ナタリー PowerPush - 小松未可子

100%みかこしアルバム「THEE Futures」完成

2月13日、小松未可子がニューアルバム「THEE Futures」をリリースする。前作「Cosmic EXPO」がヒロイン・加藤茉莉香役を演じたテレビアニメ「モーレツ宇宙海賊」のコンセプトアルバムという位置付けだったのに対し、今作は純然たる小松未可子名義。彼女にとって実質的な1stアルバムとなっている。その記念碑的作品には前作の作家陣に加えスネオヘアーら新たな作家陣が参加。さらに小松自身が新録曲10曲中5曲の作詞を手がけている。

今回のインタビューでは、そんな意欲作リリース直前の小松に、アルバム制作秘話から、独特なラブソング観、さらにはエンガワに対する並々ならぬ思い入れまで、大いに語ってもらった。なおインタビュー後半にはアルバム4曲目「ソラウミ」の作編曲を手がけたスネオヘアーへのメールインタビューもあわせて掲載している。

取材・文 / 成松哲 撮影 / 佐藤類

髪を切った理由

──前回のインタビューのときに比べてヘアスタイルが……。

小松未可子

スッキリしちゃいました(笑)。

──去年のバースデーライブのときに切ったんですよね(関連記事:小松未可子、バースデーイベントでアルバム&映像集発売発表)。なんで"断髪GIG"なんて80年代のパンクバンドみたいな演出を?

あはははは(笑)。実は2年くらい前からずっと切りたかったんですけど、ずっとタイミングが合わなかったんですよ。

──それがなぜ去年の11月にはOKに?

去年の夏ごろ「ちょっと切ってみたいんですけど」って切り出してみたら、事務所も「いいんじゃない?」と。それで「どうせ切るなら、何か形にして残しておきたいよね」という話が持ち上がって。そのときにはすでに11月にバースデーライブをやることが決まっていたので「じゃあ、髪を切った映像をバースデーライブで流してみよう」ってことになったんです。

小松未可子

──イベントの演出にしちゃったと。

意味深な表情と表現でタクシーに乗り込んで、たどり着けばそこは美容室で、自分でバサッと髪を切り落として……っていう映像をまず披露して、その後、ショートヘアの私が実際にステージに現れるサプライズを仕込んでみました。

──まさか年頃の女の人がネタで髪を切るとは思いませんでした(笑)。

あと、一昨年あたりまでは「忙しくならないかなあ」って思ってたんですけど、今は忙しくさせていただいていて。そうしたら今度は一昨年とは別の意味で気持ちに余裕がなくなっちゃったんですよ。目の前のことを精一杯こなしているうちに時間だけが過ぎていってしまったりして。なるべくそういう状況に流されないように、あとで去年のことを振り返ったとき「あれ? あのとき何してたっけ?」ってならないように、ときどきイベントを作っておきたかったんです。

まだ自分の色を定めたくなかった

──その点、今回の「THEE Futures」って髪を切る必要のなさそうなアルバムですよね。当然制作時に試行錯誤はしたんでしょうけど、小松さんのやりたいことを全部やりきっている印象があります。

ありがとうございます!

──どの曲もメロディラインは倉木麻衣ファンの小松さんらしい王道J-POP。で、トラックはLADY GAGAやカイリー・ミノーグのような硬質なエレクトロを中心に、フォーキーなギターロックの「ソラウミ」もあるし、ファンクサウンドにハードロックギターを織り交ぜた「アラブルトラベル」もあるし……。

ラテンっぽい曲(「情熱」)もある(笑)。

──なんでこんなにバラエティ豊かな内容に?

小松未可子

まだ自分の色をあまり定めたくなかったというか、方向性を1つに偏らせたくなかったんです。「いろんな私を皆さんに見てもらいたい」っていう気持ちが強くあったので。だからライブで盛り上がれそうな曲もあれば、渾身のバラードって感じの曲もあるし、ダンスミュージックもあるっていう構成にしてみました。

──しかもどの曲もヒネてますよね。リードトラック「Baby dayZ」からして単なる4つ打ちのアゲアゲなエレクトロじゃない。ミディアムテンポでけっこう変わったビートを刻んでいるし、「ソラウミ」にしてもアウトロの渋めのオルガンソロは何小節続くんだろう? って感じだし。シングル曲「夏至の果実」に至ってはストレンジなドラムンベースにリミックスされているし。

あはははは(笑)。

──このアレンジにも小松さんの思いは反映されてます?

「すごくディスカッションしながら作れたな」と思ってます。今回新録曲のうち、5曲の詞は私が書いているんですけど、その中でも「ソラウミ」と「THEE Futures」は曲よりも先に詞を書いていて。(両曲の作曲家)スネオヘアーさんとnishi-kenさんには詞と一緒に「こういう曲のイメージで作詞しました」っていうメッセージもお渡しさせていただきました。今思い返してみると、そのイメージ自体、思いっきり個人的な趣味に偏ってた気もするんですが……(笑)。ほかの曲についても、何か気になることがあれば、できるだけそのことを伝えるようには心がけました。

──例えばどんな提案を?

テイクをいくつか重ねて、ラフミックスができあがった後、アレンジャーさんやプロデューサーさんに「とりあえずこういうアレンジはどう?」って聞かれたときに「私、このフレーズは1個前のテイクのほうが好きなんですけど」って言ってみたり。アルバム「THEE Futures」は小松未可子の「1stアルバム」って呼んでいるわけですし、コンセプトは「私」なんだから「結局これは誰のアルバムなの?」ってならないように、皆で作り上げていったような気がします。

ニューDVD / Blu-ray シングルミニアルバム「THEE Futures」/ 2012年月日発売 /
CD収録曲
  1. THEE Futures[作詞:小松未可子 / 作・編曲:nishi-ken]
  2. Baby DayZ[作詞:中村彼方 / 作・編曲:星野純一]
  3. 情熱[作詞:小松未可子 / 作曲:James Panda Jr. / 編曲:James Panda Jr. & the Zoo! Team]
  4. ソラウミ[作詞:小松未可子 / 作曲・編曲:渡辺健二]
  5. 冷たい部屋、一人[作詞:atsuko / 作曲:atsuko、KATSU / 編曲:KATSU]
  6. 夏至の果実 Sunset Cherry Mix[作詞・作曲・編曲:SiN]
  7. サーチライト[作詞・作曲・編曲:SiN]
  8. アラブルトラベル[作詞:只野菜摘 / 作曲・編曲:SiN]
  9. Starry Rally[作詞:小松未可子 / 作曲・編曲:SiN]
  10. アンブレラ[作詞:小松未可子 / 作曲・編曲:nishi-ken]
  11. LAKE LIKE LIFE[作詞:只野菜摘 / 作曲:James Panda Jr. / 編曲:James Panda Jr. & the Zoo! Team]
  12. おすしのうた(ボーナストラック)[作詞:おすしが食べ隊 / 作曲:James Panda Jr. / 編曲:James Panda Jr. & the Zoo! Team]
小松未可子(こまつみかこ)

1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。中学生時代にアイドルグループ「いもうと」でデビューののち、女優としての活動を開始。2010年にはアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタートさせた。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義による歌手デビュー。7月にはミニアルバム「Cosmic EXPO」、11月7日に2ndシングル「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」を発表した。2013年2月13日に1stフルアルバム「THEE Futures」をリリース。