ナタリー PowerPush - 喜多村英梨

新たな季節の訪れを「証×明」する意欲作

声優・喜多村英梨がアルバム「証×明 -SHOMEI-」をリリースした。

喜多村2枚目のアルバム「証×明 -SHOMEI-」は彼女曰く「キタエリサウンドセカンドシーズン」を目指した1枚だ。2012年の1stアルバム「RE;STORY」で見せたシンフォニックメタルテイストのロックサウンドを、自ら“チーム”と呼ぶクリエイター陣とともにブラッシュアップ。ラウドでヘビーながらも、キュートなアニメ作品にも多数出演する喜多村の横顔も伺える、オリジナリティあふれる13の楽曲群をラインナップしている。

今回ナタリーでは喜多村のインタビューを実施。キタエリサウンドセカンドシーズンに至る道のりとその全容を自ら解き明かしてもらった。

取材・文 / 成松哲

サウンドチームと完成を目指したキタエリサウンド

──いただいた資料によると今回のアルバムのキャッチコピーは「声優・キタエリが放つ、正真正銘のメタルサウンド」。「証×明 -SHOMEI-」はホントにこの言葉にウソのない1枚になりましたね。

喜多村英梨

ありがとうございます(笑)。以前からそうではあったんですけど、今回は特にサウンドチームの皆さんに「喜多村のアルバムを作るぞ!」っていう使命感や責任感みたいなものを持って取り組んでいただけた気がしていて。その活気みたいなものに私が便乗して「今私がしたいのはこういうこと!」っていうワガママを言い倒したから、声優アーティスト・喜多村英梨として今現在できることをギリギリまで追究できたんだと思います。実は私自身はアルバムを作ってる最中、いつものマイナス思考がチョイチョイ顔を出しちゃってましたから。レコーディング自体には「私が世界の中心よ!」「私が正義よ!」くらいの勢いで取り組めたんですけど、スタジオを離れると「私はそういう煽り文句に見合うだけの女か?」って感じになり(笑)。それでもいい形に仕上がったのはサウンドチームの皆さんの力があってのことなんです。

──確かにチーム感みたいなものを感じるアルバムでした。というのも収録曲を眺めてみると「証×明」って実はジャンルがバラバラなんですよ。全部が全部、いわゆるメタルではない。

そうですね。

──「証×炎 -SHOEN-」みたいなホントに琴や尺八を使った和テイストのメタルチューンがある一方で、「Nonfictionista」はスウィングジャズだし、「STARLET SEEKER」「Friend」はJ-POPライクなアレンジで、「sentiment」は2000年代以降のJ-ROCKって感じの跳ねるギターロック。だけどどの曲もちゃんとリズムは重たいし、なんか音がデカい(笑)。

あはははは(笑)。それが“キタエリサウンド”の味なんで。

──だから作家陣、エンジニア陣との間でキタエリサウンドとはなんぞや?っていう意思統一が図れてる気がしたんです。

前のアルバムの「RE;STORY」のインタビューのときにもお話したことなんですけど(参照:喜多村英梨「RE;STORY」インタビュー)、あのアルバムのコンセプトは“自分タイアップ”。喜多村英梨がやりたいサウンド、喜多村英梨に似合うサウンドを作ることを目標にしていて。だから「私はどういうことをしたいのか?」っていう情報をサウンドチームに求められることが多かったんですけど、そういう打ち合わせを重ねていくうちに「コイツはとんだ我の強い女だ」ということをチームの皆さんに理解していただくことができ(笑)、「RE;STORY」が完成したことで「“自分タイアップ”、正解だったね」って思ってもらうこともできた気がしてるんです。しかもありがたいことに、そのあとに続いたシングルの「Destiny」や「Birth」はゲームやアニメのタイアップものではあったんですけど、どちらも「『RE;STORY』に通じる楽曲を」っていうお話をいただいて作った曲だったので。そうやって「RE;STORY」以降ずっと、皆さんと一緒にキタエリサウンドを作り続けることができたからチーム感みたいなものが生まれたし、それを「証×明」っていうアルバムに刻めたんだと思ってます。実際「RE;STORY」を作ってから、サウンドチームとも一歩踏み込めるようになったというか、ちょっと深い付き合いができるようになりましたし。

──具体的には?

直接電話するようになりました(笑)。特に「Destiny」や、新曲の「証×炎」「月詠ノ詩」を書いてくれた山崎(寛子)さんとは同性っていうこともあって「こういうサウンドじゃないんだよ」「私はこうしたいんだよ」みたいな突っ込んだ話ができるようになりましたし。私の言葉をしっかり受け止めた上でパスを返してくれる関係を皆さんと築いた上で、確実な正解を導き出せるようになったんじゃないかって思ってます。今回のアルバムにも入ってる「Miracle Gliders」(ミラグラ)なんかもそういうパスを回し合って作った曲ですし。もともと美少女ゲーム(「水平線まで何マイル? -ORIGINAL FLIGHT-」)のオープニングテーマだった曲なんですけど、制作のときに作編曲の河合(英嗣)さんが、ちょっと申し訳なくなっちゃうくらい真剣に悩んでくださって。声優アーティスト・喜多村英梨はカッコいい方向、激しい方向に振り切っていくつもりなんだけど、声優・喜多村英梨はかわいい役も演じるし、キャッチーで萌え萌えしたキャラクターソングも歌う。「ミラグラ」ではその声優としてのキャッチー要素みたいなものも求められているんじゃないかってお話をなさっていて。「RE;STORY」以降の声優アーティスト・喜多村らしいバンドサウンドと、声優・喜多村らしさのちょうど真ん中みたいな微妙なラインを一緒に探ってくださったんです。

ニューアルバム「証×明 -SHOMEI-」/ 2014年4月9日発売 / スターチャイルド
初回限定盤 [CD+写真集] 3086円 / KICS-93030
通常盤 [CD] 2880円 / KICS-3030
収録曲
  1. 証×炎 -SHOEN-
  2. 月詠ノ詩
  3. Nonfictionista
  4. Destiny
  5. Birth
  6. Sha-le-la
  7. PIXY
  8. STARLET SEEKER
  9. sentiment
  10. Friend
  11. Miracle Gliders
  12. Pleasure→Link
  13. \m/

初回限定盤:外箱付きデジパック仕様 / 別冊撮り下ろし写真集ブックレット付き

喜多村英梨(きたむらえり)

「キタエリ」の愛称で知られる声優、ボーカリスト。2003年に声優としての活動を開始し、出演作品は「フレッシュプリキュア!」「魔法少女まどか☆マギカ」など多数。歌手としては2004年4月にデビューを果たし、2011年にスターチャイルドに移籍。3枚のシングルがヒットを記録し、2012年7月に1stフルアルバム「RE;STORY」をリリース。オリコン週間アルバムランキングで最高5位をマークする。同11月には4thシングル「Destiny」を、2013年1月に5thシングル「Miracle Gliders」を発表し、8月には6thシングル「Birth」を発表。そして2014年4月、2ndフルアルバム「証×明 -SHOMEI-」をリリースした。