ナタリー Super Power Push - 氣志團
「日本人」の誇りを込めた熱き血潮のメッセージ
素直な気持ちを音楽に出していこう
──氣志團は昨年デビュー10周年、今年結成15年になるわけですけど、そうやって10年15年過ぎていくと、ほかのアーティストの音楽をあまり聴かなくなるアーティストも多いと思うんです。それよりも、それまでに自分たちが積み上げてきた道を極めるみたいな感じで。ファンもそれで満足しちゃうし、それで閉鎖されたコミュニティができて、その中で食っていく、みたいな。でも、今作を聴いて去年の対バンツアーは大きかったんだなって改めて思ったんですよね。別に具体的にどの曲が誰っぽいとかじゃないけど、今の時代のいろんな風がこの作品の中に流れている感覚があって。
ずっと悩んでたんですよ。俺たちのバンドのコンセプトをみんなに見てもらうっていう部分を徹底してきたことで、一時期ネタに走りすぎて、その先にある音楽をちゃんと聴いてもらえなかったっていう。それは自覚してたし、しかもその期間が結構長かったから。でも、それこそももクロとかゴールデンボンバーと一緒にやったときに、やっぱり突き抜けて何かをやるってことは楽しいし、あいつらのあの曲に負けないのを作ろうとか、そういう気持ちもあったりして。そこから新しい気持ちも生まれてきたし。実際、昨年の対バンツアーを受けて作った曲がほとんどで。尋常じゃなくハードなスケジュールの中で作った作品なんですけど、今回すごく楽しかったんですよね。歌詞を書く作業も楽しかったし、歌を歌う作業も楽しかった。言っちゃうと、11曲目の「ありがとう ばかやろう」みたいな曲は、今までの自分の人生を振り返るとありえないんですよ。曲の中で「ありがとう」みたいなこと歌ってる人たちなんて、みんな怪我しちゃえって思ってた。
──怪我しちゃえ(笑)。
よくアーティストが「僕らが主人公じゃなくて君たちが主人公なんだ」みたいなこと言ってるのを聞くと、「バカか」って思ってたんですね。でも、去年1年やってきて、俺たちとファンのみんなは本当に仲間なのかもしれないって。都内で30本近く対バンをやり続けて、それでも駆けつけてくれるファンってなかなかいないですからね。一部、ルックス的に迫力のある人たちがいらっしゃるので、世間からは氣志團のファンってイカつく思われたりするんですけど(笑)、実際は意外に引っ込み思案な人たちが多いんで。そういう人のことを、僕は「隠れキリシ團」って呼んでいて(笑)。みんな世の中にまぎれて暮らしてるんですけど、そういう人たちに支えられたなあってすごく思っていて。音楽の中で素直に出せるものは出していこうって思ったのは、今まではなかったことですね。
再結成後のユニコーンがきっかけに
──確かに「音楽の中で素直に気持ちを出していく」っていうのは、このアルバムの肝になってますよね。
それと、もうひとつ今作には大きなきっかけがあって。それも昨年の対バンツアーで一緒にやらせてもらったバンドなんですけど、「やっぱりユニコーンってすげえ……」「なんなんだ。このおじさんたちの無敵感は……」って。あれだけの認知度があって、あれだけ過去に名曲を持っていながら、ほとんど昔の曲をやらない再結成後のライブを何本か観に行ったんですよ。一応、ワンマンでは昔の曲もちょこっとやってるんですけど、それが意外にも自分の中であんまり盛り上がらなくて。それよりも再結成してからの新曲のほうが楽しいんですよ。
──あ、わかりますわかります。もう、ステージの上の楽しさがこっちに伝染してくる感じですよね。
そうなんですよ。もちろん、いわゆる歌謡テイストであったりとか、メロディアスな部分で言ったら、昔の曲のほうがキャッチーなんですけど、新しい曲でのバンドの“楽しんでる”感がハンパじゃなくて。あの頃にできなかったことを今やりつくしてるんだろうなって。僕は基本、メガヒット曲があるのにもかかわらず、新しいアルバムの知らない曲ばかりを演奏するアーティストに対して「フェスなんだから、みんなが知ってる曲をもっとやれよ!」って叫ぶような、なんというかミュージシャンの風上にも置けない、いわゆる俗っぽい人間なんです。でも、ユニコーンを観たときは全然違ったんですよね。正直、CDで聴いた当初にはピンとこなかったような曲でも、ライブで観たらすごく良くて、またそのあとでアルバムずっと聴いちゃったりとか。これこそがロックバンドのすごいところなんじゃないかって。俺たちに実際できるかどうかはわからないけれど、次のアルバムはそのアルバムだけでツアーが回れるような内容のものを作ろうじゃないかと。まあ、そんなことやったら、絶対に「One Night Carnival」がないって言われるのはわかってるんですけど(笑)。少なくとも心意気だけは、そういう気持ちで作ったアルバムですね。
アルバムタイトルだけハッとひらめいた
──それにしても昨年末まで対バンツアーが続いてたわけで、それを終えてからフルアルバムを作ったっていうのは、なかなかすごいスケジュールですよね。
実は今の氣志團って、“氣志團ファクトリー”みたいな形のバンド内の協力体制ができていて。例えば僕のところに楽曲提供のオファーがきたりすると、僕はメロディだけメンバーに渡して、メンバーがそこからアレンジをやってくれたりっていう。表立っては僕の名前でやってることも、バンドのみんなが協力して動いてくれて、そのおかげでとんでもないスケジュールも乗り越えられたりしてるんですね。そうこうしているうちに、氣志團の楽曲制作とか、GIGのアレンジとかも、今までとはちょっと違うシステムになってきて、ここに関してはあのメンバーがやるとか、ここに関してはこのメンバーがやるとか、それぞれのメンバーが自分のテリトリーを持った工場長みたいになっていて。うちのメンバーは僕と違って家でシコシコ曲を作るタイプだから、気がついたら1人で2枚アルバムを作れるくらいの曲を山盛りにして持ってきてくれて。もう、こうなると怖いものはないなって(笑)。6人それぞれの個性もあって、みんなフタを開ければ純粋に音楽が好きな人たちの集まりなんで。僕のせいでなんとなく“面白バンド”みたいになってますけど、実はそんなに面白くない(笑)、熱いバンドマンたちだから。
──じゃあ綾小路さんは、バンド内プロデューサー的な立場で?
そうですね。みんなが作ってきてくれたものに足りないものを足して、それをどうまとめていくかっていうのが自分の役割になってます。そう思ってる矢先に、まだ収録曲とか全然決まってないのに、アルバムタイトルだけハッとひらめいて。「今度のアルバム、『日本人』ってタイトルにしようと思うんだけど」って。メンバーのみんなは「なんで?」って言ったあとすぐ、「いや、別にいいけど」って(笑)。
──なぜ「日本人」だったんですか?
実は尊敬する先輩たちのバンドに「日本人」というバンドがいたんですよ。でも、まだ全然世の中には出てなくて、初ライブを去年やるはずだったんですけど、その日のリハーサルでお店とモメて解散しちゃったんです。それまで「すごいなあ、日本人っていうバンド名」ってずっと思ってたから、解散したって聞いて「今しかない!」って先輩たちに頼んだら、「いいよ」って言ってくれて。その後、人知れずその先輩たちのバンド「日本人」は再結成したんですけど(笑)。僕、これまでオマージュやパロディはあっても、何かをパクったことってないんですが、この先輩たちからだけはよくパクらせてもらうんです(笑)。それぐらい、いつもハッとさせられる発想をお持ちの方々で。
3形態共通
CD収録曲
- 夜明け
- 日本人
- ダンシンッ!!
- スタンディング・ニッポン
- オールナイトロング
- BABY BLUE
- 東京
- 氣志團ちゃん数え歌
- 紫のあいつ
- DEAR MY GIRL
- ありがとう ばかやろう
- 落陽
- MY WAY
[CD+2DVD盤]
DVD 1収録内容
- ・MY WAY(MUSIC VIDEO)
- ・日本人(MUSIC VIDEO)
- ・2011.1.3 氣志團 HALL GIG TOUR 氣志團現象2010A/W ロックンロール・グラフィティ@さいたまスーパーアリーナ「ザ・バックステージ・グラフィティ ~その時、氣志團に何が起こったのか~」(約28分)
DVD 2収録内容
- ・氣志團 “完璧年間行事(パーフェクト・イヤーズ)” 第一弾!!お正月スペシャル「ザ・氣志團ベストテン」&「ザ・氣志團ワーストテン」(約100分)
[CD+DVD盤]
DVD収録内容
- ・MY WAY(MUSIC VIDEO)
- ・日本人(MUSIC VIDEO)
「日本人」ファンクラブ購入限定特典
氣志團ファンクラブ「私立戸塚水産高校」購買部でアルバムを購入すると、特典として「日本人箸~お箸の国の人ですから~」をプレゼント。
詳細はファンクラブ会員ページでご確認ください。
氣志團(きしだん)
千葉県木更津市でカリスマ的人気を得ていた綾小路 翔を中心に1997年に結成。メンバーは綾小路 翔(Dragon Voice)、早乙女 光(Dance & Scream)、西園寺 瞳(G)、星グランマニエ(G)、白鳥松竹梅(B)、白鳥雪之丞(Drums & Drunk)の6名。「ヤンクロック」をキーワードに、学ランにリーゼントというスタイルでライブを行い、2001年12月から3カ月連続で発売されたVHSビデオで“メイジャーデビュー”を果たす。その後「One Night Carnival」「スウィンギン・ニッポン」などヒット曲を連発。2004年には東京ドームでワンマンライブを行い、2004年、2005年にはNHK紅白歌合戦にも出演。2006年には結成10年目を記念して、富士急ハイランドにてイベント「氣志團万博2006“極東NEVER LAND”」を開催し大成功に収めた。2011年には計30公演におよぶ対バンギグシリーズ「極東ロックンロール・ハイスクール」を実施するなど精力的なライブ活動を継続。結成15周年を迎える2012年は「氣志團 完璧年間行事(パーフェクトイヤーズ)」と銘打ち、さらに幅広い活動を展開中。
2012年5月15日更新