ナタリー PowerPush - kors k

“ビーマニの人”では終わらない異色クリエイターの正体

俺らはここにいるぞ

──今回のアルバムにはbeatmania、jubeat、REFLEC BEATといった音楽ゲームへの提供曲が収録されています。kors kさんが楽曲を作るとき、ゲームによって意識して変える部分はあるんでしょうか?

kors k

もちろんあります。プレイスタイルがゲームによって違いますから、操作性みたいなものは常にイメージしながら曲を作りますね。beatmaniaだったらプレイヤーが叩く音を強めてわかりやすい音にしたりとか。あとは“決め”っていうんですけど「ダ・ダダ・ダ!」みたいに叩いて気持ちいいフレーズを盛り込むっていうのは意識してますね。

──アルバムにはゲームで流れる楽曲のロングバージョンが収録されています。アルバム用にアレンジする際に意識していることはありますか?

僕が音ゲー曲のロングバージョンを作るときに絶対に守ってる条件が3つあって。1つはロングバージョンにしたときにガッカリさせないこと。もう1つはゲームバージョンに入っていない展開を足して、ロングバージョンを新曲としても楽しめるようにすること。最後の1つは1曲の中でジャンルやグルーヴを変えるっていうことです。自分がDJをするときのこともイメージして、もっと踊りやすくしようっていうのも考えてますね。

──今回のアルバムには「beatmania IIDX 21 SPADA」に収録された「Insane Techniques」のロングバージョンが収録されていますね。

アルバムを作るときって、初めにそのアルバムの基準になるようなクオリティの曲を作るんですけど、それが「Insane Techniques」のロングバージョンで。この曲には今自分ができるテクニックをできる限り盛り込んでます。そのせいで制作に1カ月半ぐらいかかってしまったんですけど(笑)。長く時間をかけた甲斐あって、非常に聴きどころの多い曲になってます。ぜひ聴いてほしいですね。

──「Insane Techniques」もそうですが、アルバム全般を通して“声ネタ”と言われるサンプリングがたくさん入っていますね。

kors k

beatmaniaの中で声ネタは僕の代名詞的なものになっているんで。声ネタはみんな好きだし、ウケるからいっぱい盛り込んでいます。あと声ネタだけじゃなくてアルバムにはゲストボーカルにも参加してもらってます。今回お願いしたЯIREさんとTimmyさんとは昔から仕事をしてて、一緒にやるんだったら彼らかなって。

──今回のアルバムにはRyu☆さんとのコラボユニットであるThe 4th名義の曲「Force of mind」も収録されていますね。

最初に彼とThe 4th名義で出した曲が「Force of wind」ってタイトルなんですけど、今回のアルバムに入っている曲は「Force of mind」。最初は「○○ of wind」シリーズでいいんじゃないのって話してたんですけど、その後Ryu☆ちゃんが「w」とのミスリードを狙って「mind」にしようかって言ったのが妙にハマって。じゃあこれでいこっかみたいな感じで決まりました。

──同じタイミングでデビューしたRyu☆さんとのコラボレーションは、kors kさんにとってやはり特別なんでしょうか?

ほかの曲ももちろん気合いは入ってるんですけど、やっぱり同じスタートを切ったライバルであり親友である彼との曲ですから。世間からなめられないような「俺らはここにいるぞ」っていう曲にしようと思って。今回はお互い忙しくてやることもいっぱいある中で本当によく手伝ってもらって、彼の働きに負けないよう僕も全力を出しました。

僕は音楽を作る側の人間

──以前kors kさんはコナミからアルバムを発表していますが、今回はEXIT TUNESからのリリースとなります。これまでと違って何か意識していることはありますか?

やっぱり新しい層というか、僕のことを知らなかった人にも聴いてもらいたいっていうのを考えていて。もちろんゲームユーザーは絶対に無視できない僕のファン層なんだけど、そこを大事にしつつどんどん新しいリスナーに向けて発信していきたいんです。そのバランスを取るのが難しいところなんですけど。

──DJとしての活動も新しい層へのアプローチの一環なんでしょうか?

kors k「EXIT TUNES ACADEMY -BLUE DRAGON / 青龍 RELEASE PARTY-」東京・Zepp Tokyo公演の様子。

そうですね。ただ僕がDJをするのはいわゆる流行りの曲がかかっていてみんな盛り上がるっていう感じのところではなくて、そのジャンルが好きな人が集まってる、わりとアンダーグラウンドな場所が多くて。ジャンル的にはハードコアだったり、あとコスプレの人が多いイベントなどに出たりしています。

──DJプレイのときに心掛けていることはありますか?

お客さんに歌わせるようなコール&レスポンスはよくやります。その場に来た人しか経験できない、一体感みたいなものをどれくらい味わってもらうかを大事にしたいと思うので。あとはやっぱり、みんなが聴きたい曲を聴きたいタイミングでかけることかな。自分の曲でも認知度の高いものは後半に持ってって、みんなで大合唱で笑顔で終わるみたいな。そういう流れはずっとありますね。

──beatmaniaへ楽曲を提供するkors kさんとクラブやイベントでDJをするkors kさん。どっちが本来の姿なんでしょうか?

DJももちろん楽しいけど、僕は自分を完全に音楽を作る側の人間だと思ってます。音楽が好きってよりも、音楽をプログラミングしていくのが好きなのかな。音と音を組み合わせてコラージュしていったりとかっていうのが本当に好きなんです。

ニューアルバム「Let's Do It Now!!」/ 2014年6月4日発売 / EXIT TUNES / QWCE-00363
[CD] 2000円 / QWCE-00363
収録曲
  1. Let's Do It Now!! Intro / kors k
  2. Gimme a Big Beat(Extended) / kors k[jubeat saucer]
  3. On My Wings / kors k
  4. Wuv U(Extended) / kors k[REFLEC BEAT・beatmania IIDX 18 Resort Anthem]
  5. Insane Techniques(Extended) / kors k[beatmania IIDX 21 SPADA]
  6. Ultra Hardcore / kors k
  7. Mine / kors k feat.Timmy
  8. Because of You / kors k
  9. Shibuya Jungle / kors k
  10. Playing With Fire(Extended) / kors k[REFLEC BEAT colette]
  11. Force of mind / The 4th
  12. smooooch・∀・2014 / kors k[beatmania IIDX 16 EMPRESS]
  13. Nirvana / kors k feat.ЯIRE
kors k(コースケ)

音楽プロデューサー、アーティスト、DJ。10代の頃からシンセサイザーによる楽曲制作を始め、2000年にコナミの音楽ゲーム「beatmania IIDX 4th Style」に提供した「Clione」でデビュー。「beatmania」シリーズの主力トラックメーカーとして楽曲を提供し続けながら、アニメのキャラクターソングの作曲やJ-POPのリミックス、アレンジなど幅広い制作活動を行っている。DJ Andoとのユニット・Caramel Podではa-nationへの楽曲提供や倖田來未をはじめとする日本人アーティストへのリミックス提供、イベントとのコラボのほかヒラリー・ダフやデミ・ロバートといった海外アーティストへのリミックス提供も担当。現在はDJとしてクラブやイベントのステージでも活躍している。2014年6月、アルバム「Let's Do It Now!!」をリリースした。