岸洋佑が12月5日にメジャー1stミニアルバム「走りたいわけじゃない」をリリースする。
2017年、テレビ朝日系「宇宙戦隊キュウレンジャー」に出演し人気を博した岸。メジャーデビュー作となる今作で彼は、25歳の自身がさまざまな経験を経て感じていること、今抱く思いを実直に歌っている。シンガーソングライターとしてメジャーデビューに至るまで、岸はどのような景色を見てきたのか。25年間の人生を紐解きつつ、アーティスト・岸洋佑のスタンスを探っていく。
取材・文 / 真貝聡 撮影 / 映美
将来のことなんて1mmも考えなかった
──現在25歳の岸さんの音楽活動の始まりは2009年、16歳の頃に出演した「歌スタ!!」のオーディションですよね。
はい。高校1年生のときにカラオケから応募できるオーディションがあったので、友達と冗談半分で挑戦しました。それはエントリー料600円を払うと、カラオケで歌った音源を日本テレビに送ってくれるというシステムで。そしたら担当者から電話がかかってきて「番組に出ませんか?」と誘っていただきました。
──それで最終審査まで進むことになって。「歌スタ!!」は大勢の人前で歌う初めての経験だったと思いますが、当時を振り返っていかがですか。
16歳の自分は、こうやってまともに人と話ができるような人間じゃなくて。ただのガキと言うか……もちろん芸能界のこともわからないし、社会のこともわからなかった。そんななんでもない奴が、ただテレビに出ただけだったので、緊張もしてないし、うれしさよりも「ヤバい、これで俺はモテるかも」って。それぐらいの感覚だったと思います。
──「ノリで応募したらテレビに出れちゃったよ」みたいな。
そうですね……ただ、最終審査で落ちたときにはなぜか悔しくて。それで、すぐに別のオーディションを受けました。
──それが2010年、岸さんが17歳のときに開催された「EXILE presents VOCAL BATTLE AUDITION2~夢を持った若者達へ~」ですね。
そうです。EXILEがとにかく好きだったこともあって受けました。だけど、そのときも「本気で歌手になろう」とまでは考えてなかったと思います。EXILEが好きだし、「歌スタ!!」に出たら反響が大きかったので「この世界は面白いかも」って。そしたら、ありがたいことに応募者3万人の中から10人にまで残していただいて。
──オーディションで歌ったときのことは覚えてます?
率直に「ヤッベエ! EXILEがいる!」と思いました。何も知らないガキなりに、「目の前のHIROさんやATSUSHIさんにいいと思ってもらえるように歌わなきゃ」って必死でしたね。とにかく歌手になることよりも、目の前のことを一生懸命がんばりたい。それだけの感覚だったと思います。
──最終選考まで残っても先の未来を考えなかったんですか?
今の年齢なら見えたと思うんですけど、17歳ってバリバリ高校生ですよ。だから、将来のことなんて1mmも考えなかった。もともと、どんな状況になろうと大学に行くつもりだったし。オーディションに合格できても「すぐ仕事につなげよう」という未来予想図は当時持っていなかったです。
惹かれる部分があったうえで、相性もすごく合った
──その後、岸さんはEXILEのオーディションをきっかけにLDHへ入られます。2011年、高校3年生のときには芸能クラスのある学校へ転校されていますから、このあたりから「俺は歌手になるぞ」という決心が芽生えたのかな?とも思えるのですが……。
事務所の方から「男性グループに入って、ボーカルをやってもらうよ」と言われて。僕が何かやらなければいけないというよりも、この用意されたレールの上でがんばるか……ぐらいの軽い感じだったと思います。決心よりも「みんなが芸能の高校へ行ってるから俺も行くかあ」という感じで転校しました。
──そこで吉沢亮さんと出会うんですよね。
僕と同じタイミングで亮も転校してきたんです。それでいろいろと話すようになって。
──吉沢さんが以前テレビ番組に出演されているとき、岸さんのことを「高校で唯一、仲の良い友達」と話していたのを観て、よっぽどの関係だと思いました。
亮を初めて見たとき、顔がきれいすぎて「これが芸能界か……」と思いましたね(笑)。こんなカッコよくて、当時「仮面ライダーフォーゼ」にも出ている同い年がいるなら、「俺は音楽をちゃんとやらなきゃダメだな」と思わせてくれたんです。もともと亮は芸能人っぽく振る舞うタイプじゃなかったし、僕も周りに芸能人の友達がいなくて。彼とは地元の友達のように仲良くなれたんですよ。お互いに歌うのが好きだから、一緒にカラオケへ行くようになって。
──吉沢さん、「洋佑の歌が本当にうまくて。今まで生で聴いた歌声の中で一番だと思う」とも以前雑誌で語っていましたね。
ありがたいことに、亮の中では僕の歌が衝撃だったみたいで。「お前ヤバいな!」と褒めてくれたんです。お互いに尊敬する部分があったんですよ。彼はお芝居を一生懸命やっていて僕はそこをすごく尊敬していたし、亮は亮で「洋佑は音楽をやっていて、歌がうまい」と。そうやって惹かれる部分があったうえで、相性もすごく合ったので、ほかの人と違う関係を築けました。だからこそ今も仲良くいられるんだと思います。
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人間としてのターニングポイント