ナタリー PowerPush - キリンジ
2012年の日常と音楽
堀込高樹と“家族サービス”
──楽曲とは直接関係ないんですが、メディア用の資料に書かれていたアンケートが地味に面白かったので(笑)、これについてもお訊きしたいんですけど。
高樹 何書いたっけ?
──高樹さんが最近ハマッていることが「鳥グッズ収集」で、しかも近況として「小鳥を飼い始めました」と。なぜそんなに鳥ブームが?
高樹 ああ(笑)。なんか家で小鳥を飼いたいってことになって。それで小鳥屋さんに行ったんですよ。そしたら息子がインコとかじゃなくて、結構地味な鳥を選んで(笑)。「これかー」みたいな。まあかわいいんですけど、渋いなあと思って(笑)。2匹つがいで買ったんですよ。買ってね、5日後ぐらいにオスが死んで。詳しい人に訊いてみたら、鳥はすごくストレスに弱くて、特に外国の鳥は違う環境に連れてこられて、さらに違う環境に引き取っていかれるから結構しんどいんだって。
──それから「最近行ったところは?」という質問には「益子町」と答えています。
高樹 益子焼で有名な益子です。栃木県の。「スターネット」っていう、ちょっとカフェ的なものが好きな人らが目指す場所があって、そこに嫁さんが行きたいって言い出して。
──鳥も益子焼も、家族サービスなんですね。全体的にファミリー感のある……。
高樹 そうなんですよ。しょうがないんですよ。ほかの人はどういう生活してるんですかね?
──キリンジのお2人って、ある意味その辺のあんちゃん的な匂いもありながら、どこか存在そのものにも浮世離れしたイメージもあって。リアルな生活が見えるのは少し意外な感じも。
高樹 どうしてるんだろう、ほかの人は。ワールドツアーとかしない限りないでしょ、そんな面白話とか。あるいは沖縄とか行くとか、信州とかで稲作するとか、そういう思いっきり世捨人みたいなことでもしない限り、家族の話がメインになっちゃいますよね。どうしても。
──そして、これからしてみたいことが「カルタを作りたい」。これは?
高樹 そうなんですよ。真っ白なカルタがあって。作ろうと思ったまま、7~8年前に買ったっきり。
──だいぶ長いこと放っておきましたね(笑)。
高樹 絵を50個書いて、文句も50個書かなきゃいけないから、相当な作業量なんですよ。でも、知り合いに絵を描く人が結構いるから、彼らと組んでひと山当てようかなと。今ちょっと画策していて(笑)。これだけで構想7年ですからね。まずは僕らが発売して、そのスタイルを真似していいけど、ロイヤリティはもらうという、カルタ(笑)。
堀込泰行と“テレビ”
──では次に泰行さん。最近ハマっているものが「録音機材」。これはいわゆる自宅スタジオの設備でしょうか。
泰行 はい。でもそんなに大げさなものじゃなくて。MacBookと、ミニコンポみたいなやつと、オーディオインターフェイスを。ちっこい機材を買って、コンパクトかつそれなりのことはできるっていう状態にしたっていう、いたって真面目な話なんですけど。
──そのほか「朝ドラ鑑賞」というのもあって、近況では「地デジ対応のテレビを買いました」ともありました。その理由が「ワイドショーの字が小さくなって読めなくなったから」(笑)。
泰行 さすがに読みづらいなと思って。マンションがケーブルテレビに入ってるので、2015年ぐらいまではアナログテレビのままでもいけたんですけど、ちょっとまあ、しびれを切らして買いました。
──テレビは結構観るほうですか?
泰行 どうですかね。わりと観るほうなのかな。あるとついつい観ちゃいますよね。「TVチャンピオン」とか、大食い大会みたいなのが好きなんですよ。あとは「痛快!ビッグダディ」とか「SASUKE」とか。あのへんが好きなんですよ。
──どれもちょっと大げさな、ファンタジックなドキュメンタリーですよね(笑)。そして最近気になることは「新しいテレビは画像がキレイでうれしいが、テンションがイマイチ上がらない」。
泰行 そうなんですよ。もっとテンション上がるのかと思ったんですけど、なんか番組自体がみんな似たようなものばっかりになっちゃって、あんまり楽しめないんですよね。ただ、キレイな女の人はよりキレイに映ってるんで、それはいいですよね。
──そのほか気になることが「ラーメン」。「ちょっとしたラヲタになった」とありますが、ミュージシャンにはラヲタ(ラーメンオタク)って多いですよね。
泰行 でも僕の場合は全然。二日酔いが多くて、水分多いものが食べたいっていうので、近所のラーメン屋に行ってるうちにわりかし詳しくなったっていう程度なんですよね。
──遠くまで出歩いて食べたりもするんですか?
泰行 新しい店ができるととりあえず食ってみるとか、そういうのはありますね。今日は自転車で足を伸ばしてあそこ行ってみようとか。
──そして、これからしてみたいことが「ジーンズお直し」(笑)。
泰行 古着で買ったやつで、裾がちょっと長いのを詰めたりとか。
高樹 最近洋服屋って裾切らせたがらないですよね?「ロールアップすればいいんで」ぐらいな感じで。なんか……いやいやいや。切って合わせてからロールアップしないと、重みでズルズル落っこってくるんだけど、みたいな。なんかね、切りたがらないんですよ。傾向として。あれ気になるんですよねえ。
日常生活と音楽制作
──そういった日常生活と音楽制作の時間は、気持ちがパキッと切り替わるものですか?
高樹 始めて1時間ぐらいすれば集中できる感じになりますね。だから普通にウイークデーは“9時5時”じゃないですけど、僕はわりとハッキリしてるほうだと思う。
泰行 僕はねえ、そうなりたいんですけど、わりとダラダラとやってる感じですね。テレビ観ながら作曲したりとか。
高樹 それは良くないよ(笑)。
──イメージどおりな感じですね。そのコントラスト。
泰行 お酒飲みながらとか。切り替えがうまくできたらいいなと思いますけど。
──この名曲が実は「ビッグダディ」観ながら作られた、みたいな。
泰行 緊張と緩和じゃないけど、適度に緩和してないと行き詰まっちゃうんで。テレビ観ながらポロポロと作ったものが、案外いい曲になるんですよ(笑)。
キリンジ(きりんじ)
1996年10月に堀込泰行(Vo, G)、堀込高樹(G, Vo)の兄弟2人で結成。1997年5月にインディーズデビュー盤「キリンジ」、同年11月にマキシシングル「冬のオルカ」がリリースされると、複雑ながらポップなサウンドと独自の詞世界で大きな注目を集めた。1998年にはシングル「双子座グラフィティ」でメジャーデビュー。2005年には弟の泰行が「馬の骨」としてソロデビューを果たし、同年11月には兄の高樹もソロアルバム「Home Ground」を発表した。それぞれ他のアーティストへの楽曲提供も多く手がけており、作詞家・作曲家としても支持を集める。2011年7月には震災を受けて、配信限定チャリティシングル「あたらしい友だち」をリリース。10月には、過去の提供曲とセルフカバー音源を収めた2枚組企画アルバム「~Connoisseur Series~KIRINJI『SONGBOOK』」を発表。2012年5月30日には「祈れ呪うな」、6月27日には「涙にあきたら」と、2カ月連続で配信シングルをリリースする。