音楽ナタリー Power Push - KIRINJI

再構築で再発見したメンバーの個性

新たなアレンジを加えてまったくの別モノを

──KIRINJI始動からおよそ1年でオリジナルアルバム「11」がリリースされました。今夏のシングル「真夏のサーガ」を挟みつつ、次はどう来るのかと思ったらまさかの「11」再構築という。どうしてこのような手法を選んだんですか?

堀込 本来は夏にアルバムを制作して秋にツアーをと考えていたんですけど、今年の夏はイベントにけっこう出ることになったので、オリジナルアルバムの制作は間に合わなさそうだなと思ったんです。でもある程度ボリュームがあるものをリリースしたかったので、じゃあ「11」を違った趣でアレンジして出そうかという話になって。そんな話が6月のBillboard Live TOKYO公演の前に挙がったので、アレンジし直したものをこのライブで演奏して、それを元に構築しようと。

──では6月のライブはあらかじめライブ音源を元にしたポストプロダクションという「EXTRA 11」の制作を意識して?

左から堀込高樹(Vo, G)、コトリンゴ(Vo, Piano, Key)。

堀込 そうですね。

──ライブレコーディングされた音源に対し、スタジオで新たに加えられた音は割合としてどのぐらいなんですか?

堀込 けっこう多いです。ドラムと生ピアノとパーカッション、あと一部ペダルスチールやエレキギターの音はライブの音を使っていますが、歌は全部歌い直したし、楽器もけっこう弾き直してますね。

──いわゆるライブアルバムにしなかったのはなぜですか?

堀込 純然たるライブアルバムって実はあまりなくて、大体どこか直したり足したりするんですよ。その作業ってけっこうな時間と手間がかかるんです。だったら新たなアレンジを加えてまったくの別モノとして出したほうが面白いんじゃないかなあってことですね。単純にクオリティが上がるので、長く聴けるものをと考えるとスタジオで作り込んだほうがいいし、1つ完成したアレンジがある上でこれもちゃんとした1つのバージョンとして聴いてほしかったので。

──なるほど。

堀込 あと「11」を出して1回ツアーを回って、歌がけっこう変わってきたんですよ。例えばコトリさんが歌っている「fugitive」はアルバムだと影のある声だったけど、今回は少し明るくなっていたりして。ライブアレンジが歌に影響を与えたりもしていたので、いい形で新しいバージョンが作れるかなと思ったんですね。

ライブへの取り組み

──ライブでの演奏が大きく作用していると。新体制になってからのほうが、以前よりも積極的にライブに取り組んでいるように見えるのですが、そうでもないですか?

堀込 いや、ライブをバンバンやろうというつもりでこういうメンバーになりましたから。

コトリンゴ(Vo, Piano, Key)

コトリンゴ ライブをやらないと、6人でやってますという感じにならないかもしれない。

堀込 そうだよね。「たまに6人で集まってレコーディングしてます」だとバンドになった意味があんまりないというか。ライブはやったらやっただけよくなっていきますからね。

──ライブのときはどんな様子なんですか?

堀込 和気あいあいとやってますよ(笑)。

コトリンゴ 私や楠さんが調子に乗って曲の元の形から外れすぎると、ピシャリと言われて戻るみたいな(笑)。

堀込 ピシャリとは言われないんじゃない?(笑)

──スペシャリストが集まった集団で、2年やってきたなりの変化もあるのかなと。

堀込 どうだろうなあ。バンドだから何がなんでも密にがっつりやるぜみたいな気負いはなくて。それにみんな普段の仕事の仕方からバンドのメンバー気分というか、セッションに呼ばれて2時間演奏してお疲れさまでした、みたいな人たちじゃないんですよ。芸能っぽい現場だと、主役とバンドメンバーが楽屋分かれて話さなかったりもするけど、もともとそういう仕事をするタイプではないので、バンドになったからといって大きな違いは感じてないんじゃないかな。ただレコーディングでは今までこちらが全部の責任を負ってたけど、自分のプレイには最後まで責任を持って「失敗したところは自分でチェックして直してくださいね」みたいな感じになっているから(笑)、その点での自覚はあると思います。

ニューアルバム「EXTRA 11」2015年11月11日発売 / 3240円 / Verve / ユニバーサルミュージック / UCCJ-2131 / Amazon.co.jp
「EXTRA 11」
収録曲
  1. だれかさんとだれかさんが
  2. fugitive
  3. ONNA DARAKE!
  4. 狐の嫁入り
  5. 虹を創ろう
  6. 雲呑ガール
  7. ジャメヴ デジャヴ
  8. 心晴れ晴れ
  9. 進水式
シングル「真夏のサーガ」2015年7月22日発売 / 1944円 / Verve / ユニバーサルミュージック / UCCJ-2127 / Amazon.co.jp
「真夏のサーガ」
収録曲
  1. 真夏のサーガ
  2. 水郷

<ボーナストラック>

  1. 虹を創ろう
  2. 雲呑ガール
  3. ジャメヴ デジャヴ
  4. 進水式
アルバム「11」2014年8月6日発売 / Verve / ユニバーサルミュージック
初回限定盤 [CD+DVD] 3888円 / UCCJ-9129 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 3024円 / UCCJ-2117 / Amazon.co.jp
KIRINJI LIVE 2015
2015年11月21日(土)
東京都 EX THEATER ROPPONGI
2015年11月25日(水)
大阪府 梅田CLUB QUATTRO
KIRINJI(キリンジ)

KIRINJI

1996年10月に堀込泰行(Vo, G)、堀込高樹(G, Vo)の兄弟2人で結成。1997年5月にインディーズデビュー盤「キリンジ」、同年11月にマキシシングル「冬のオルカ」がリリースされると、複雑ながらポップなサウンドと独自の詞世界が大きな注目を集め、1998年にシングル「双子座グラフィティ」でメジャーデビューを果たした。2013年4月に泰行がグループを脱退し、同年7月より楠均(Dr)、千ヶ崎学(B)、田村玄一(Pedal Steel)、コトリンゴ(Key)、弓木英梨乃(G)の5人を加えた新体制に。2014年8月に通算11枚目にして新体制初のアルバム「11」をリリース。アルバム発表後は合計13公演のワンマンツアー「KIRINJI TOUR 2014」を開催した。また各地の音楽フェスに出演するなど、精力的なライブ活動を行っている。2015年6月には東京・Billboard Live TOKYOでワンマンライブを実施。このライブの音源をもとに、スタジオでのポストプロダクションを施してアルバム「11」を再構築した「EXTRA 11」が11月にリリースされる。