氣志團万博2017 ~房総与太郎爆音マシマシ、ロックンロールチョモランマ~|綾小路翔が語る、結成20周年の夏の奇跡

地蔵になる人の気持ちをいかに溶かすかが万博のテーマ

──それにしても、達郎さんのステージはすごかったです。ほかのフェスでのステージも見たことはあったんですけど、今回の達郎さんは本当に楽しそうに、完全にリミッターを外したような状態でパフォーマンスをしていた。

達郎さん、ほかには俺たちと10-FEETのNAOKIしか使ってなかったセットの2階部分にまで登って、そこであれだけの長尺であの伝説のギターカッティングをご披露してくださいましたからね。

──そのあと、米米CLUBのときは急に雨足が強くなって。

米米CLUB(撮影:上山陽介)

あの時間までは風向きでYASSAI STAGEのほうに雨が吹き込んでいたんですよ。だから、BLUE ENCOUNTやMIYAVIは本当に大変だったと思うんですけど、最後になって全体の雨が大変なことになってきた。米米CLUBの高額な機材が濡れてしまわないか心配して、スタッフもみんな真っ青になってましたね。あと2日目は、連日会場で打ち上げていた花火のほかに、最後に船からとんでもない花火を打ち上げる予定だったんですよ。それが悪天候で全部ダメになってしまったのは残念でしたね。

──でもこうして話していてもつくづく思うのは、いろんなタイプのオーディエンスが分断してるんじゃなくて、混在したまま一緒に盛り上がってるのが、氣志團万博の楽しさですよね。

今年も会場のいろんなところで、謎の盛り上がりが発生してましたね。

──よくほかのフェスでは、次のアクトのために前のほうに陣取ってるお客さんを「◯◯地蔵」とか、面白おかしく言うじゃないですか。でも、氣志團万博にはそういうお客さんがほとんどいない。

“地蔵レス”フェス(笑)。でも、地蔵になっちゃうようなお客さんの気持ちっていうのも大事なことだと思ってて。そういう人たちの硬い気持ちを、いかに溶かしていくかっていうのが氣志團万博のテーマでもあったし、それ以前に氣志團として長年ずっと経験してきたことで。

──そっか。

SiMのライブの様子。(撮影:上山陽介)

昔、人気のあるヴィジュアル系の先輩バンドのツアーに同行させてもらった際も、本当に目の前のお客さんたちが、地蔵どころかステージさえ一切見ないで俯いているんですよ。「見ないことが自分の好きなバンドへの忠誠心」みたいな、昔はそういう文化もあって。で、そういう状況になると、俺らは俄然燃えてくるんですよ。この子たちの気持ちを、どうやってこじ開けてやろうかって。そうやってずっと生きてきたバンドだから。みんなを幸せにするためのおせっかいっていうのは、氣志團のコンセプトでもあったんですよ。

──なるほど。そういうバンドだから、音楽好きにとってのユートピアのような、ここまでのフェスができるんですね。すごく納得しました。

僕が唯一できるのは、いろんなところにしゃしゃり出ることだけなんで。地蔵もそうだし、逆にモッシュやダイブも、お客さん1人ひとりが楽しんでくれることに関しては、できるだけすべてを肯定したいと思っていて。氣志團万博のキャスティングも、演出も、そういう気持ちでずっとやってきただけで。

いつかSex Pistolsを木更津に呼びたい

──出たいバンドが増えすぎていて、もはや2日間2ステージでは収まりがつかなくなってきているんじゃないですか?

いや、それはありがたいことです。今年も、ステージ割りとタイムテーブルには本当に悩まされて。これはもう、自分たちがMOSSAI STAGE(YASSAI STAGEよりもキャパシティが少ないステージ)に出て許してもらうしかないと思っていたんですけど、周りから「それはさすがに……」と止められて。本当に、皆さんには感謝するばかりですね。

──ここ2年は、2日間2ステージ制というフォーマットに落ち着いてきましたけど、これは、ずっとやってきた中で1つ正解が出た感じなんですか?

そうですね。来年もまたやれるとしたら、きっとそうなると思います。本当は枠はもうちょっと増やしたいとは思っているんですけど。

──いや、絶対やってくださいよ!

いつかSex Pistolsを木更津に呼ぶのが夢なんですけどね(笑)。あと、来年ブルーノ・マーズが来るので、そのときにも直談判できないかなって(笑)。

綾小路翔と早乙女光がサプライズ出演したBOYS AND MENのステージの様子。(撮影:中野修也)

──(笑)。でも、バックステージにも出入りさせてもらっていると、今のフォーマットの時間差の2ステージ制の理由がよくわかります。翔さん、氣志團のステージはもちろんですけど、エビ中やBOYS AND MENでは遠くのステージのほうにまで飛び入りして、それでも、ほとんどの出演者のステージに出るときの送り出しと、ステージから戻ってきたときの迎えに立ち会ってるじゃないですか。「一体、翔さんは何人いるんだ?」って(笑)。

本当はRIP SLYMEのステージにも(マキシマム ザ ホルモンの)ナヲちゃんと一緒に飛び入りしようって話をしていて、ダンスの練習までしてたんですけど、バックステージのモニタをふと見たらナヲちゃんだけが学ラン着てRIP SLYMEのステージの上で踊っていて(笑)。でも、メンバーにはかなり助けられてます。フェスの最中、僕はかなり自由に動かせてもらっていて、僕がいないときでも、メンバーが手分けしてご出演者の皆様のお見送りやお出迎えをやってくれているおかげで、なんとかやれている感じですね。最初の何年かは、彼ら楽屋からほとんど出てこなかったですから。

──確かに(笑)。

「な、なんでこんなところで固まって震えてるの? 君たち! イベント始まってるよー!」って(笑)。いや、彼らは究極の人見知り軍団で。でも、今は全員で氣志團万博を作ってるっていう意識が、メンバーの中にも生まれていて。それは、ずっとやってきてよかったことですね。

氣志團(撮影:釘野孝宏)

氣志團万博2017~房総与太郎爆音マシマシ、ロックンロールチョモランマ~

氣志團の主催で9月16日、17日に千葉・袖ヶ浦海浜公園にて行われた野外フェスティバル。2003年と2006年に氣志團の大型野外ライブとして開催された「氣志團万博」が、2012年より会場を袖ヶ浦海浜公園に移し、フェス形式で行われるようになった。現在の形式で6回目の開催となった今回は2日間それぞれ17組ずつが出演し、約5万人が来場した。

出演者

9月16日
YASSAI STAGE

JAGUAR(OPENING CEREMONY ACT) / 氣志團 / 東京スカパラダイスオーケストラ / 10-FEET / ももいろクローバーZ / SiM / マキシマム ザ ホルモン / Dragon Ash / VAMPS / 布袋寅泰

MOSSAI STAGE

四星球 / coldrain / MUCC / LiSA / DJダイノジ / RIP SLYME / 私立恵比寿中学

9月17日
YASSAI STAGE

レイザーラモンRG(OPENING CEREMONY ACT) / ゴールデンボンバー / SCANDAL / KICK THE CAN CREW / WANIMA / 氣志團 / ユニコーン / 岡村靖幸 / 山下達郎 / 米米CLUB

MOSSAI STAGE

UNISON SQUARE GARDEN / BOYS AND MEN / 水曜日のカンパネラ / C&K / BLUE ENCOUNT / MIYAVI / 岡崎体育

番組情報

WOWOWにて放送決定!

本放送直前スペシャル
  • WOWOWプライム 2017年11月11日(土)ほか※無料放送
初日
  • 前編WOWOWプライム
    2017年11月18日(土)15:00~
  • 後編WOWOWライブ
    2017年11月18日(土)18:00~
2日目
  • 前編WOWOWライブ
    2017年11月19日(日)15:00~
  • 後編WOWOWライブ
    2017年11月19日(日)18:00~
氣志團結成20周年記念ツアー「リーゼント魂」
  • 2017年11月9日(木)千葉県 市川市文化会館 大ホール
  • 2017年11月12日(日)福岡県 福岡市民会館
  • 2017年11月18日(土)山梨県 コラニー文化ホール(山梨県立県民文化ホール)
  • 2017年12月1日(金)北海道 札幌市教育文化会館
  • 2017年12月3日(日)東京都 オリンパスホール八王子
  • 2017年12月16日(土)静岡県 富士市文化会館ロゼシアター 大ホール
  • 2017年12月17日(日)京都府 八幡市文化センター 大ホール
  • 2018年1月7日(日)岡山県 倉敷市芸文館
  • 2018年1月8日(月・祝)香川県 サンポートホール高松
  • 2018年1月13日(土)栃木県 那須塩原市黒磯文化会館 大ホール
  • 2018年1月14日(日)茨城県 龍ケ崎市文化会館 大ホール
  • 2018年1月20日(土)岩手県 遠野市民センター
  • 2018年1月21日(日)宮城県 トークネットホール仙台
  • 2018年1月26日(金)大阪府 オリックス劇場
  • 2018年1月28日(日)愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
氣志團(キシダン)
1997年に千葉県木更津で結成。メンバーは綾小路翔(Vo)、早乙女光(Dance & Scream)、西園寺瞳(G)、星グランマニエ(G)、白鳥松竹梅(B)、白鳥雪之丞(Dr / 2014年3月より活動休止中)の6名。“ヤンクロック”をキーワードに、学ランにリーゼントというスタイルでのパフォーマンスが話題を集め、2001年12月にVHSビデオで“メイジャーデビュー”を果たす。「One Night Carnival」「スウィンギン・ニッポン」などヒット曲を連発し、2004年には東京ドームでのワンマンライブも開催。2012年からは地元千葉県にて大規模な野外イベント「氣志團万博」を主催し、ほかのフェスとは一線を画するラインナップで多くの音楽ファンの支持を集めている。結成20周年を迎えた2017年8月にはTAKURO(GLAY)、鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)、櫻井敦司&今井寿(BUCK-TICK)ら豪華アーティストの楽曲提供によるアルバム「万謡集」をリリース。12月に行われる「JALホノルルマラソン2017」では“公式應援團”に就任し、オフィシャル応援歌「RUNNING MAN」を提供している。