岸洋佑|つんく♂、吉沢亮も参加の最新作 “個性派集団” THE ONEMEN'Sで表す岸の現在地

岸洋佑が9月25日に2ndミニアルバム「THE ONEMEN'S」をリリースした。

つんく♂が“令和のシングルベッド”として歌詞を提供したリードトラック「ごめんね」をはじめ、個性豊かな楽曲が詰め込まれた今作。岸本人が「今後、自分の代表曲になりうる曲」と手応えを語る「ごめんね」のミュージックビデオには、岸の親友である俳優の吉沢亮が出演しており、この映像はリリース前から大きな話題を集めた。

「ごめんね」のほかにも、作品には個性豊かな楽曲が収められた。作品の魅力を紐解くべく、音楽ナタリーでは岸にインタビューを実施。収録の各曲に抱くそれぞれの思いを聞いた。

取材・文 / 三橋あずみ 撮影 / 須田卓馬

キャラ立ちした6曲をユニットに

──まず「THE ONEMEN'S」というタイトルが面白いなと気になったのですが、これにはどんな意味が?

ジャケット写真に僕が6人(初回限定盤は5人)写っていると思うんですけど、この人たち、収録曲の擬人化なんです。で、この6人で結成されたユニットが「THE ONEMEN'S」という名前で。

──想像以上の設定でした(笑)。

実は、僕はプロデューサーという立場なんです。

──その発想はいったいどこから?

パッと思い付いたんですよね。で、作品がリリースされたあと、10月25日からツアー「YOSUKE KISHI LIVE TOUR "THE ONEMEN'S"」が始まるんですが、このツアーは「THE ONEMEN'Sのライブツアー」というコンセプトなんです。

──曲を擬人化させたのには、1曲1曲がキャラ立ちするくらい個性豊かなものになった、という思いもあるのでしょうか。

そうですね! いい意味で統一感がないんですよ。オムニバス的にしたかったというか。コンセプトを決めず、「この曲いいよね」と思える曲たちを集めていったので。それを“ユニット”としてまとめることで、1つの作品に仕上げていった部分もあります。あと、ソロの歌手にとって、グループ活動って永遠の憧れなんですよね。だから、ちょっと自分で夢叶えちゃおうかなって(笑)。

これは僕のワガママです

──さっそく1曲目の「ごめんね」から順にお話を聞けたらと思うのですが……「ごめんね」のミュージックビデオの再生回数、すごいことになっていますね。(9月末で約300万再生)

本当にありがたいです。

岸洋佑

──この曲は作詞につんく♂さん、作曲に岸さんの師匠のマシコタツロウさん、アレンジに斎藤誠さん。そしてMV出演に岸さんの親友・吉沢亮さん、監督に水溜りボンドのカンタ(佐藤寛太)さんという布陣で制作されました。どういったところから、このような豪華なメンバーが集まる作品になったのでしょう。

もうこれは、僕のワガママですね。ワガママというか、実現したかったことというか。まず「つんく♂さんに歌詞を書いてもらいたい」というところから始まって、曲は師匠(マシコ)にいただいて。アレンジについては「斎藤誠さんにお願いするのはどう?」とスタッフさんに提案してもらい、僕は斎藤さんが大好きなので「ぜひお願いします」と。そうしたら、斎藤さんが曲をアレンジするにあたってすごいミュージシャンの方々を連れてきてくださった。そうして楽曲ができあがり。

──はい。

できあがった楽曲に対して「これはもっと思いを乗せなければいけない!」ということで、MVには吉沢亮に出てもらって、水溜りボンドのカンタに監督をしてもらって……という具合でした。

“令和のシングルベッド”を作りたいです

──岸さんは、どういった理由からつんく♂さんに曲をお願いしたいと思っていたんですか?

岸洋佑

つんく♂さんの曲が合うんじゃないかなと思っていたんです。これは希望的観測じゃなくて、ライブで「シングルベッド」(シャ乱Q)や「ひとりぼっちのハブラシ」(つんく♂が作詞作曲を手がけたTOKIO / 桜庭裕一郎の楽曲)をカバーさせてもらったときの反応がよく、僕自身も歌いやすくて。そういったところからですね。「曲をお願いしたい」と思うようになっていきました。

──そうだったんですね。曲をお願いする前、岸さんがつんく♂さんに対して抱いていたイメージって、どんなものでしたか?

「女々しい歌詞を作る天才」ですね。

──「ごめんね」はそのイメージにドンピシャな曲ですね。

そうなんです。「“令和のシングルベッド”を作りたいです」と伝えさせていただいたんですが、「そうか、わかった」と書いてくださって。

──提供された歌詞を読んで、まずどんなことを感じましたか?

「ちゃんと女々しいな」と。ホントに現代版の「シングルベッド」をイメージしてくださったんだなと思いました。そして、僕のことを書いてくださったのもわかりました。実は一度もお会いしていなくて、制作中は文章でのやりとりだけだったんですけど……本当にすごいなと。

──特に自分らしさを感じたところは?

全体通して、ですね。主人公の思いに共感するというより、「この言葉、僕が言いそうだな」と思えるというか。「商店街 自転車を押しながら歩く」という部分も自分の学生時代と重なって情景が浮かびやすかったですし……「アホらしい『男』という 意地のせいなら 『男』は不要(い)らない」って、本当につんく♂さんならではの表現ですけど、よくわかるなと思えて。でも、そういう思いも歌詞を読んだときより、歌ってみてから一層感じたかもしれません。「『男』は不要らない」って男が歌うって……すごいキラーフレーズですよね。

──すごく心に残る表現だなと思いました。歌入れをするにあたっては、どんなことを意識されましたか?

岸洋佑

とにかく歌詞が聞こえるように、ということですね。メロも歌詞も強い曲なので、それを歌で伝えきれなかったら完全に僕のせいだと思って。ちゃんと、歌に力がある作品にしないといけないと考えていたんです。「歌に力がある」ってどんな作品かって……僕が思うに、「歌詞がちゃんと聞こえること」がすごく大切な要素なんです。いい曲って、一聴して何を言っていのるか、ちゃんと伝わってきますよね。あいみょんさんや米津玄師さんもそう。歌詞に独自の世界観があっても、ハッキリと“聞こえる”じゃないですか。そこを大事にしたくて、とにかく強く意識して歌いました。人に届く条件の最たるもの、というか……すごくシンプルだけど、一番大切なことなんじゃないかなって。

──マシコさんによる楽曲も、ドラマティックなメロディラインが印象的ですね。

実はメロは5、6年前からあって、僕が歌入れしたこともあったんです。ただメロディも、つんく♂さんが2番のAメロをカットされたりしていて。

──そうなんですね。

歌詞が来たときになくなっていたから、要らないと判断されたんでしょうね。つんく♂さんの歌詞が来てから、まったく違う歌になった感じですよ。メロディの印象も、自分の中で大きく変わって。

──すごく面白いですね。

もともと素敵な歌だったんですけど、より音符が粒立ったような感覚というか。この歌詞を乗せるためにこのメロディは生まれてきたのかな、という感覚に陥りました。