ビジュアルでなく中身で勝負したい
──そういう清春さんが一番自由にできるのが、黒夢でもsadsでもなくソロなんだろうなというのは今作を聴いて改めて思いました。
うん、そうですね。サウンド的にもより自由になった気はします。これをやって次は何をやるか……もう少しスパニッシュっぽいものを追求するか、戻るか、打ち込みになっちゃうのか、また「エレジー」みたいなことをやるのか。歌っててどういう歌が気持ちいいかを考えてます。でも今回スパニッシュの世界にアプローチしたことで、広がった感じはするかなあ。エレキギターがいない曲もけっこうあるので。それは僕と三代さんの間ではチャレンジだったんです。ロックを象徴するエレキがいない。前作はロックを象徴するスネアの音がいないっていうのがチャレンジだった。チェロはいるけどベースとドラムがいない。今回はリズム隊はいるしパーカッションも鍵盤も鳴ってるけど、エレキギターがいない。その自由さ、入れるんだけど抜くものもちゃんとあるという、それがテーマでしたかね。
──それって思っていたってそう簡単にできるものじゃないと思うんです。せいぜいアルバムの中の1曲2曲でやるとか……。
そうですね。
──それでも十分なチャレンジだと思いますが、清春さんはアルバム全体でそれをやる。その志の高さと、三代さんのアレンジの見事さ、演奏の鮮やかさ、ボーカルの情の深さなどがそろった、実に濃密なアルバムですね。もちろんアートワークも含めて。
あの極彩色のアートワークが、アルバムの世界をギュッと凝縮してくれた気がしますね。このアートワークによって、音が変わって聞こえるかもみたいな予感を感じましたね。コラボとも違う、すごいエッセンスを加えてくれてるような。
──音楽面でもアートワークの面でも、これまで清春さんが作り上げてきたものを壊しても新しいものを求めるという意欲、姿勢を象徴している気がします。
ジャケットでよりわかりやすくなったかもしれないですね。僕がこのアルバムでやろうとしていたことをわかりやすく要約してくれた。僕が今回の曲でやったことに近いチャレンジを、ジャケットでやることができた。
──清春さんのことをよく知らない人でも、このジャケットなら強烈に伝わると思うんです。清春さんの顔が出たジャケットよりもはるかに清春さんがやっていることが伝わりやすい。
そうですね、うん。僕の顔が出ちゃった時点で、完全にイメージが固定しちゃいますもんね。タイトルも入れないようにしたんです。もちろん帯には出るんですけど、河村くんと話して「タイトルいらないね」って。タイトルを入れないことで、このコラージュをじっくり眺めることができる。アー写もなくていいと思うぐらい。ジャケ写と音楽だけあればほかはいらないと思うんですよ。
──それだけ音楽の中身で勝負したい。
僕らみたいなジャンルで長年やってると、毎回同じようにビジュアルで勝負しなきゃいけない虚無感ってあるんですよ。ミュージックビデオでもね「また今回も当たり前のように本人が出るのかな」って思うんですよ。そういうジャンルなんで仕方ないんですけど、そろそろ「音楽聴いてよ、曲聴いてよ、歌聴いてよ」って思いますね。もちろんそのためには中身が伴わないと。今回はけっこういいハードルを自分でも設定できて、いいジャンプをしてるなって気がします。それがうまい具合にみんなに伝わるといいですね。
──そうですね。
今やってることをもうちょっと貫きたい、続けたい気持ちもあるんです。1回だけだとなかなか伝わらないと思う。売れる売れないじゃなく、今回限りで終わってしまっては、僕がやろうとしていることが十分に伝わらない。次がスパニッシュじゃないとしても、やったことのないことにチャレンジするのは今後も続けたいですね。
- 清春「夜、カルメンの詩集」
- 2018年2月28日発売 / TRIAD
-
初回限定盤 [2CD+DVD]
5400円 / COZP-1411~3 -
通常盤 [CD]
3240円 / COCP-40251 -
- DISC 1 “夜、カルメンの詩集” 収録曲
-
- 悲歌
- 赤の永遠
- 夜を、想う(Album ver.)
- アモーレ
- シャレード(Album ver.)
- 眠れる天使
- TWILIGHT
- 三日月
- 美学
- 貴方になって
- DISC 2 “夜、カルメンの詩集”
poetry reading(初回限定盤のみ) 収録曲 -
- 悲歌
- 赤の永遠
- 夜を、想う
- アモーレ
- シャレード
- 眠れる天使
- TWILIGHT
- 三日月
- 美学
- 貴方になって
- 罪滅ぼし野ばら
- DISC 3 “夜、カルメンの詩集”
video(初回限定盤のみ) 収録内容 -
- 赤の永遠
- 眠れる天使
- 夜を、想う
- 清春(キヨハル)
- 1968年生まれ、岐阜県出身。1991年にロックバンド・黒夢を結成し、ハードかつグラマラスなサウンドで人気を集める。1994年にメジャーデビューを果たし、1999年に活動停止。その後自身のレーベルを立ち上げ新バンド・sadsを率いて活動を行う。2003年からはソロ活動を開始。2010年には黒夢とsadsを再開させ、ソロと並行して精力的な活動を展開している。2015年2月から11月にかけては、全34日間68公演にわたるソロライブ「MONTHLY PLUGLESS LIMITED 2015 MARDI GRAS KIYOHARU Livin'in Mt.RAINIER HALL」を行った。2016年3月に約3年ぶりのソロアルバム「SOLOIST」をリリース。2017年TRIADに移籍し、12月に“リズムレスアルバム”「エレジー」、翌2018年2月にオリジナルアルバム「夜、カルメンの詩集」を発表する。