ナタリー PowerPush - 黒崎真音
イビツな世界に見つけた「ちょうどいい」場所
黒崎真音がニューアルバム「VERTICAL HORIZON」を4月10日にリリースする。自身2枚目のオリジナルアルバムとなる本作で黒崎は、R・O・Nら作曲家陣とともにサウンドメイキングにコミット。アニソンシンガーであり、無類のメタルファンでもある彼女らしいヘビーさとヌケのよさをあわせもつ楽曲群を制作している。
前回インタビュー時、今後本格的なヘヴィメタルサウンドを指向すると語っていた黒崎がその言を違えることなく、しかしよりメジャー感あふれるサウンドを目指すに至ったのはなぜか。その真相に迫った。
取材・文 / 成松哲 インタビュー撮影 / 佐藤類
「デジタル」をキーワードにサウンドデザイン
──去年の春から秋の黒崎さんはリリースラッシュ状態。5月の「HELL:ium」以来、5カ月のうちにゲームのサントラを含め、4枚のシングルを立て続けに発表していました。
確かに毎月のように何かをリリースしていた気がします(笑)。
──で、10月発売の「UNDER / SHAFT」でひと段落。ライブやフェスに出演することはあれ、作品を発表することはなかった。今回のアルバム「VERTICAL HORIZON」までスパンを空けたのは、その間制作に集中するため?
まさにそうですね。ちょっと時間をかけてじっくり作らせてもらってました。
──だからなのかよく練られた、バランスのいい作品ですよね。既発曲5曲はそれぞれアニメやゲーム、実写映画のテーマ曲だからテイストはさまざま。新録7曲についてもヘヴィメタルファンの黒崎さんらしいハードで複雑な展開を見せる「[Dreamed wolf]」もあれば「FRIDAY MIDNIGHT PARTY!!」のようなパーティチューンもある。
我がことながら「バラエティに富んだなあ」って思ってます(笑)。
──だけど1つの作品として散漫なわけではない。むしろタイトにまとまっている。しかもアップリフティングで熱い曲が中心なんだけどミックスバランスがいいからリスナーが音の強さに負けて聴き疲れることもない。すごくスムーズに聴ける、何度もリピートしたくなるアルバムなんですよ。
ありがとうございます。確かに聴きやすさっていうことは一番考えていて。というのも、おっしゃる通りシングル曲5曲もそうだし、そのR・O・Nさんやfu_mouさん、井内舞子さんに書いていただいた新曲も色とりどり。すごくジャンルレスな感じだったので。なので今回は、1stアルバム「Butterfly Effect」のときや「UNDER / SHAFT」のときにも曲を書いていただいたR・O・Nさんに制作現場にガッツリ入ってもらったんです。私のやりたいことや声質なんかをよく知っているR・O・Nさんにディレクター的立場になっていただいて、アルバム全体のコンセプトやサウンドのトーン、バランスを一緒に決めてみたんです。
──そのコンセプトって?
具体的に「これ!」って決めたわけではないんですけど「デジタルサウンドに重きを置いていこう」っていう話はしていて。「黎鳴 -reimei-」なんかはストリングスメインの曲だし、「UNDER / SHAFT」や「[Dreamed wolf]」にしてもメタルっぽい歪んだギターが特徴の曲なんだけど、ミックスやエフェクトにデジタル感を取り入れればアルバム全体のトーンがまとまるし、デビューシングルの「Magic∞world」や2ndの「メモリーズ・ラスト」の頃のサウンドともつながる。今までの私と今の私をつなぐアルバムになるんじゃないかって。
アニソンファンにも聴きやすいメタルサウンド
──なんかホッとしました(笑)。
「ホッと」ですか?
──前回「UNDER / SHAFT」リリース時の取材で黒崎さんは「きっちりと黒崎真音像を固めていきたい」「ひとつのことを貫きたい」から今後は「UNDER / SHAFT」で提示したゴシックメタル系のサウンドを今後の音楽性の軸にすると言っていて。
言ってました言ってました(笑)。
──実際「UNDER / SHAFT」はカッコよかったし、その覚悟の言葉にグッとくるものもあったからその路線は1つの正解だと思ったんですけど、一方で「Magic∞world」当時からのファンの中には置いてけぼりを食らう人もいるんじゃないか?って気がしてたんです。
実は音楽性に一番悩んでいたのが去年だったんですよ(笑)。「黒崎真音=こういう音楽をやる人です」っていう道しるべがないと聴いている方も戸惑うんじゃないかっていう不安があったから、「UNDER / SHAFT」の頃にはギターロックやメタルという道を模索したかったんだと思います。
──でもそちらに振り切ることはしなかった。
それには去年たくさんのライブやフェスに呼んでいただいたことが関係していて。そういう場所でアニソンファンの方を前に歌わせていただいて「私はアニソンの人なんだ」「アニメやゲームの世界観に寄り添って、その魅力を歌で届けたかったんだ」っていう気持ちを再確認したんです。それで今回アルバムを制作するにあたって改めて自分のやりたい音楽、やるべき音楽を考えてみたら「私はどっちもやるべきだ」ということに気づいて。ガツガツしたメタルももちろん好きなんだけど、何よりも私はアニメとアニソンを愛しているし、これからもずっとアニソンを歌っていきたい。それならアニソンファンの人にも聴きやすいメタルサウンドを目指すべきじゃないかって思ったんです。
- ニューアルバム「VERTICAL HORIZON」 / 2013年4月10日発売 / GENEON UNIVERSAL
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray] / 3885円 / GNCA-1353
- 通常盤 [CD] / 3150円 / GNCA-1354
CD収録曲
- 生まれ出づる物語
- UNDER / SHAFT
- [Dreamed wolf]
- 十鬼の絆
- VERTICAL HORIZON
- starry×ray
- Dresser Girl...▽
- Distrigger
- 鳴り響いた鼓動の中で、僕は静寂を聴く
- FRIDAY MIDNIGHT PARTY!!
- Just believe.
- 黎鳴 -reimei-
- story ~キミへの手紙~
初回限定盤Blu-ray収録内容
- SHIBUYA-AXで行われたデビュー2周年記念ワンマンライブの映像
※▽はハートマーク
黒崎真音(くろさきまおん)
アニソンシーンを中心に活躍する女性シンガー。2000年代のアニソンに多大な影響を受け、音楽活動を開始する。2010年にテレビアニメ「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」で全話異なるエンディングテーマを歌唱。これらの楽曲全てを収録したアルバム「H.O.T.D.」でCDデビューを果たす。その後もテレビアニメ「とある魔術の禁書目録II」やOVA「薄桜鬼 雪華録」のエンディングテーマ、映画「リアル鬼ごっこ3」「同4」「同5」の各主題歌、テレビアニメ「薄桜鬼 黎鳴録」オープニングテーマを担当。2012年10月にはアニメ「ヨルムンガンド PERFECT ORDER」のオープニングテーマを収録した5thシングル「UNDER / SHAFT」を発売した。2013年4月、2ndアルバム「VERTICAL HORIZON」をリリースする。