音楽ナタリー PowerPush - きのこ帝国

進化の先に見つけた原点「フェイクワールドワンダーランド」

きのこ帝国が10月29日に2ndフルアルバム「フェイクワールドワンダーランド」をリリースする。今作には100円シングルとして先行発売された「東京」をはじめとする表情豊かなナンバーが11曲収録された。

オルタナティブロック、シューゲイザーバンドとしてくくられてきた彼女たちが、ジャンルにとらわれない楽曲を集めた「フェイクワールドワンダーランド」を今提示するワケを全作詞曲を手がける佐藤(Vo, G)に聞いた。

取材 / 大山卓也、清本千尋 文 / 清本千尋 撮影 / 上山陽介

 
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あと何年生きるかわからないし

──まずはアルバム完成おめでとうございます。先行シングルとして発表した「東京」を筆頭に、これまでのきのこ帝国の作品に比べて一聴しただけでスッと耳に馴染むわかりやすい曲が多い印象を受けました。意識的にキャッチーな楽曲を多く入れたアルバムにしたんでしょうか?

はい。今回はメロディも歌詞も意識して作りました。

佐藤(Vo, G)

──なぜ今回はそこに重点を置いたんですか?

今年26歳になったんですけど、20代の折り返し地点を過ぎて人生をどうしていこうかみたいなことを考えることが多くなってきて。その中で自分は何をしたくて音楽を始めたんだったっけなと立ち返ってみて、普段だったら関わらないような人たち、理解しあえないような人たちと音楽で感情を共有したかったんだということを思い出したんです。

──これまではそういう感覚をあまり持ってなかったということ?

今までは人とつながりたいみたいな欲求はありつつも、自分のやりたいもの、吐露したものを受け入れてもらうという形でやってきて、例えば1つ傷を付ける、強烈な印象を与えるっていうことがつながりだと思ってた。というか、それしかできなかった。未熟だったのもあるし、表現方法としてそれが一番自分たちにしっくり来てた頃で。そこから徐々に心境の変化があってリスナーと自分たちが同じ立ち位置にいる音楽、ちゃんと共有し合える音楽を作って聴いてほしいなと思うようになって。

──そういうふうに思い始めたきっかけって何かあるんですか?

単純に歳のことを考えたときにこれからあと何年生きるかなんてわからないし、そのときそのときでやりたいことを一生懸命がんばっておかないと後悔するだろうなって思ったんですよね。最近はちゃんと目標を据えるようになりましたけど、これまでは人生のトータル的なところまで考えられてなかったから。

──なるほど。フェスに出たり、CMに楽曲がタイアップで使われたり(参照:きのこ帝国、宮崎あおい秋CMにあの曲が)することで、きのこ帝国の音楽が着実に多くの人に届き始めてると思うんですけど、そういう外からの評価みたいなものの影響は特に?

あまり気にしてないです。自分が音楽を作る上でフェスに出たりCMに使われたりっていうのはある種副産物的なものだと思っているので、そこに左右はされたくないですね。

今反感を覚える人がいても、いつかまたどこかで交わればいい

──詞の部分ではどうですか? きのこ帝国の歌詞って今までは怒りや悲しみといった負の感情が強いものが多かった印象があったんですけど、今回はだいぶ変わりましたね。

負の感情みたいなものを吐き続けていくと、なんかそこに対しての美学みたいなものが生まれてきちゃって、それがすごくいやらしいものに思えてきたんですよね。自分が変化するごとに曲もちゃんとそれと同じ感覚で作っていかないと嘘の表現にまみれたピュアじゃない音楽になっちゃう。

佐藤(Vo, G)

──求められてるからって、負の感情をぶつけることをずっと繰り返していても、っていうことですか?

そうですね。そこに出口を一切感じなくなっちゃったんです。ずっと同じ薬を投薬してる感じというか。いつかその薬抜きをしないといけないときは来るから。

──でも「昔のきのこ帝国のほうが好きだったのに」って感じる人もいるかもしれませんよね。

いると思います。最近インタビューとかで「幸せになっちゃったんだね」みたいなことも言われたんですけど、その幸せになっちゃった状態って別にいいことなんじゃないの?って思うし、今は反感を覚える人がいても10年後20年後に聴いたときに何か感じてもらえたらいいんですよ。いつかまたどこかで交わればいいと思うから。だから今否定されても……まあちょっとさみしい気持ちもあるけど、それは受け入れる。人それぞれの人生なので。

ニューアルバム「フェイクワールドワンダーランド」 / 2014年10月29日発売 / 3024円 / DAIZAWA RECORDS / UKDZ-0159
「フェイクワールドワンダーランド」
収録曲
  1. 東京
  2. クロノスタシス
  3. ヴァージン・スーサイド
  4. You outside my window
  5. Unknown Planet
  6. あるゆえ
  7. 24
  8. フェイクワールドワンダーランド
  9. ラストデイ
  10. 疾走
  11. Telepathy/Overdrive
ライブ情報
CITY GIRL CITY BOY

2015年1月15日(木)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
OPEN 18:15 / START 19:00
料金:前売 3500円(ドリンク代別)

2015年1月21日(水)東京都 赤坂BLITZ
OPEN 18:15 / START 19:00
料金:前売 3500円(ドリンク代別)

きのこ帝国(キノコテイコク)

佐藤(Vo, G)、あーちゃん(G)、谷口滋昭(B)、西村“コン”(Dr)の4人によって2007年に結成されたロックバンド。翌年から下北沢、渋谷を中心にライブ活動を開始し、2枚の自主制作アルバムをリリース。2012年5月に初の全国流通CD「渦になる」をリリースし話題を集める。2013年2月に1stフルアルバム「eureka」、同年12月に5曲入りCD「ロンググッドバイ」を発売。2014年2月に初の東京・渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブを成功させる。同年9月に100円シングルとして「東京」を先行リリースし、10月に2ndフルアルバム「フェイクワールドワンダーランド」を発表。2015年1月には東京と大阪の2会場で単独公演「CITY GIRL CITY BOY」を開催する。