは裏腹に、攻撃的なライブパフォーマンスも人気を集めている。2013年にメンバーで「株式会社アイロックス」を設立し、自身主催のフェス「I ROCKS」を2014年から地元・群馬県の群馬音楽センターにて開催。2015年6月にフルアルバム「非幸福論」で日本コロムビア内レーベル・TRIADよりメジャーデビューした。「薄紅」でフジテレビ系アニメ「ドラゴンボール超」のエンディングテーマを担当し、同曲を収めたアルバム「心臓文庫」を2016年6月にリリースした。2017年7月に亀田誠治プロデュースの新曲「遥」で再び「ドラゴンボール超」のエンディングテーマを担当し、8月に同曲を収録したアルバム「遥」を発表。2021年3月にメジャーデビュー5周年を記念し、“黒白極撰曲集”と称したアルバム「闇夜に烏、雪に鷺」をリリースした。2022年12月にオールタイムベストアルバム「絶好」を発売した。