10. わけあり物件
作詞：大槻ケンヂ　作曲：橘高文彦

──ここからの2曲はラストスパート。新たなライブの定番曲になりそうですね。

橘高　これは「闇芝居」という新しいスロットマシン用に書いた曲なんです。筋少のことをすごく好きでいてくれる製作会社の方からのオファーだったので、「橘高メタルのあれとあれとあれみたいに」っていう具体的なリクエストをいただいて。「闇芝居」のテレビアニメ版の映像も送ってもらって、日本の怖い映画のサントラふうの橘高メタルを書いたつもりです。だから和音階みたいなサビにしたり。とてもやりがいのあるソングライトでした。それで大槻さんから歌詞が届いたら「わけあり物件」と書いてあって、「こう来たか！」って（笑）。

──冒頭の大槻さんの「わけありですよー」という第一声が頭から離れなくて。

大槻　昔のアニメの怖いナレーションのイメージですね。この曲を録ったあと、僕がレギュラーで出ている「緊急検証！」というCSのオカルト番組があるんですけど、ちょうどわけあり物件の特集をやってて。中沢健さんという方が「松田優作と、作家のカート・ヴォネガットと、向田邦子と、坂上二郎の霊が各部屋にいるアパートがあるんだ」ってプレゼンしてました。

内田　わはははは！（笑）

大槻　常駐はしてないけど、たまに二郎さんが来て「飛びます、飛びます」とやってくださるそうです。

内田　隣の部屋で松田優作が「なんじゃこりゃあ」。

大槻　どういう人選だっていう（笑）。霊のトキワ荘ですね。

──素晴らしいです（笑）。こういう歌詞って、スッと浮かぶものなんですか？

大槻　浮かぶときは浮かぶんですよ。今回だと「3歳の花嫁」「わけあり物件」「人から箱男」「サイコキラーズ・ラブ」はパンパンパーンと浮かんで、「告白」が最後の最後までできなくて苦労したなー。

11. T 2（タチムカウver.2）
作詞：大槻ケンヂ　作曲：橘高文彦

──ラストを飾るのは入江茂弘選手の新たな入場曲です。

橘高　大槻くんから「お客さんがみんなで合唱できる曲で橘高メタルを聴いてみたい」と言われて。なので合唱パートを多くしたら入場曲っぽかったんだね。

大槻　日本の選手の入場曲で歌詞付きとなると、獣神サンダーライガーの「怒りの獣神」とか鈴木みのる選手の「風になれ」とか、そんなに多くないんです。なのでプロレス好きとしてはうれしいですよね。自分の曲でレスラーが入場してくれて。入江選手は外国でも試合してるので歌詞に外国の地名もいろいろ出てくるんです。サウスミルウォーキーとか。外国のプロレスオタクは日本語歌詞をちゃんと覚えて歌ってくれるらしいんです。うれしいですね。世界で筋肉少女帯の歌が流れるなんて。

橘高　前回の「タチムカウ」もアメリカで入場曲に使ってくれてたから、この曲も世界中で鳴り響いて入江選手を送り出してくれるとうれしいですよね。

──「タチムカウ」は大事にしているファンも多いので。

大槻　「タチムカウ」には「負けると知っててタチムカウ」というフレーズがあるんだけど、「出る前に負けること考えるバカがいるかよ！」というアントニオ猪木の言葉があって。入江選手が「タチムカウ」を勝手に使ってたんだけど、「なんか悪いなあ」と思って、出る前に負けることを考えないテーマ曲を書いてあげたいなと思ってたんだよね。

橘高　とてもいいことだ（笑）。元気のいい曲で終わるアルバムっていうのはいいですね。もう1回頭から聴きたくなるし。

俺たちまだまだ若造です

──昨年の音楽ナタリーの取材で、皆さん「『先が楽しみ』って言われてるようじゃダメ。『先が思いやられる』って言われてこそロックバンド。そのためにも衝撃的な曲をやりたい」とおっしゃっていましたが（参照：筋肉少女帯「再結成10周年パーフェクトベスト+2」インタビュー）、今作はまさにそういうアルバムになりました。

大槻　「1周して新しい」なんて言葉があるけど、もう何周もしちゃってますから。古いのか、新しいのか、わからなくなる内容になっています。

橘高　メンバーそれぞれが別で活動してる要素も入ってたりして、今の筋肉少女帯にしかできないアルバムですね。

──五十代を迎えた筋肉少女帯のこれからが、ますます楽しみです。

大槻　今、ROOTS 66（トータス松本、スガシカオ、斉藤和義、田島貴男、宮田和弥といった1966年生まれのアーティストによるユニット）でアニメ「おそ松さん」のエンディングテーマに関わったりしてるんですけど、みんな信じられないぐらい若いんです。自分より上の世代の方と対バンしても、ビックリするもんね。今年、CHABOさんと一緒にライブをやらせてもらったんだけど、俺CHABOさんから若手扱いだったもんなあ。

橘高　いいねえ。まだまだ若造です、俺たち！

大槻　うれしかったよ。人間ってフューチャーあるんだなあって思いますね。

──11月から今作発売記念のツアーも始まります。

大槻　タイトルが「一本指立てて Future!と叫べ！ツアー」ですから。

橘高　立てていただけるようがんばります。

本城　ニューアルバムを携えてのツアーはひさしぶりなので、楽しみ。

橘高　そうだね。特に今回は全部新曲だから。今までの楽曲も網羅した楽しいツアーになると思います。

──今作からは全曲披露する予定ですか？

大槻　……やりましょう！

橘高　はい、今決まりました（笑）。

内田　「エニグマ」、20分ぐらいやろうか？（笑）

橘高　「エニグマ」のアルバムバージョンは我々の中ではわりと短めにまとめた意識があるもんね。20分やるかは置いといて（笑）、「エニグマ」の生演奏を観に来てもらうだけでも価値はあると思います。