音楽ナタリー PowerPush - 筋肉少女帯
4人で振り返る“新しいデビューアルバム”
「これが最後のCD盤になるかもしれない」って思いながら作った
──「霊媒少女キャリー」には、アーバンギャルドの浜崎容子さんが参加していますね。
大槻 そう、よこたん(※浜崎容子のニックネーム)が来てくれて。アーバンギャルドは本当に素晴らしいバンドですよね。
──しかも筋肉少女帯へのリスペクトも以前から表明していて。
大槻 うれしいですね。最近はいろんな人が筋少好きをカミングアウトしてくれて。
橘高 昔は言ってくれなかったんですよ。直接会えば「橘高さんのギターをコピーしてました」って言うんだけど、それを表立っては言わないっていう(笑)。
──若いアーティストに筋肉少女帯のエッセンスが受け継がれるのは、やはりうれしいですよね。
大槻 うん、それはもちろん。僕は金田一耕助が好きなんですが、あの人って、事件を解決すると風のように去っていくでしょ? ああいう生き方をしたいと思ってるんだけど、唯一、執着してしまうのが「存在を忘れられたくない」ということなんです。これは人間としてダメなのかもしれないけど、「筋肉少女帯というバンドが存在したことが、100年後、200年後に忘れられていたらどうしよう?」と思ってしまうんですね。忘れられないためには、記念館とか資料館を建てるか、あとは世襲制にするか。2代目・大槻ケンヂをYouTubeで探そうと思って。
──海外のロックバンドは、若いボーカリストを加えてライブをやったりしますからね。Queen+アダム・ランバートとか。
橘高 Journeyもそうだよね。
大槻 これから鬼籍に入られる方も多くなるからね。そのパターンは増えるだろうね。
──アルバムのジャケットについても聞かせてください。これ、江戸川乱歩ですよね?
大槻 これ、ホントにうれしくてね! ポプラ社から少年探偵シリーズが昭和39年に発刊されて、このシリーズを僕らの世代は浴びるように読んだんです。その中の「蜘蛛男」という小説の表紙をそのまま使わせてもらったんですよ。そのシリーズは文庫で復刻してるんだけど、27巻くらいから以降は出てなくて。「蜘蛛男」は復刻されてないから、すごくレアなんですよ。ポプラ社の少年探偵シリーズから選びに選んで。これが一番「THE SHOW MUST GO ON」感があるかな、と。
──本当に充実したアルバムになりましたね。筋肉少女帯の本質がズバッと出た作品だと思うし、バンドの状況もさらによくなっていきそうですね。
大槻 それがいいですね。ただ、若いときほど「売れなきゃダメだ」って言われなくなったし、好きなようにライブができてるのはいいことかもしれないね。デビューした頃はさ、バンドブームっていうのもあったし、生存競争みたいなところがあったから。今はCDが売れない時代にあって……あんまりネガティブな世代論とか言わないほうがいいか。
橘高 いや、言えばいいよ。
大槻 時代の流れは早いからさ、筋肉少女帯の次のアルバムは、もしかしたらCDという形ではないかもしれないよね。「これが最後のCD盤になるかもしれない」なんてことも思いながら作ってましたからね、時代の現実としてね。
CDを聴かずにライブに来るのは3Dメガネをかけないようなもの
──10月から11月にかけてアルバムツアーも決定しています。
大槻 全曲やるかどうかはわからないですけどね。定番曲もやりたいし。
橘高 そこはお楽しみにしていただいて。ただ、アルバムを聴き込んできてほしいですね。「オーディエンス・イズ・ゴッド」もそうですけど、お客さんにコーラスしてほしい部分は、女性と男性、両方の声を入れてるんですよ。
大槻 筋少のライブは参加型ですからね。セールスのためというよりも、聴き込んで来たほうが絶対に楽しめると思うので事前に買って聴いてきてくださいね。アルバムを聴かないでライブに来るのは、3D映画で3Dメガネをかけないようなものなんで(笑)。
橘高 ライブのあとでCDを聴くと、「スタジオ盤はアート作品として作り込まれてるんだな」ということもわかってもらえると思うし。
──最初に内田さんが「新しいデビューアルバム」とおっしゃってましたが、ここから勢いが増していくんじゃないですか?
橘高 次の50周年を目指して、振り出しに戻るような感じなのかな。リセットではなく。
──「ゾロ目」の歌詞ですね。「リセットなんかじゃなく ふりだしに戻れ」。
大槻 ニュアンス、意味合いがまた異なるよね。あ、そうだ。「ゾロ目」のPV撮影、がんばったんですよ。ヌンチャクを振りまくって。
本城 我々もヌンチャクを振ったんですよ。
内田 大槻のレクチャーを受けて。
橘高 海外からのリアクションが楽しみだね(笑)。
大槻 昔、「ヒットスタジオR&N」に出たときにヌンチャクを振ったら、海外の人がすごく喜んでくれたんだよね。あの映像を知ってる人が「ゾロ目」のPVを見たら面白いだろうね。
橘高 ヌンチャクでつながるわけね(笑)。
大槻 そうそう。あ、こいつらだ!って。
- ニューアルバム「THE SHOW MUST GO ON」2014年10月8日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
- 「THE SHOW MUST GO ON」
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3996円 / TKCA-74148 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 3086円 / TKCA-74152 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- オーディエンス・イズ・ゴッド
- 労働讃歌
- ゾロ目
- 霊媒少女キャリー
- ムツオさん
- みんなの歌
- 月に一度の天使(前編)
- 愛の讃歌
- 月に一度の天使(後編)
- 恋の蜜蜂飛行
- 吉原炎上
- 気もそぞろ
- ニルヴァナ
初回限定盤 DVD収録内容
- ゾロ目(MUSIC VIDEO)
- LIVE映像7曲(全曲初映像化!)
2014.4.12 筋少2枚組ダブルジャケット 1枚目
「レア過ぎ盤、、、鉄道少年の飼い犬はペテンその他」at TSUTAYA O-EASTより- ペテン
- 鉄道少年の憩
- 飼い犬が手を噛むので
- ベティー・ブルーって呼んでよね
- モコモコボンボン(Vo.内田 Ba.大槻 Ver.)
- リテイク
- ヘドバン発電所
筋肉少女帯(キンニクショウジョタイ)
1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を凍結。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。日本武道館公演や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2013年にはメジャーデビュー25周年を記念して、新録音によるセルフカバーベストアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」を発表。2014年には4年4カ月ぶりのオリジナルアルバム「THE SHOW MUST GO ON」をリリースする。