07. エニグマ
作詞:大槻ケンヂ 作曲:内田雄一郎
大槻 「エニグマ」はデモを聴いて「これだ!」と思いました。やっぱり筋肉少女帯はナゴム出身なので「ストレンジなことをしなきゃダメだ!」みたいな気持ちが常にあるんです。最初はこの曲を「Future!」というタイトルにしようと思ってたんだよね。デモを聴いて90年代のKing Crimsonを思い出して、これは筋少のプログレ……ヌーヴォメタル(King Crimsonのロバート・フリップが1990年代に掲げたサウンドコンセプト)になるぞと思って。できあがったものは僕が想像してたヌーヴォメタルとちょっと違ったんですけど、それはそれで面白いです。
内田 以前から「筋少はテクニシャンぞろいだから、インストで何か面白いことはできないか」と思ってたんです。
橘高 そして、もともとアルバム設計図の段階で「インストを入れたいね」って話があったんですよ。
大槻 でも僕があとで「ちょっと何か言わせてよ」ってお願いしたんだよね。
内田 ライブの流れを意識したアルバムということで、セッションみたいなノリのインストがいいのかなと思って作ったら、わりとみんな設計図通りにやってくれて。
橘高 よくできた曲だからね。
内田 なので、ちょっと古臭く聴こえたら、それはプレイヤーのせいではなく僕のせいです(笑)。「Deep Purpleかよ!」ってところとかね。
大槻 60年代後半の、ちょうどアートロックからハードロックへ変わる実験的な時期の摩訶不思議なセッションみたいで、そこが僕はとても面白かったですね。
橘高 今回、シングルを切るわけじゃないのに、この曲のミュージックビデオを撮ったんです。
大槻 面白いでしょ? このプログレの曲でMV作るって、どんな実験的なバンドだっていうね。
橘高 今はメンバーが集まらなくても打ち込みで音が出せる時代で、それはそれで素晴らしいことなんだけど、筋肉少女帯はやっぱりバンドで始まって今なおバンドだし、そのために楽器も一生懸命がんばって練習したし、それぞれのベクトルでがんばってやってきたことがこの奇想天外な曲に集約されてるなあと思って。だからこの曲が名刺代わりの一発になるっていうのは非常に痛快な思いですね。
大槻 MVにはサポートドラマーの長谷川浩二さんとサポートピアニストの三柴理さんも出演してくれて。
橘高 その2人のソロパートまであるからね(笑)。
内田 2人含めて各人の色が出るように曲を作ったわけです。ボーカルを含めて。
橘高 我々はずっとこのメンバーでアルバムを作ってきてるし、全員が持てる力を遺憾なく発揮できるようにと思って。筋少ってレコーディング時に多重録音が多いバンドなんだけど、この曲は一発録りをしていて、そんな空気感のMVになっています。
08. 告白
作詞:大槻ケンヂ 作曲:内田雄一郎
──この曲もナゴム魂が炸裂してますね。
内田 最近、YMO以降のニューウェイブテクノを聴き直したんです。小難しいことを歌って、音はスカスカ。当時こんなんでいいんだと思いながらすごく影響を受けていたことをすっかり忘れてまして(笑)。今回、設計図に“変な曲枠”というのがあったので、80年代ニューウェイブのような曲を作ろうかなと思って。昔の筋少だったら音楽性の違いで解散してたぐらいの曲かもしれない(笑)。
橘高 最初の設計図を見た内田くんが「“変な曲枠”なら俺に任せろ!」って立候補してくれて。どんな変な曲が来るんだろうとワクワクビクビクしていたら、とっても変な曲でよかったです。
内田 僕が最近ソロで筋少の曲をテクノにアレンジしてて、それを聴いたオーケンに「筋少にテクノを導入したらどうか?」と言われて。難しいなあと思いながら作ったら、こんな感じになりました(笑)。
橘高 俺はとっても筋少らしいと思ったけどね。ただ、いざ自分が弾くとなるとどうしたらいいのかわからなくて。珍しく横に内田くんに付いてもらいながら「このリフ入れた方がいい?」とか聞きながらギターを録りました(笑)。
──延々と鳴っているギターはどなたの音ですか?
内田 あれは本城さんです。
橘高 あのフレーズをライブでずっと繰り返し弾くのは酷だよね(笑)。
本城 僕も内田くんと同じような世代でニューウェイブを通ってるので、そういう意味では懐かしく、ふっ切れてやれたなって感じです。
09. 奇術師
作曲:橘高文彦
橘高 もともとバラードのつもりで作ったんだけど、インストっぽい曲だとは思ってたの。そしたら大槻くんから「これ、インストとして仕上がる?」って返ってきたから、「やっぱりそうだな」って。俺はギタリストだけどインスト曲をあまり書いたことがなくて。たまには真っ正面からこういう大泣きなインストを大手振ってやってみようかなと思って。
──1970年代半ばのロックの空気を彷彿とさせますね。
橘高 こういうギターを聴いて育ったからね。自分が一番影響された頃の年代。サンタナとかゲイリー・ムーアとか。子供の頃って全然こういうふうには弾けなかったし。「今正面から弾いたらどうなるのかな」って思いながらやったら単純に気持ちが入っちゃって。その空気が感じられるかな。
──タイトルの「奇術師」は?
大槻 僕は歌詞にしろタイトルにしろ、そのとき観たり聴いたりしたものの影響を受けることが多いんですけど、今回は映画の「サスペリア PART2」と「マルホランド・ドライブ」。あのあたりの薄気味悪さがすごく印象に残っていて、出てきたのが「奇術師」というワードでした。
橘高 「映画音楽みたいになればいいな」と思いながらまとめたんです。モチーフはシンプルだけど、時間と共にちょっとずつ変わっていくみたいな。「奇術師」っていうタイトルが付いたら画が浮かぶようになって、ますます映画音楽みたいになった気がします。
大槻 「エニグマ」にも「サスペリア PART2」感はあるよね。俺、最初仮タイトルで「ゴブリン」ていうのも考えてたの(笑)。「サスペリア PART2」の音楽を担当したイタリアのバンドの名前なんですけれども。
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10. わけあり物件
- 筋肉少女帯「Future!」
- 2017年10月25日発売/ 徳間ジャパンコミュニケーションズ
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初回限定盤A [CD+Blu-ray]
5400円 / TKCA-74581 -
初回限定盤B [CD+DVD]
4860円 / TKCA-74582 -
通常盤 [CD]
3240円 / TKCA-74583
- CD収録曲
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- オーケントレイン
- ディオネア・フューチャー
- 人から箱男(筋少×カラオケDAMコラボ曲)
- サイコキラーズ・ラブ
- ハニートラップの恋
- 3歳の花嫁
- エニグマ
- 告白
- 奇術師
- わけあり物件
- T 2(タチムカウver.2)
- 初回限定盤A Blu-ray / 初回限定盤B DVD 収録内容
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「猫のテブクロ完全再現+11(赤坂版)LIVE」2017年3月20日(月・祝) 赤坂BLITZ公演よりアルバム完全再現パートを全曲収録
- 筋肉少女帯 New Album「Future!」発売記念「一本指立ててFuture!と叫べ!ツアー」
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- 2017年11月11日(土)愛知県 名古屋 CLUB QUATTRO
- 2017年11月16日(木)東京都 EX THEATER ROPPONGI
- 2017年11月25日(土)大阪府 BIGCAT
- 2017年12月10日(日)東京都 赤坂BLITZ
- 筋肉少女帯(キンニクショウジョタイ)
- 1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を“凍結”。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。東京・日本武道館公演や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2015年5月には人間椅子とコラボバンド「筋肉少女帯人間椅子」でシングル「地獄のアロハ」を発表。2016年10月にはベストアルバム「再結成10周年パーフェクトベスト+2」、2017年10月にはオリジナルアルバム「Future!」をリリースした。