ナタリー PowerPush - 黒崎真音
「リアル鬼ごっこ」3部作で本格的ロックに挑戦
5月9日、黒崎真音がシングル「HELL:ium」をリリースする。同作は5月より順次公開される映画「リアル鬼ごっこ3」「リアル鬼ごっこ4」「リアル鬼ごっこ5」の各主題歌を1枚のCDにパッケージした作品。劇場公開作品、そして実写作品の主題歌を手がけるのは、黒崎自身初の試みとなる。
毎回エンディングテーマの異なるテレビアニメ「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」において、その全てを担当する華々しいデビューを飾り、以来「とある魔術の禁書目録II」のエンディングテーマ「Magic∞world」など、話題のアニソンを多く歌い上げてきたボーカリストはいかにして実写作品に立ち向かったのか。アニメーションと実写の違い、そして「リアル鬼ごっこ」という作品の楽しみ方について大いに語ってもらった。
取材・文 / 成松哲 撮影 / 平沼久奈
アニソンのとき以上にリアルな言葉を使うように意識した
──これまでアニメのテーマソングを数多く手がけていますが、映画主題歌は初めてですよね。実写作品に携わるに当たって何か心掛けたことってありますか?
普段から、アニソンアーティストとして活動するときは(アニメの)作品を第一に考えていて。私の音楽性やオリジナリティは自分名義の曲で表現できるから、アニソンに関しては作品の背景にあるものや雰囲気に合ったものを作りたい。逆に作品に合わない音楽がアニメに乗るのってイヤなんですよ。それは実写でも同じで、作品に寄り添った詞や音を作るようにはしました。ただ、アニソンを歌わせていただくときは、普段使わないような言葉、例えば「悠久」とか、そういうちょっとファンタジーめいた言葉を盛り込むとアニメの世界観に近づけるのかなと思ってるんですけど、「リアル鬼ごっこ」は実写だし、普段アニメを観ていない方々もご覧になると思うので、その違いは意識しました。
──具体的にはどのような点を意識しましたか?
台本を読んだとき、普段参加しているアニメを観るとき以上に自分のいる境遇に置き換えられる点が多かったこともあって、台本に出てくるフレーズや景色をイメージしつつ、いつもよりリアルな言葉を使うようにしました。
黒崎真音を知らなかった方にも聴きやすく感じてもらいたい
──確かに「現実逃避しても哀しいだけ」「今度こそ『守るよ』」と、いつもの黒崎作品よりも直接的で強い叱咤や決意の言葉が多用されているのが印象的でした。でも、この映画って血液型B型の人が鬼(=生物兵器)に狩られる話ですよね。さすがに日常生活でそういう目に遭うことはないんじゃ?
もちろんそういうことではなく。そもそも私、A型ですし(笑)。ただ、映画の中の鬼って生活に立ちはだかる壁や困難みたいなものなんじゃないかって気がしてるんです。そして、それに対する恐怖心から逃げることや戦うことって私自身にも皆さんにもあることですよね。だから、序盤(リアル鬼ごっこ3)の主題歌「鳴り響いた鼓動の中で、僕は静寂を聴く」と、中盤(同4)の「I'm still breathing...」では、そういう重たい感情や強い感情を表現しつつ、最終章(同5)の「Just believe.」では、優しいバラードの中にそれまでの物語の中で登場人物の間に芽生えた友情や恋心、人の暖かさを感じてもらえたらいいな、っていう作り方をしてみたんです。音に関しても、いつもよりJ-ROCKっぽくなってますし。
──これまでの作品同様、ハードロックやヘヴィメタルがベースになってはいるものの、よりシャープな音になってます。
アニソンってすごくたくさん音を重ねた豪華な作りになってるじゃないですか。いちアニメファンとしてもちろんそういうゴージャスな曲は大好きだし、歌わせていただくのもすごくうれしいんですけど、今回はそうじゃなくて。特に1曲目「鳴り響いた鼓動の中で、僕は静寂を聴く」はカラッとしたドライなサウンドのロックになってますよね。私自身、音作りに深くかかわっているわけではないんですけど、黒崎真音を知らなかった方にも聴きやすく感じてもらいつつ、いつも応援してくださっている方には新しい黒崎真音を感じてもらえたらいいな、っていうことは楽曲制作陣と一緒に考えましたね。
CD収録曲
- 鳴り響いた鼓動の中で、僕は静寂を聴く
(「リアル鬼ごっこ3」主題歌) - I'm still breathing...
(「リアル鬼ごっこ4」主題歌) - Just believe.
(「リアル鬼ごっこ5」主題歌) - 鳴り響いた鼓動の中で、僕は静寂を聴く (Instrumental)
- I'm still breathing... (Instrumental)
- Just believe. (Instrumental)
黒崎真音(くろさきまおん)
アニソンシーンを中心に活躍する女性シンガー。2000年代のアニソンに多大な影響を受け、音楽活動を開始する。2010年にテレビアニメ「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」で全話異なるエンディングテーマを歌唱。これらの楽曲全てを収録したアルバム「H.O.T.D.」でCDデビューを果たす。その後もテレビアニメ「とある魔術の禁書目録II」やOVA「薄桜鬼 雪華録」のエンディングテーマを担当。2012年5月には映画「リアル鬼ごっこ3」「同4」「同5」の各主題歌を1枚にまとめたシングル「HELL:ium」をリリースする。