ナタリー PowerPush - 黒崎真音

今後の方向性を提示する 新機軸シングルが完成

10月17日、黒崎真音が現在放送中のアニメ「ヨルムンガンド PERFECT ORDER」のオープニングテーマにして自身の5thシングル「UNDER / SHAFT」をリリースする。その表題曲とカップリングの「Crimson roses」はいずれも、黒崎サウンドの新機軸を打ち出した、よりハードで挑戦的な楽曲となっている。そして同14日には自身のデビュー2周年を東京・SHIBUYA-AXにて開催。その内容はこれまでの歴史を振り返りつつも、シングル同様新しい黒崎の姿を強く提示する内容になるという。

この2年間順風満帆な音楽活動を繰り広げてきた若手一番人気のアニソンシンガーは、なぜ新たな一歩を踏み出すことになったのか。その経緯と決意のほどを訊いた。

取材・文 / 成松哲

アニソンシーンにおいて不可欠な人になりたい

──この夏から秋にかけて、お忙しかったんじゃないですか? 6月にはマレーシアでの「ANIME FESTIVAL ASIA MALAYSIA 2012」、8月にはゲームブランド・オトメイトのイベント「オトメイトパーティー2012」や、「Animelo Summer Live2012」に出演。作品も、7月にゲーム「十鬼の絆 関ヶ原奇譚」の主題歌集「悠久ノ謳」を、8月にアニメ「薄桜鬼 黎明録」のオープニングテーマ「黎明 -reimei-」がリリースされました。

しかも「悠久ノ謳」や「黎明 -reimei-」の発売記念イベントもあって、7月、8月は毎週のようにファンの方にお会いしてたんですよ。だから皆さんからパワーや元気をもらいながらも常に戦っていた、ホントに濃厚な夏でしたね。

──戦っていたと言うと?

どちらかというとファンの方を前にした自分自身と戦ってました。広い目で見たら私はまだまだ新人なんですけど、デビューからの2年間いろいろなことを経験させていただいてきた中で、自分なりの理想像みたいなものができあがってきて。それに向かって自分なりに成長できてると思える部分もあるんですけど、逆に「いろいろ足りてないな」と感じることも多々あって、特にこの夏はそういう自分のなりたい姿みたいなものを追いかけていた気がします。

──「自分なりの理想像」とは?

なんていうか、アニソンシーンにおいて不可欠な人になりたいんです。「黒崎真音がフェスに出る」「イベントに出る」って発表されたとき、ファンの方に「行きたい」って思っていただけるような存在になりたいというか。皆さんの気持ちが盛り上がるような存在になりたいんですけど、やっぱりなかなか難しいですよね。

新しい世界で歌うことの難しさ

──この夏だけでも相当な数のフェスやイベントに呼ばれているわけですし、既に十分な集客を見込まれる人になってるんじゃないですか?

そう思っていただけているならうれしいんですけど、特にこの夏は初めてのことに直面して、緊張することが多かったんですよ。例えばオトメイトパーティーみたいな、自分にとっては新しい世界のイベントに出させてもらったりもして、難しさを感じることがたくさんあったので。

──それは女性ファンに向けて歌う難しさということ?

オトメイトパーティーの場合はそうですね。お客さんは9.5割が女性なので。イベントではゲーム「十鬼の絆 関ヶ原奇譚」のオープニングテーマ曲「十鬼の絆」を歌わせてもらったんですけど、どういうライブをすれば女性のファンに喜んでもらえるのかっていうことは、本番直前までずっと考えてました。私自身「十鬼の絆」のファンだから歌わせていただくこと自体はすごくうれしかったんですけど、だからこそ「大好きなゲームの曲を、私と同じようにゲームのファンの方たちの前で歌うんだ」っていうことでプレッシャーにもなりましたし。

──実際のお客さんのリアクションはどうでした?

プレッシャーとは裏腹に、ゲーム自体は発売されたときから反響がすごかったようですし、ゲームのPVでも私の曲を使っていただいていたので、イントロが流れた時点で反応してくれたお客さんも多くて。皆さんにすごく優しく見守っていただけた感じでしたね。

私はとにかく気持ちで歌うしかない!

──ほかにも緊張したり、ナーバスになったりする局面ってあったんですか?

Animelo Summer Liveはホントにプレッシャーがすごかったですね。「黎明 -reimei-」と「Magic ∞ world」を歌わせてもらったんですけど、「黎明 -reimei-」は「薄桜鬼」という女性ファンが多いアニメのオープニングなので「アニサマのお客さんの何割が知ってるんだろう?」っていう疑問もあって。

──ただそうは言いながらも、アニサマのステージはきっちり勤め上げてますよね。そういう気持ちはどうやって吹っ切ったんですか?

黒崎真音名義では2日目に出演したんですけど、ALTIMAとして1日目にも出ることになっていて、そのときレーベルの先輩・川田まみさんのステージを観させていただいたら、これがすごくカッコよくて! 「じゃあ私には何ができるんだろう?」って考えたら自信をなくしかけることにもなったんですけど(笑)、それでも「川田さんみたいにはできない以上、私はとにかく気持ちで歌うしかない!」「情熱的にやるしかない!」って思えるようにもなれたんです。で、本当に「これ以上は出せない」ってくらいの気持ちで歌ったら、イベントのあと「CDやアニメで聴くより気持ちが伝わってきたよ」とか「生で聴いて好きになりました」とか「歌ってもらえてよかったです」っていうコメントをいただけて。それですごく救われた気持ちになりましたね。

──「薄桜鬼」を知らないだろう男性のお客さんも沸かせることができたわけですし、結構理想に近づけた夏になったんじゃないですか。

「理想の私になれた」とはもちろん言えないんですけど、コメントをいただいたりしていくうちに自分の気持ちは伝わったのかもと思えてきて、本当にうれしかったです。何度も「もうできない」「もうダメだ」って思ったんですけど、そういう気持ちに押しつぶされなくてホントよかった。やっぱり戦ってたし、濃厚な夏でした(笑)。

ニューシングル「UNDER / SHAFT」 / 2012年10月17日発売 / ジェネオン・ユニバーサル・エンタテインメント
ニューシングル「UNDER / SHAFT」CD+DVD 1890円 / GNCA-0245
ニューシングル「UNDER / SHAFT」CD 1260円 / GNCA-0246
CD収録曲
  1. UNDER / SHAFT
  2. Crimson roses
  3. UNDER / SHAFT(Inst)
  4. Crimson roses(Inst)
DVD収録内容
  • 「UNDER / SHAFT」PV
黒崎真音(くろさきまおん)

アニソンシーンを中心に活躍する女性シンガー。2000年代のアニソンに多大な影響を受け、音楽活動を開始する。2010年にテレビアニメ「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」で全話異なるエンディングテーマを歌唱。これらの楽曲全てを収録したアルバム「H.O.T.D.」でCDデビューを果たす。その後もテレビアニメ「とある魔術の禁書目録II」やOVA「薄桜鬼 雪華録」のエンディングテーマ、映画「リアル鬼ごっこ3」「同4」「同5」の各主題歌、テレビアニメ「薄桜鬼 黎明録」オープニングテーマを担当。2012年10月にはアニメ「ヨルムンガンド PERFECT ORDER」のオープニングテーマを収録した5thシングル「UNDER / SHAFT」をリリースする。